粒子状物質が原因によるオスロでの大気汚染死者は年間185人
185人の「健康的に生きられたはずの時間」を合計すると、1753年間
ノルウェーでは、大都市のオスロやベルゲンで冬の大気汚染問題が深刻化している。人口約65万8千人の首都オスロでは、年間185人が粒子状物質が原因による疾病で死亡していると、ノルウェー道路庁・公衆衛生研究所は発表した。粒子状物質に着目した研究結果は初となる。
該当する185人の「健康的に生きられたはずの時間」を合計すると、1753年間に及ぶ。
ノルウェーでは、大気汚染が原因で早期死亡している人は1500~1700人に及ぶという調査結果もある(EEA Air quality in Europe/ノルウェー大気研究所)。
北欧各国を比較した際、石油・ガス産業に依存するノルウェーは、「環境に優しい国」とは一概には言えない。オーロラやフィヨルドの大自然の写真のイメージで、「空気がキレイ」と思われがちだが、観光客が最も集まる都市は、冬の大気汚染問題に頭を抱えている。
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大気汚染の原因は、車、暖炉、スパイクタイヤ
都市で問題視される大気汚染の最大要因は、主に二酸化窒素と粒子状物質とされている。今回、ノルウェーで話題となっている粒子状物質は、主に、ディーゼル車やガソリン車、薪暖炉(ストーブ)、雪や氷がない日に発生するスパイクタイヤ粉じん(特にラッシュアワー時)、越境大気汚染からの物質を指している。
「オスロ県民の疾病負荷の原因の三分の一は、大気汚染による」と同研究所のシュヴァルチェ氏は発表した。
右翼と左翼の対立で、環境政策が混乱
オスロの大気汚染問題は、昨年の統一地方選挙でも大きなテーマとなり、小政党の緑の環境党が、第三政党となり、異例の勝利を果たした。しかし、環境対策は市民生活に大きなメスをいれることもあり、反発を浴びている。
また、権力を握る連立政党が、自治体レベルでの首都オスロは左翼、国家レベルでの与党政権は右翼ということが原因し、両者で足を引っ張り合う構図が続いている。
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オスロでは、冬のスパイクタイヤ使用者にはさらなる追加料金の支払い義務を課し、老朽化した暖炉を、最新の暖炉へ交換をする住民には補助金を出すなどの対策を講じている。
大きく話題となった、オスロ中心地のカーフリー対策においては、公約通り、残りの約3年以内に実現できるかは、まだ誰にもわからない。
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Photo&Text: Asaki Abumi