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飲酒と性行為が当たり前のノルウェー高校生ルス 驚きの卒業儀式100のルールとは?

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
国会から王宮まで四つん這いで向かう高校生 Photo:Asaki Abumi

ノルウェーの信じられない高校生文化

ノルウェーでは卒業直前の高校生が、約1か月間、ルス(RUSS)という特別な存在になることができる。赤・青・緑・青・黒色のオーバーオールやつなぎのコスチュームを着て、街を歩いている彼らは楽しそうだ。この期間、彼らは、「何をしてもいい」。本当に、何をしてもいいのだ。

ノルウェーの高校生ルス、日本では考えられない大騒ぎ100のルール

先生や警察官などに、驚きの失礼な行為をすることもある。飲酒をし、二日酔いで授業に出席し、一部の若者は性行為にあけくれる。冗談ではない、本当だ。

北欧の中でも、ノルウェーのルス文化は、「クレイジーだ」とスウェーデン人やデンマーク人は口を揃える。

ルス帽子100のルール

緑ルスと帽子。紐に色々付いている Photo:Asaki Abumi
緑ルスと帽子。紐に色々付いている Photo:Asaki Abumi

ルスの聖なるコスチュームは、一度も洗ってはいけないといわれるオーバーオール(→吐いたゲロや、こぼした酒がついていて、臭くて不潔)。そして、「ルス帽子」がある。

この帽子には紐が付いていて、日数が経つごとに、おかしな「ガラクタ」ががちゃがちゃと結び付けられている。レシートやコンドームなど。

ルス執行委員会が定める「ルスの紐100のルール」というものがあり、ルールをクリアするごとに、ガラクタは増える。

そのルールが、とんでもない内容となっている。飲酒と性行為のオンパレードなのだが、高校生たちは、ふざけながら、これを少しずつ達成していく。

今年もオスロの大通りで、四つん這いで王宮を目指すルスたちがいた。ルスの子たちに紐をつけて、「ははは!」と楽しそうに歩く飼い主。「これは俺の犬だ」、「疲れた、ちょっと休もうぜ!」と話しながら、男女5人組は楽しそうだった。これもルス帽子のルールのひとつだ。

今回は、その規則の一部を翻訳してみた。恐らく驚かれるだろうが、ノルウェーの政治家、大人、教師、警察官たちはこれを黙認している。

これが、帽子ルールだ!(クリアしたら帽子の紐に着けるガラクタ)

  • 同性のルスにキスする(ピンクの羽)
  • 警察官にドーナッツを1個あげる(サイン)
  • 学校の清掃員から掃除用具を奪い、一緒にフェンシングをする(ぞうきん)
  • もう一人のルスと、腕と足をテープや紐で結び、学校で1日を過ごす(テープの切れ端)
  • タバコを10本同時に吸う(タバコの空き箱)
  • 口にタンポンを2個入れて、500ミリリットルの水分補給(タンポン)
  • 下着だけで1日中授業を受ける(靴下)
  • アパレルショップでマネキンのふりをする(サングラス)
  • 授業中、5分毎に「乾杯!」と叫ぶ(プラスチックのコップ)
  • パンを靴代わりにして1日を過ごす(パンの耳)
  • ヒゲや髪など、身体上のものをすべて剃る(クシ)
  • 性病検査を受ける(クリニックのシール)
  • 「ノーはノー。同意のないセックス=暴行」というシールをルスの制服に付ける(アムネスティーのロゴシール)
  • ルスではない人に、ルスの紐ルールをやらせる(サイン)
  • ガンの支援機関に20ノルウェークローネ寄付(付け髭)
  • 一晩でキスした10人の携帯電話番号をゲット(リップバーム)
  • ボディランゲージだけでコンドームを一箱買う(コンドームの包み)
  • 2人のルスと同時にセックスをする(危険看板)
  • 12時間以内にルスの紐ルール24個をクリアする(レッドブルの缶)
  • ルスの車やバスでの巡回に、先生に同行してもらう(サイン)
  • 24時間眠らない(帽子に紐)
  • 逆さま立ちをしながら、330ミリリットルの水分補給。誰かに手伝ってもらってもよい(メッセージシール)
  • 公共交通機関やルス・バスの中で、最低5カ所の駅までガイド役を務める(旅行券)
  • 魚屋で買った魚を紐につけて、犬と散歩するように、魚と散歩する(魚の形をしたお菓子)
  • ルス期間中、ひとりだけの恋人とずっと付き合う(スリッパ)
  • ルスの服のまま、ジムでトレーニングする(ドリンクのシェイク容器)
  • 3人の証人が見ている中、誰かと森の中でセックスする(金色のコンドーム)
  • 最低750ミリリットルのワイン瓶を20分で飲み干す(ワインのコック)
  • 自分で描いた自画像付きの身分証明書で酒を買う(レシート)
  • 一番近くにある国営酒屋にスキー板を履いて向かう(スキー板のワックス)
  • ルス執行委員会のメンバーとセックスをする(シャンパンの蓋)
  • ルス期間中、一切飲酒をしない(ワッペン)
  • 外でセックスする(松ぼっくり)
  • 7日間、7人とセックスする(ドラマのワンシーンBARNEY STINSON のTHE PERFECT WEEKの写真)
  • オスロの大通りでストリップショーをして、50クローネ集める(50クローネ札)
  • ルス友だちの母親から、セックスにおけるアドバイスをもらう(安全ピン)
  • 5月1日前までに(→寒い時期)外で泳ぐ(アイスの棒)
  • 1日中、枕をイス代わりにして授業を受ける(定規)
  • 警察官に抱きつく(警察官バッジ)
  • 授業中、ずっとラップで歌う。もう一人のルスのビート付きで(ノートの切れ端)
  • 17歳以上の友だちの兄弟にキスをする(風船)
  • 先生の自宅の庭に、トイレットペーパーを捨てる(トイレットペーパー)
  • 噛みタバコを12時間、口の中に入れたままで過ごす(噛みタバコの容器)
  • 朝食フレークに牛乳ではなく、酒をいれて食べる(フレーク箱の紙切れ)
  • ルス期間、1日も授業に出席しない(ハローワークのロゴ)
  • ルス期間、1度もセックスをしない(未開封のコンドーム箱)
  • チーズバーガーを一口、もしくはビックマックを二口で食べる(包みの紙)
  • おしっこをしながら、500ミリリットルのビールを飲み干す(ビールの蓋)
  • ルス執行委員会のメンバーから、胸にサインをしてもらう(ペン)
  • 先生の自宅の庭か玄関で、一晩寝る(チョーク)
  • ルス期間中、暴力的な行為に関わらない(バッジ)
  • 公衆トイレで、ドアを全開状態でウンチをする(トイレットペーパーの切れ端)
  • 公共交通機関内で、音楽をかけながら、ストリップショーをする(1クローネ硬貨)
  • 1日中、学校で下着なしで過ごす(Tバック)
  • 国会議事堂から王宮まで、下着で駆け抜ける(ルス委員会PR担当者の写真)
  • 体育の授業の後、別の性の更衣室で着替える(人の形をしたお菓子グミ)

幼稚園児の英雄、ルス。名刺をたくさん集められた子は、「すごい」

名刺を配布する緑と赤ルス Photo:Asaki Abumi
名刺を配布する緑と赤ルス Photo:Asaki Abumi

ルスは、幼稚園児たちにとってのヒーローとされている。ルスたちが持つ「ルス名刺」をたくさん集められれば、「かっこいい」そうだ。

この時期、ルスが歩いていると、幼稚園児たちが「名刺ちょうだい!」と、磁石のようにルスの周りに集まってくる。ルス帽子のルールにも、名刺と幼稚園児は必須だ。

  • 幼稚園児たちにアイスをおごり、ルス名刺をあげる(アイスの包み)
  • ルス名刺を食べる(ルス名刺)
  • 幼稚園の庭で、幼稚園児たちにルス名刺をあげずに1分間走り続ける(紙飛行機)

レイプ事件や仲間外れが問題化、でも誰も止められない文化

ルス帽子のルール、驚いただろうか? このようなことが社会的に容認されているため、毎年議論とはなるが、ルス文化を廃止・規制しようという動きには至っていない(議論されるだけで、終了)。

残念ながら、泥酔する女子高校生を狙ったレイプ事件も、毎年起きている。また、ルス文化にうまく参加できずに、仲間外れにされていると悲しむ子もいる。

ノルウェー社会の極端な部分が最も顕著となるルス文化。大人が口出しできない、ルスの聖域。日本でこんなことが起これば、教師と保護者がショックで卒倒してしまうかもしれない?

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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