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ノルウェー人はチェスが大好き!ブームの火付け役は世界選手権王者マグヌス・カールセン

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
(写真:ロイター/アフロ)

あまり知られていないが、実はノルウェーといえば「チェス大好き」な国でもある。チェスブームの追い風となっている人物が、マグヌス・カールセン氏。11月30日に開催されていた世界チェス選手権では3度目の優勝を果たした。

ノルウェー国営放送局NRKは、同氏が出場する大会は、丁寧な解説を加えて生放送で伝える。30日の世界選手権では、人口520万人の国で、76万4千人が試合をテレビ・ネット観戦した。それまでの連日の試合中継も、NRK2チャンネルで放送されており、通常のテレビ番組の視聴率の3倍を超えるという。

チェスといえば、ノルウェー人の自宅、週末や休暇を過ごす別荘の山小屋、学校の図書館など至るところで見つける、現地ではお馴染みのテーブルゲームだ。

公園で開催されるイベントでも、チェス台が配置され、通りゆく知らない人々とチェスをする市民の姿を見かけたことがある。

昨年の統一地方選挙の取材中も、現オスロ市長であるマリアンネ・ボルゲン氏が、自身の左派社会党の選挙小屋の前で、市民とチェスをしながら政治の話をしていた。

選挙中に市民とチェス。その後オスロ市長となったボルゲン氏 Photo:Abumi
選挙中に市民とチェス。その後オスロ市長となったボルゲン氏 Photo:Abumi

2013年にカールセン氏が新世界王者となった時は、大喜びしたノルウェー国民。各店舗でチェスのボードゲームが続々と完売し、「今年のクリスマスは、自宅でチェスをしているノルウェー人が多いでしょう」と報道されたほど。

NRKの分析チーフであるとトローネン氏は、同局の報道で、ノルウェーが金メダルを量産する、冬季競技の長期的な生放送と同じ効果が、チェスの試合にはあると解析。

また、記者会見を突然退場するカールセン氏の精神状態が心配されるなど、注目を浴びてしまうタレント的な要素は、クロスカントリースキー王者であるペッテル・ノールトゥグ選手にも似ているといえる。時に不安定な言動をするため、マスコミにとって絶好のネタとなるが、それでもしっかりと成績は残し、ノルウェーという国の国際的評価をあげる。

チェスは知的な国民的スポーツとして、これからもノルウェーで盛り上がりをみせていきそうだ。

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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