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全米オープン6日目現地リポート:錦織圭「異なる次元のテニス」を披露し4回戦へ

内田暁フリーランスライター

錦織圭 64 62 63 L・メイヤー

錦織の右足親指負傷の事を知っていたかとたずねると、メイヤーは「全く知らなかった。彼は良い動きをしていたので、そんな風には感じなかった」と目を丸くします。現在、キャリア最高位の26位につける絶好調男にとっても、錦織のプレーは万全に映ったようでした。

2月のチリオープン準優勝を皮切りに、ウインブルドンベスト16、さらにハンブルク大会でフェレールを破りツアー初タイトルを手にするなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いでニューヨーク入りしていたメイヤー。そんな彼への注目度の高さは、試合後に取り囲むアルゼンチンメディアの数からも伺うことができました。それだけに3回戦での完敗は、彼ら記者たちにとっても、少なからずショックだったのでしょう。

「2回戦が長い試合だったので、その疲れがあったのか?」、「ずいぶんとベースラインから下がっていたが、どうしてなのか?」。

敗者には、そんな容赦ない質問が浴びせられました。

対するメイヤーの答えは、要約すれば「僕が悪かったんじゃない。ケイが良かっただけだ」につきます。

「疲れは問題ではなかった。ただ、ケイが僕にプレーする時間を与えてくれなかった」

「ベースラインから下がっていたのは、結果論だ。主導権を握られてしまったので、下がらざるを得なかった。それは、君たちだって見ていて分かることだろう?」

矢継ぎ早な問いに応じるメイヤーは、どこか諦め気味な表情で、こうも口にしました。

「彼は、僕とは異なる次元のテニスをしていた」

その「異なる次元のテニス」を披露した勝者の方は、穏やかな満足感を、表情と口調に浮かべます。

「サービスに少し苦しんだけれど、とても良い感じできています。試合勘も、ほぼ不安はないですね。ポイント中もよく動けているし、日に日に、試合をやるたびに自信を得てきているので、かなり良い方向に進んでいます」。

この言葉は、今日の試合内容を見れば、誰もが納得するものでしょう。メイヤーが嘆いたように、錦織は重いスピンのかかった相手のボールを速いタイミングで叩き、メイヤーの時間を奪っていきます。確かに、本人が認めたようにファーストサービスの入りは低めですが、セカンドサービスでもウイナーを取るなど、ゲームには安定感がありました。

第1セットは3-3から抜けだしセットを奪取。第2セットは、最初のゲームでブレークを奪い主導権を握りました。第3セットは、後のなくなったメイヤーの捨て身とも言える反撃に遭遇し、この試合初のブレークを許します。しかしここから錦織は、ベースライン後方からも攻める意識を、より強く持ち反撃に出ました。自らを奮い立たせるようにネットに詰めるメイヤーですが、錦織はその度に会心のパッシングショットを叩きこみ、思惑通りにはさせません。相手に傾いた流れを堰き止め、そのまま押し返し、最後には鮮やかに奪い取る第10シード。第3セットは0-3から6ゲーム連取して、1時間52分の快勝です。

錦織の全米での4回戦進出は、同大会に初出場した6年前以来のこと。その当時は「4回戦進出で満足していた」と言いますが、「今はこれが当たり前になっている」と、自らの立ち位置の変位を自認します。

その錦織が次のステージで相対するのは、錦織より1歳年少の世界6位、ミロシュ・ラオニッチ。対戦成績は2勝1敗で錦織リードですが、直近のウインブルドンではラオニッチが勝っています。自身初の全米ベスト8を懸けた戦いは、相克を避けられぬライバルとの“主導権争い”にもなりそうです。

※テニス専門誌『スマッシュ』facebookより転載。

大会期間中は、毎日レポートを掲載しています

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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