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育児はリレーのバトンパス ノルウェー移民大臣が妊娠、夫が育児の大部分を担うことに

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
育児がしやすい国と定評があるノルウェー(写真:アフロ)

過激な言動や厳しい移民政策で物議を醸すシルヴィ・リストハウグ移民・社会統合大臣(38)。右翼ポピュリスト政党の進歩党で、現在は夫ともに5才と8才の2人の子どもをもつが、3人目の子どもを妊娠したことを、芸能週刊誌Se og Horが報じた。

現在の政府は、保守党と進歩党の連立政権。19人の官僚のうち、首相を含め女性は9人と、男女の割合は半々だ。リストハウグ氏は、農業・食糧大臣を務めたのち、昨年の難民危機以降、新設された移民・社会統合大臣に抜擢された。

夏休み前は、子どもとの時間を優先させるために、政界から離れることも示唆。多忙な大臣職のため、子どもを幼稚園に迎えに行くことができず、夫が育児を中心的に担っていたためだ。その後、決意を新たにし、2017年の国会選挙に出馬することを表明したばかり。

大臣の妊娠は各メディアで大きく報じられているが、同氏は週刊誌の取材に対し、「とても楽しみにしています。子どもたちは大きくなってしまったから、また我が家に赤ちゃんがやってくることが楽しみです」とコメント。

最も注目を集めやすい大臣のため、大臣職はどうなるのか気になる人は多い。大臣のフェイスブックには、「あなたがいなくなったら、ノルウェーはどうなるのでしょう」と心配する支持者からのコメントが届いているが、「3~4か月は、もしかすると家にいることになるかもしれないけれど、後は夫のエスペンにバトンをパスします」と大臣は答えている。

ノルウェーでは、育休期間49週(給与100%支給)か、59週(給与80%支給)が選択可能。パパクオーター、ママクオーターの制度があり、2014年7月以降は、父親と母親は、育児休業が各自10週間ずつ割り当てられる。

ノルウェーで取材していると、男性の政治家が、インタビューの最後に、「ごめん、そろそろ幼稚園に子どもを迎えに行かないと!」と職場を後にしたり、議員が子どもを背中に背負いながら議会や記者会見、訪問先に連れてきたりするシーンによく出会う。子どもが急に病気などになっても、代理議員という制度があるため、ほかの政治家が代理として議会などに出席が可能だ。

リストハウグ大臣のように、女性のほうが働き、男性が育児に励むという光景も、珍しいものではない。政策をつくる政治家も、性別を問わずに、育児に参加しやすい環境と、それを受け入れられる社会風潮が、子育てをしやすい国づくりにつながるのかもしれない。

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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