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100年後まで誰も読めない100冊の「未来図書館」 3人目の作家はアイスランドのショーン氏に決定

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
100人中3人目の作家となったショーン氏 Foto: Thomas A

アイスランドを代表する作家ショーン( Sjon)氏が、「未来図書館」に所蔵される3作品目の執筆家に選ばれた。

ノルウェー発祥の「未来図書館」では、毎年1人の作家を選出。合計100人の作家による100の物語がオスロで建設予定の新国立図書館に所蔵される。

中心人物は、首都オスロとスコットランド出身のデザイナー、ケイティー・パターソン氏。自然・芸術・文学を融合させた大規模なパブリックアート計画だ。

寄贈された作品は、100年後の未来、2114年まで、誰も読むことができない。今生きている私たちの多くは、この100作品を読むことはできないが、世界中の作家たちから、未来の世代への大きな贈り物となる。

1人目の作家(2015年)はマーガレット・アトウッド氏。『Scribbler Moon』を寄贈。

「これは未来への素晴らしいプレゼント。まだ、この計画をよく知らない人もいるので、“木の下に本を埋めるの?”と聞かれることもありますよ」

オスロの森で本を寄贈したアトウッド氏 Photo: Asaki Abumi
オスロの森で本を寄贈したアトウッド氏 Photo: Asaki Abumi

2人目の作家(2016年)はイギリス出身のデイヴィッド・ミッチェル氏。『From Me Flows What You Called Time』を寄贈した。

「おかしな計画だと思った。この未来計画を信じない自分よりも、信じる自分のほうが、なんだかいいなと思えるようなった」

2冊目を寄贈したミッチェル氏 Photo: Asaki Abumi
2冊目を寄贈したミッチェル氏 Photo: Asaki Abumi

ショーン氏(1962)は、『The Blue Fox』, 『The Whispering Muse』, 『From the Mouth of the Whale』などを執筆し、数々の賞を受賞。『Moonstone: The Boy Who Never Was 』は、2013年にアイスランド文学賞なども受賞し、35か国語に翻訳された。ほかにも詩、歌詞、オペラの台本を手掛ける。2001年には映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』でアカデミー賞の歌曲部門にもノミネートされた。文学振興団体「アイスランド・ペンクラブ」の会長でもある。

3人目の作家となったことに対して、ショーン氏はプレスリリースでこう語る。「初めてプロジェクトのことを聞いた時、まるでゲームのようだと思った。イエスと言ってから、このチャレンジが、どれだけ奥深いものか次第と実感するようになった。執筆の芸術性に、作家が向き合う根幹がテストされている。巨大なゲームのようだ」

「誰のために書くのか?読者の反応は私にとってどれだけ重要か?文章の何がタイムレスとなりえるか?そして最も難しい問題は、未来の人々は、私が書く言語を理解するだろうか?このゲームは、楽しみで仕方がない」。

未来図書館に寄贈する作品の言語や内容、文字数は自由だ。ショーン氏の作品は、2017年5~6月にオスロの森で寄贈予定。

プロジェクトの責任者であるケイティー・パターソン氏は、親日家で村上春樹氏のファン。いずれ、日本からも作家がプロジェクトに招かれる可能性は非常に高い。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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