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ノルウェー冬の不思議な光景。政治集会、学校、電車。どこででも、編み物っ娘

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
編み物好きの政治家が多いノルウェー Photo: Asaki Abumi

毎日、様々な現場で取材をしていると、ノルウェー人の不思議な習性に気付く。彼らは、至る所で「編み物」をしているのだ。

なぜ、そこまで編み物が国民生活に浸透しているのか、不思議に思うことがある。話を聞くと、「編み物をするために、編み物をしている」のではなく、「別の作業に集中したいから」編み物をしている人が意外と多いのだ。編み物をしながらのほうが、会議や授業に集中できるのだそうだ。

恋人や家族、友人のプレゼントのために手袋やマフラーを作る人もいるが、「自分のために」編んでいる人も、とても多い。大学の講義、長距離バス、地下鉄、会議、筆者がよく取材するコーヒー大会の会場など、冬になると、編み物人たちに至る所で出会う。

高校の先生、休憩時間の楽しみ Photo:Asaki Abumi
高校の先生、休憩時間の楽しみ Photo:Asaki Abumi

オスロにあるフォス高校。お昼の休憩時間、職員室で先生たちが楽しそうにおしゃべりをしていた。編み物をしながら、会話している人も。

左寄り政党は、編み物がお好き?

政治家の集会で、大量に発見した編み物隊 Photo: Asaki Abumi
政治家の集会で、大量に発見した編み物隊 Photo: Asaki Abumi

これまでノルウェーの全ての政党の集会には何度もお邪魔してきているが、1・2月は編み物をしている政治家たちを大量に発見した。特に、2月の緑の環境党オスロ集会では、討論を聞きながら、編み物をしている人たちが続出。

緑の環境党 Photo:Asaki Abumi
緑の環境党 Photo:Asaki Abumi

面白いことに、左寄りの政党ほど編み物をしている人が多い。ノルウェーでは、国会に座る政党のほとんどが、日本人からすると左寄りだ。右寄りとされている、現政権の保守党と進歩党の集会では、編み物をしている人をいまだに見かけない(服装や髪形もカジュアルではなく、スーツなどでバッチリ決めている)。

左派社会党の青年部 Photo:Asaki Abumi
左派社会党の青年部 Photo:Asaki Abumi

店番をしながら、編み物

雑貨市でも、編み物をしながら店番 Photo:Asaki Abumi
雑貨市でも、編み物をしながら店番 Photo:Asaki Abumi

冬の露店や蚤の市でも、店番をしながら、編み物をしている人が多い。

地球の歩き方 オスロ特派員ブログ「オスロの手作り雑貨 ブロー・クリスマス・マーケット」より

編み物ほどではないが、刺繍も人気がある

「北欧ノルウェーの刺繍・編み物ブームの背景 話題の刺繍カフェとは?」

編み物ブームの火付け役は、2人の男性

ノルウェーの編み物ブームの火付け役となったのは、女性ではなく、2人のノルウェー人男性。「アルネ&カルロス」だ。日本の編み物好きの間では、有名人。近づくイースター(復活祭)に向けて、イースターエッグの作り方を動画で発表したばかり。

初めて筆者が編み物ノルウェー人を目にしたのは、オスロ大学での講義でだった。東京での大学生活では見たことのない光景で、「なぜ学生は編み物をしながら黒板を見ているのだ」、「なぜ誰も何も気にしないのだ」と不思議だった。

政治家が政党の集会で編み物をしている光景は、政治家と国民との距離が近いことを反映しているシーンのひとつともいえる。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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