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薬物検査拒否のX Gamesをオスロ市は来年も巨額支援するのか? 主催者が招致申請を提出

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
ESPN副社長Tim Reed 氏 Photo:Asaki Abumi

オスロ市から巨額支援を受けたにも関わらず、国際基準の薬物検査をかたくなに拒否するエックスゲームズ。ノルウェーで批判の声が高まっていると知りながらも、「我々は独立した機関であり、自分たちなりのガイドラインを変更するつもりはない」という主張を曲げない。拒否している検査対象は、世界アンチ・ドーピング機関WADAのガイドラインを基準にした「競技会(In-Competition)検査」だ。アフテンポステン紙は、その検査で発覚するのは大麻やコカインだと報道している。

エックスゲームズのこの問題は国際的には関係者の間で知られており、昨年オスロ市市議会でも招致案を可決する前に疑問視する政党もいた。主催者ESPNに説得を続けてきたノルウェーを代表するスキー連盟とスノーボード連盟は、主催者とオスロ市との契約を破棄。国内のスポーツ連盟やドーピング検査機関からも非難の声が高まる。

「ノルウェーは薬物検査を拒否する商業的なスポーツ競技大会のスポンサー」

オスロ市は今回のエックスゲームズ招致に約5億円以上の国民の税金を支援金として投資した。国際的には、「ノルウェーは薬物検査を拒否する商業的なスポーツ競技大会のスポンサー」ということになる。

政治家たちの悩みの種に

当時の市議会で契約の責任者だったビャルケ氏(自由党)は、この数日間で批判の対象とされているが、本人は当時の決断に間違いはなかったと責任を否定する(ノルウェーでは、日本とは異なり、政治家がミスを認め、謝罪するということはめったにない)。25日の国営放送局の取材に対し、「薬物検査は主催者の判断による」としているが、同氏はスポーツ連盟などから賛同を得られていない。

批判されているにも関わらず、来年度の支援申請をするESPN

オスロ市議会の文化・スポーツ局局長 Pohto:Asaki Abumi
オスロ市議会の文化・スポーツ局局長 Pohto:Asaki Abumi

オスロ市の文化やスポーツの責任者である市議会のリーナ・マリアン・ハンセン氏(労働党)は、ノルウェー国営放送局に対し、すでに「主催者側から来年度のエックスゲームズ開催の申請が届けられている」と話す。

来年度の開催を希望するのであれば、「国際基準のドーピング検査が絶対条件」とするハンセン氏。「今回の投資額は、オスロ市が他のスポーツ案件全てに投資している額に匹敵している。開催を望むのであれば、他のスポーツ関係者と同じようにルールに従うべき」としている。

エクストリームスポーツの最高峰とも讃えられる大会。だが、ノルウェー国内では主催者のTV2が競技を生放送で伝える中、他の大手メディアはドーピング検査に関する話題で持ち切りだ。

契約を破棄したノルウェースキー連盟に筆者が電話で取材中、「エックスゲームズは、検査によって何を発覚することを恐れているのでしょう?」と聞いた際、広報クラエス・トミー・ハーランド氏は電話先で爆笑し、「その質問、ぜひエックスゲームズにしてみて!」と答えた。

ESPNは、25日はノルウェー国営放送局に対しても、この件に関する取材を避けている。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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