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北欧は、友達が作りにくい国?ランキングで下位を占める

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
ノルウェーでは友達作りに、いつもより多めのエネルギーを使うPhoto:Abumi

幸せな国、福祉制度が豊かな国、男女平等が進んだ国、女性が働きやすく、子育てがしやすい国。数々の世界ランキングで、トップ常連国の北欧。しかし、「外国人にとって友達が作りやすい国」ランキングでは、見事に下位を占めた。

Indy100『These are the best and worst countries in the world for making friends』によると、InterNationsでの2016年度の調査で、1万4千人からの回答を対象に割り出したもの。

67か国ランキング

1位 台湾

2位 ウガンダ

3位 コスタリカ

12位 スペイン

14位 カナダ

25位 アメリカ合衆国

29位 日本

42位 英国

43位 中国

54位 フィンランド

55位 ドイツ

56位 フランス

60位 デンマーク

62位 スウェーデン

63位 ノルウェー

65位 チェコ

66位 サウジアラビア

67位 クウェート

ランキングでは、1~67位まで、色別に7クラスに分けられており、56~67位は赤色で「最もアンフレンドリーな国」とされている。

実際、どうなの?

さて、調査データの明確性は置いて、在住者としてどう思うかというと、あまり驚かない。北欧の中では、ノルウェーは最下位かなと予想していた。デンマークやスウェーデンは、もうちょっと上かなと思ったが。

「ノルウェー人は友達になりにくい」は、オスロ大学でノルウェー語クラスに通っていた時に、外国人学生たちが笑いながらよく話していたことだ。

「ノルウェー人が不親切」というわけではない。北欧の人々はとても親切だ、だがシャイだ。見知らぬ人には、悪気なく、警戒する。「ノルウェー人と仲良くなりたいのであれば、お酒を一緒に飲んだほうがいい」もよくある話だ。

筆者はよくオスロのカフェやスペシャルティコーヒー業界の方々にインタビューするが、ノルウェー人からよく出る話がある。「ほら、ノルウェー人って、知らない人から急に話しかけられると、“どうして僕に話しかけてくるの!?”って、驚く反応をするでしょう?カフェという空間では、そのカルチャーに風穴をあけて、人と人との距離を縮めたい」と。恐らくこれまで取材した、多くのコーヒー業界の大物たちはこの話をした。

親日家のノルウェー人ばかりと一緒にいたら、そう感じることはないだろう。だが、誰もが異文化交流や日本に興味があるわけではない。外国人との交流に慣れていないノルウェー人の輪に入るとき、社会に本当に溶け込もうとしたとき、この戸惑いにぶつかる人もいるだろう。

以前、ノルウェーでのポケモンGO現象について書いた時も、シャイな国民性に変化が表れており、驚いたことについて触れている。

日本のメディアでは、北欧は素敵に描写されがちなので、このような面はあまり伝えられることがない。住むことがないならよいが、現地で移住することになった場合は、頭にいれておくと、サバイバル術として役にたつだろう。

「北欧症候群」が増加しそうな日本メディアの「憧れの北欧」のつくりかた

ノルウェー人が、国際市場でPRやマーケティングが苦手な理由にも、この国民性が少なからず影響している。自分たちから一生懸命に宣伝してくることがあまりない。つい最近、ノルウェーの音楽関係者にも、「その、のんびりしたマーケティング・カルチャーは、損することもあるよ。お酒を手にしてソファに座っていても、誰も寄ってはこないよ。売る気がないのかとも誤解されるよ」とフィードバックをだしたばかりだった。

就職活動する時にも、頭にいれておくと役立つ。つまり、人脈があったほうが、仕事が見つかりやすいということだ。挨拶もしたこともない採用担当者に、素晴らしい履歴書や志望動機書を送るよりも、知り合いに間に入ってもらって、接近したほうが、採用される可能性が高いこともある。赤の他人よりも、誰かの紹介だと、安心するのだ。

北欧やノルウェーの人を悪く言っているわけではない。ただ、特にシャイなノルウェー人は、壁の後ろに隠れて、異端者にドキドキしていることもある。こちらから近づいて、その壁をぶち破るくらいの意気込みのほうが、共存しやすいだろう。

「アンフレンドリー」ではなく、初対面の人や、新しい出来事や変化などには、懐疑的になりやすいのだ。繰り返すが、彼らに悪気はない。親切な人たちだが、本当に仲良くなるまでには、多少のエネルギーを要する。

「北欧に憧れて」来る人は、こういう側面もあるのだなと知らないと、現地で多少のカルチャーショックを受けるかもしれない。シャイな国民性については、ほほえましい目線で笑いのネタにされていることも多いので、チェックしてみると面白いかもしれない。

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Photo & Text:Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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