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子どもの英雄!愛国心あふれるノルウェー高校生ルスの5つの象徴

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
赤い服を着たノルウェーの高校生ルス Photo:Asaki Abumi

ノルウェーでは4月後半から憲法記念日の5月17日までの期間、赤いつなぎやオーバーオール(ひもずぼん)を履いた高校生たちが至る所に出没する。ルス(RUSS)と呼ばれる彼らは、高校の最終学年にあたり、卒業目前を祝い、大騒ぎをすることが公に認められている特殊な存在だ。

詳しくは、別記事「ノルウェーの高校生ルス、日本では考えられない大騒ぎ100のルール」にて。

毎年メディア報道が過激になってきていることもあり、飲酒や性行為のイメージがつきまとうルス。だが、愛国心にあふれていたり、こども達の英雄という意外な側面もある。今回は、ルスの定番ファッションやアイテム、彼らの行動の一部を紹介したい。

1. 作業着に見える服が一番かっこいい!

赤と緑ルス Photo:Asaki Abumi
赤と緑ルス Photo:Asaki Abumi

ルスといえば、赤色の紐ずぼんや、つなぎのような作業着のように見える服装が定番だ。生徒の専攻科目によって色が異なり、赤ルスに続き、青ルスは簡単に見つけやすい。黒ルスもたまに見かけるが、珍しいのが農業選考の緑ルス。

実は、このルスずぼんは、「神聖」であるがゆえ、一度も洗濯することが許されていない。よって、こぼしたビール、酔って吐いた自分のゲロ、泥などの汚れがたっぷりついており、非常に不衛生であることは国民の誰もが知っている。

2. 自分の国が大好き!ナショナリズム満載のファッション

ルスのズボンで一番目を引くのが、ノルウェーの赤・青・白の3色の国旗デザイン。ずぼんだけではなく、靴、帽子、カバン、さらに国旗のワッペンをつけるなど、愛国心をこれでもかとアピールする。想像してみてほしい。日本の高校生が、国旗を強調した格好をして集団で歩いていたら、人々は何を思うだろうか?

3. こどもの英雄!ルス名刺をたくさん集めた幼稚園児は「かっこいい」

道路で名刺を必死に拾う少女 Photo:Asaki Abumi
道路で名刺を必死に拾う少女 Photo:Asaki Abumi

ルスといえば、幼稚園児にとってスーパーヒーロー。ルスが歩いていると、まるで磁石のように、こどもたちが寄り添ってきて、「名刺ちょうだい!」とお願いをする。

ルス名刺には、本人の顔写真やニックネーム、でたらめの住所や、自分が大切にしているモットーが書かれている。

例えば

名前:赤ルスのリン

住所:田舎。友達の近く。 

電話番号:私はiPhoneを持っているけど? 

賢くて、嫌なやつより、バカで、良いやつのほうがいいよね

たくさんのルスに話しかけて、多くの名刺をコレクションすることを毎年楽しみにしている幼稚園児。ルスの最終日である憲法記念日には、ルスが恒例のパレードに参加中、残っていた名刺をここぞとばかりに道路に落とし、幼稚園児が懸命に名刺を拾う。これもノルウェーでは、毎年恒例の光景となっている。

ちなみに筆者はルスから話を聞こうと近づくたびに、名刺をすぐさま渡されたり、「ごめん、もう名刺は品切れだよ」と言われた。どうやら、幼稚園児と同レベルに見えるようだ。

4.ルスのお金持ち度が測れる、きらびやかで豪華な「バス」

ルスの様子が描かれたバス Photo:Asaki Abumi
ルスの様子が描かれたバス Photo:Asaki Abumi

各地を移動して大騒ぎをするルスの足となっているのが、ルス車やルスバスと呼ばれている乗り物。特に首都オスロでは「バス」が重要。

ルスバスは、高校生がどれだけ裕福かを示す象徴である。数十万~数百万のお金がかかっているバスは、親がお金をだしている(どんな親なのだと、疑いたくなる)。バスの外観を派手にデザインし、内部にはカラオケなどの豪華機能が満載。

ちなみに、ルスの期間中に、酔っ払ったルスが大音量をかけたバスの車窓から、ビールを通行人にかけるというエピソードを筆者は何度も聞いた。

最もデザインが素晴らしいとされる車には大賞も贈られる。今年、筆者は始めてこのルスバスを本格的に取材することができて感動した。とあるバスは、男子高校生たちが所有しており、ビールが何度もこぼれたのであろう、床は非常にベトベトしており、まるでゴミ箱状態になっているバスもあった。

5. 避妊しましょう、コンドーム

コンドームも付いたルス帽子 Photo:Asaki Abumi
コンドームも付いたルス帽子 Photo:Asaki Abumi

ルスを取材中、至る所で何度も目にするのが、酒のビールに加えて、コンドーム。ルス期間中は、どうしても性行為活動が活発になる傾向がある。先生や親は、「ルスをするな」とは言わないが、「避妊だけはしっかりしなさい」と、報道機関や人権活動団体が注意を促す。

「ルス帽子の紐ルール」という、ルスが挑戦する100の悪ふざけルールがあるのだが、ルールをクリアするごとに異なる「がらくたアイテム」を帽子の紐につける。

例えば、

未開封のコンドーム→「ルス期間中に私は性行為をしなかった」

コンドーム→「スーパーのレジ前で1人に声をかけ、コンドームの良い点を全て語った」

コンドームの箱→「ボディランゲージのみで、コンドーム1箱を購入した」

ルスの集合場所に取材潜入していた際、イベントを取り締まっていた大人たちは無料でコンドームを配布し、未開封のコンドームを口にくわえて歩いているルスを何度も見た。ルスにとって、コンドームはお守りなのだ。

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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