ノルウェーの高校生ルス、日本では考えられない大騒ぎ100のルール
日本では恐らく絶対に不可能!? ノルウェーの高校生が通る、「大人への道」
5月になると、ノルウェーでは次々と不思議なことがおこる。国民の生活に浸透している代表的な2つの不思議な習慣。それは、憲法記念日と高校生ルスだ。
ノルウェーでは4月後半から憲法記念日の5月17日までの期間、赤いつなぎやオーバーオール(ひもずぼん)を履いた高校生たちが至る所に出没する。ルス(RUSS)と呼ばれる彼らは、高校の最終学年にあたり、卒業目前を祝い、大騒ぎをすることが公に認められている特殊な存在だ。
二日酔いで、授業を受ける
日本の高校生では考えられないが、ルスの彼らはこの期間、ほぼ何をしても許される。二日酔いの状態で授業に出席するルスは数多い。ちなみに、先生や親たちは、ルスの行動にほとんど口を出さない。なぜなら、18歳以上になれば、ノルウェーの社会では「大人」と見なされ、アルコール摂取も可能。「自分の行動には自分で責任をもてるでしょう」という考え方があるため、学校や親たちはルスのすることはほぼ目をつぶっている状態なのだ。
ルス帽子の紐の100のルール
ルスは赤のズボンがトレードマークだが、ほかにも青・緑・黒色のルスもいる(専攻科目によって色が異なる)。加えて、ルス帽子というものがある。
ルス帽子には長い「紐」がついており、ルスは小さな「ガラクタ」をごちゃごちゃと付ける。毎年、「ルス委員会」は「100のルス紐のルール」という規則を発表し、ルスの大騒ぎはこの紐のルールが基盤となっている。
日本人からすると、この紐のルールはとてつもなく非常識でありえない。なぜなら、「アルコール摂取と性行為、学校でふざけたことをする」ことがメインとなっているからだ。ルールをひとつクリアするごとに、帽子の紐には指定されたガラクタがひとつずつ追加されていき、最終日に紐にごちゃごちゃと小物がついていたら、それは「かっこいい」のである。
飲酒と性行為=ルス?
ルスの時期になると、外国からきた観光客は、大通りや王室の周辺で「変なノルウェー人」を見つけて、思わず写真を撮ってしまう。それは、両手両足を道路につけて、よつんばいで移動しているルスたちだ。これも、もちろん紐の定番ルール。
ルールは例えば、
「下着のみで、1時間授業を受ける」
「警察官にキスをする」
「警察官にドーナッツをおごってあげる」
「72時間眠らない」
「授業中、先生が何かを言う度に“ハレルヤ!”と叫ぶ」
「母親から性行為のアドバイスをもらう」
「24時間で0,33リットルのビール瓶を1ケース(24瓶)飲む」
「下着姿で先生たちがいる職員室を走り回る」
「授業中に先生に質問されたら、ポルノ雑誌の内容を声高く読みあげる」
「同性の人と性行為をする」
「同性のルスにキスをする」
「先生の家の庭で1晩寝る」
「公共交通機関で音楽をかけながら、ストリップショーをする」
「アパレルショップに入店して、マネキンのふりをする」
「ボディランゲージのみので、コンドーム1箱を買う」
「授業中、5分ごとに”乾杯!”と叫ぶ」
「外で性行為をする」
「靴の代わりに、足にパンをつけて1日中学校で過ごす」
「2口でチーズバーガーを食べつくす」
「500mlのビールを10秒で飲みほす」
「おしっこをしながら330mlのビールを飲む」
「公共トイレでドアを全開にした状態で、大便をする」
レイプ被害は社会問題に
残念ながら、レイプ被害も後を絶たないため、性行為に関してはこのようなルールも目立つようになった。
「性病検査をする」
「”ノーはノー。強姦=同意のない性行為。”という文字をルスの制服に付ける」
「ルス期間中に1度も性行為をしない」
「ルスの期間中は暴力から身を遠ざける」
今年らしいルス紐のルールは?
数年前は見られなかった新しいルールといえば、SNS関連が目立つ。今年のルールにFacebookやTwitterの文字が見られなかった。若者が使用するSNSの移り変わりを感じる変化だ。
「スナップチャット(Snapchat)で300秒間のルス動画を作り、マイストーリーにのせる」
「ルス委員会のメンバーと写真を撮り、インスタグラム(Instagram)にのせる」
「出会い系アプリのティンダー(Tinder)で、知り合った相手と性行為をする」
帽子の紐は、どのルールをクリアしたかの証明書
筆者が故意に性行為ネタを選んでいるわけではなく、もともと性行為と飲酒のルールが圧倒的に多いのだ。ちなみに、それぞれのルールをクリアした時のガラクタは異なるため、帽子の紐を見ると、「あ、あのルールをやったな」と100の規則を把握している人はすぐに分かる。例えば、「国会議事堂から王宮まで、よつんばいで道路を移動」したら、「紙やすり」を紐につける。
ルスの期間が終了した後は、高校生の卒業前に最も大事な試験があるのだが、このような期間ではもちろん勉強に集中できる学生はあまりいない。ルス帽子の紐のルールの100条目は、最後に「試験に受かる!」で締めくくられている。
親は心配するが、NOとは言えない
よくルスを子どもにもつ親と話しをする機会があるのだが、「もちろん心配だけど、ダメだと言う事はできない」と誰もが口を揃える。日本の親であれば、喧嘩してでも、全力で阻止しようとするのではないだろうか。
ルスな毎年何かしらと「やらかす」ので、報道陣もここぞとばかりに話題にする。だが、かといってルスの行事や、飲酒や性行為を禁止しようという動きは世間では見られない。
写真の2人は、「1日中、友人とお互いの腕と足首を紐で結び合い、学校で共に行動」と、「授業中にアイスを1箱食べきる」という2つのルールを実行中
著者は数年間に渡ってルスの取材をしている。数年前にルス期間中の高校を訪問中、「日本だったらルスはあり得ないわ」と、高校生のムラちゃんに言ったところ、「バカになるけどね」と笑いながら彼女は答えた(授業中にアイスひと箱を食べながら)。先生は見てみぬフリをしており、授業後にアイスを食べ過ぎて、具合が悪そうな生徒を見て、ため息をついて去っていった。
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