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オスロ最大級・初の県営「昆虫ホテル」がオープン 春ベストシーズンの客層はまだ不明!?

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
宿泊者は人間ではない。昆虫ホテルが誕生 Photo:Asaki Abumi

オスロ県が経営するインセクトホテルがオープン

ノルウェーの首都オスロにあるオーラ・ナル公園に、昆虫のための宿泊施設、「インセクトホテル」が誕生した。都市開発に伴い、コンクリートやアスファルトが増える一方で、昆虫が卵を産み付ける場所となる、枯れた木材や廃材などが減少。動物や昆虫の生息地が減少する中、オスロ市が初の「昆虫のためのホテル建設」に着手することとなった。廃材を利用した昆虫のための棲み処は、欧州の公園で増加しつつあるが、北国ノルウェーではまだ広くは浸透していない。

木の下で、日陰と日差しがほどよく当たる環境にPhoto: Asaki Abumi
木の下で、日陰と日差しがほどよく当たる環境にPhoto: Asaki Abumi

建設者は高校生

5月22日は国際生物多様性の日であり、その一環として、オスロ県は今年は昆虫ホテルの建設に取り組むことに。春になると花が咲き、花粉媒介者としての虫が増加する季節になる。緑あふれる公園でホテルはオープンされた。のこぎりなどで木材を切り、工事に携わった建設者は、市内の高校生たちだ。

ホテルを公園に移動させる際に、すでに一部の昆虫が入り込もうとしたそうだ。「もう、館内に宿泊者がいるかもしれない」と、関係者はホテルを覆っていたシートを取り去る前に笑いながら語った。

多数の小部屋が並ぶホテル内 Photo: Asaki Abumi
多数の小部屋が並ぶホテル内 Photo: Asaki Abumi

極寒のオスロの冬を乗り越えられる昆虫は少ない。春にできるだけ多くの卵を産み付けられるように、都会の中心地に昆虫ホテルを建設することは、生態系を守ることにつながる。

県の特別コンサルタント・自然生物担当であるテア・トゥルトゥムウイガード氏は、「市内の植物園には昆虫ホテルはあるが、まだまだ国内では一般的ではない。これからもっと注目を集めるだろう」と語る。

初めての県営昆虫ホテルということもあり、どのような種類の昆虫(=お客様)が引っ越してくるか、まだわからないそうだ。

「明確な把握はできてはいないが、恐らく、オスロでは最大級の昆虫ホテルとなる。今後も自治体の公園で増設していけたら、それはとってもワクワクすること」と同氏は語る。

地元の子どもにとって楽しい昆虫観察の場となりそう Photo: Abumi
地元の子どもにとって楽しい昆虫観察の場となりそう Photo: Abumi

オスロ市には、ミツバチなどをターゲットとした人工のハチの巣は増加しつつあるが、ターゲットが決まっていない昆虫の巣箱は珍しい。この夏、どのようなお客様が来訪し、卵を産み落としていくのか楽しみだ。

期待通りにホテルは昆虫の出産場所となるか Photo: Asaki Abumi
期待通りにホテルは昆虫の出産場所となるか Photo: Asaki Abumi

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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