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環境に優しい交通の街に!オスロにビジネスチャンスを見いだす企業競争が始まる

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
電動バスの導入を目指すオスロ Photo: Asaki Abumi

悪化する大気汚染の改善を目指して、オスロの市場は大きく変わろうとしている。そこにビジネスチャンスを見いだしているのが欧州企業だ。

昨年の統一地方選挙後、環境政策に熱い政党陣営が権力を握り、政治家たちは緑政策にさらなる巨額資金を投じることを発表した。パリ合意を達成し、大気汚染で体調を悪化させる人々の増加に歯止めをかけるためだ。

持続可能な交通システムへの全面切り替えへ

2019年に中心地のカーフリー、2020年に市内の排気ガス50%削減を目指すオスロ。ディーゼル車の売り上げは現象するであろう一方、電動の自動車・自転車・船など、持続可能な交通テクノロジーの需要が促進する。市内の交通公共機関も、全て環境に優しいエネルギーに変える必要がある。

オスロの課題は、減少しない大気汚染物質、二酸化窒素(NO2)だ。オスロを走るバスの多くは、未だにディーゼル燃料を使用し、公共交通機関の中で最も排気ガスを出している。オスロ県と隣のアーケシュフース県の公共交通機関を取り締まるルーテル(Ruter)は、1100台のバスを所有し、77%はディーゼル燃料で走る。ルーテルの目標は、2020年に全ての交通機関を持続可能エネルギーに切り替え、オスロは電動バスを主要とさせることだ。

交通機関のエネルギー転換の行く末を決定するのは、自治体の政治家・市議会。各メーカーはそれぞれの関係者に熱いアプローチを開始している。

製造会社「その目標は可能です!私たちはもう準備ができている!」

売り込みに必死な製造業者は魅力をアピールする Photo:Asaki Abumi
売り込みに必死な製造業者は魅力をアピールする Photo:Asaki Abumi

6日、オスロの電動バス化を目指し、政治家と製造メーカー、国内の交通機関業界の関係者が集まったセミナーがオスロで開催された。Volvo、Solaris、Mercedes-Benz、Hybricon、Ebusco、VDL Bus&Coach Nordicの各メーカーは、自分たちの電動バスがどれほど魅力的か、熱くプレゼンをする。「私たちはもう準備ができている!」というフレーズで、エネルギー転換にすぐさま協力できると宣言した。

セミナーの主催者である環境団体ZEROの代表マリウス・ホルム氏は、「今は環境に熱い企業と政治家にとって、最高のタイミング。政治家が乗り気で、企業も準備ができていますからね」と、両者にとって面白い時期だと語る。

政策討論をする各政党 Photo: Asaki Abumi
政策討論をする各政党 Photo: Asaki Abumi

ボルボ社は、オスロを走る64路線、460台の赤色の市内バスを対象に調査を行った。結果、同社は、ディーゼル燃料などと比較して、水素や電気のほうが圧倒的に環境に優しく、金銭的にも節約できるとする。オスロではバイオ燃料普及が進むが、コストが高い。一方で、ノルウェーでは電気エネルギー価格が低いため、電動バスの魅力は大きい。

電動バスの導入試験はすでにスウェーデンなどで実施。ノルウェーで最初に電動バスを本格導入した町はスタヴァンゲルのみ(ただし、走っているのは2台のみ)。他の町では、導入試験で終わっている。

オスロで電動バスの実演

通常のバスとは色が違う Photo: Asaki Abumi
通常のバスとは色が違う Photo: Asaki Abumi

今週、オスロにやっと最初の電動バスが姿を表した。今回は試験的にデモンストレーションとして行われているが、市議会は早い段階での本格的な導入を目指す。

もし、ボルボ社の充電施設設置の電動バスを導入した場合、調査対象の80%の路線はこれまで通り運用が可能で、残りの路線には一部の追加工事などが必要とされる。「終点駅で6〜8分の充電後、すぐに発車可能」と、販売責任者は熱く語った。

デモンストレーションでは、充電する様子を見学した後、バスで市内を15分ほど回った。社内のデザインや色使いは異なるが、北欧でよくみかけるバスと乗り心地はほとんど変わらない。街を走る最初の電動バスに、「なんだなんだ」と興味深そうに凝視する通行人が大勢いた。

今、各自治体では、どこが本格的に大規模な持続可能エネルギーの交通の街となれるか、密かに競争が始まっている。その手本となれるように、意欲をみせているのがオスロだ。

2020年に市内の排気ガス50%削減を目指すオスロ。「オスロにできなければ、どこができるというのでしょう」。若い女性政治家、オスロの環境政策リーダーである環境・交通通信局長のラン・マリエ・ヌイェン・ベルグ氏は、セミナーのオープニングスピーチで笑顔で語った。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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