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働きたい人を無駄にしていいのか? 保育園落ちた!問題。

赤石千衣子しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長 
都内だけで保育園の待機児童は2万人以上、2万人以上の親たちが働けない(写真:アフロ)

保育士の待遇問題や、日本の家族政策にかける予算の少なさなど、多くの問題が指摘されています。ほんとうにそのとおりなのです。

ここでさらに言いたいのは…

政府に要望しに行っているママたちを見て私が思ったことは、仕事もできる力のある人たちだろうということと、彼女たちが働けないのは、日本社会の損失だ!ということでした。厚生労働大臣は、そう感じてくれただろうか、ということです。

彼女たちは子どもを保育園に預けて仕事をしようという意欲のある女性たちです。

自分たちの要望を文章にまとめて、時間を調整して、子どもを連れてはじめていく場所でぐずったり泣いたりするのをなだめ、初体験の国会方面に行き、大臣に会いにいって自分の状況を話し、発言してくるのです。

わたしも幼い子どもを連れて、国会に要望しに行ったことがあるから大変なことだとわかります。

もし職場で働けば、それなりの仕事もできる人たちでしょう。

もちろん、自分の生活のためにも働かねばならないのだと思います。

しかしこういう言い方をあえてすれば、日本社会に貢献できる人たちだということになります。

(いやすべての人が働かなければ貢献していないといっているわけではないのです、それぞれの事情があり、違う貢献があります、もちろん)

だが働くということは、その人自身の自信を高め、視野を広げ、能力を高め、それが社会にも帰っていくことです。

都内20区で、2万341人以上の待機児童がいるといいます(東京新聞3月13日 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201603/CK2016031302000148.html)

つまり、2万人以上の働きたいのに働けない人たちがいる勘定になります。

その人たちが、毎日7時間、年に1750時間働いたとしよう。1750万時間の労働時間を日本は失っているのだ。これはいったいどれだけの「価値」なのでしょうか。

すでに日本は人手不足となってきているのです。企業の過半数で人手不足を感じているのだということです。

(ニッセイ景況アンケート調査結果-2015年度下期調査

http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=52314)

この先も日本は人口減少社会であり、構造的に人手不足が続く見通しです。人材不足のおり、高齢者と女性に期待する声は大きいのです。女性がこれからもっと活躍していかねばならないということで政策課題にも掲げたのでしょう。言葉はいろいろですが、この間、どの政権もこの問題をなんとかしようという目標は掲げてきていました。

それなのに、日本では、マタハラが横行して社会問題となり、マタハラをくぐり抜けたとしても、保育所の入所が激戦になってしまっていて、それがなかなか解決できていないのです。

一方では「活躍」したいという人がいて、「人手」をほしい企業や雇用の場があるにもかかわらず、なのです。

要望しに行ったママたちがブランド品の抱っこひもをつけていたかどうかは大きな問題ではない(リサイクルショップで買ったかもしれないし)でしょう。

働いて、消費を拡大し、税金を払う人たちが増えることは社会にとっても大切なことではないでしょうか。

それが内需の拡大にもつながると考えればいいわけです。

今回の「保育園に落ちた。日本死ね」のブログから起きた一連の動きを教訓にしましょう。

日本社会が、働きたいのに働けない人が大量に出ていることに真剣に向かい合わなければなければならない事態になっている、ということに気が付くきっかけになってほしいものです。

しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長 

NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長。当事者としてシングルマザーと子どもたちが生き生きくらせる社会をめざして活動中。社会保障審議会児童部会ひとり親家庭の支援の在り方専門委員会参考人。社会福祉士。国家資格キャリアコンサルタント。東京都ひとり親家庭の自立支援計画策定委員。全国の講演多数。著書に『ひとり親家庭』(岩波新書)、共著に『災害支援に女性の視点を』、編著に『母子家庭にカンパイ!』(現代書館)、『シングルマザー365日サポートブック』ほかがある。

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