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マイアミ現地リポ2:第4シードにも自然体 錦織圭が歴代女子ナンバー1とチャリティイベント出演

内田暁フリーランスライター
右からVウィリアムズ、Sウィリアムズ、イバノビッチ、そして錦織

2週間前のインディアンウェルズでは、第5シードとして大会のプロモーションイベントやメディア対応を精力的にこなした錦織圭。

今週開幕のマイアミオープンでは、フェデラーがいないために第4シードとなり、さらに注目度やプロモーションの役割も増えているのでしょう。今大会でも、イベント出演等に追われる忙しい日々を過ごしております。

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既に一昨日の話になりますが、24日に錦織は大会会場のすぐ近くのホテルで行なわれた“オールスター・テニス・チャリティイベント”に出演しました。このイベントはリッツカールトンホテル等が主催となり、“TECHO”への基金集めを主目的として行なわれています。TECHOは、主にラテンアメリカの貧困救済を目的とするNPO法人で、今回の収益金はここに寄付されることになります。

興味深いのは、このチャリティイベントで販売される“権利”の数々でしょう。例えば「ファン・モナコ(46位)と1時間試合をする権利」は2000ドル、「オールスター達とヒッティングする権利+カクテルレセプション&ギフトバッグ」が1500ドル……といった具合。それ以外にも、ウィリアムズ姉妹のサイン入りTシャツや、ジョコビッチのサイン入り写真などのアイテムも販売されています。

そのチャリティイベントの中で錦織が参加したのは、ウィリアムズ姉妹やイバノビッチ、ヒンギスやクリス・エバートという超豪華メンバーによる“プロアマ交流イベント”。なぜか男子は錦織一人で、巨大なお姉さまたちがキャッキャしている横で少々所在なさげにしている姿に、まだ多少の初々しさと、日本人らしい奥ゆかしさが浮かびあがります。

さて、そんな煌びやかなチャリティイベントで販売された“権利”の中でも、ファンにとって最もうれしいのが、このスター達に交じってダブルスマッチができるものではないでしょうか。そして今回、その購入者の中にユキさんというマイアミ在住の日本人の方がいました。自らもUSTA会員としてプレーに打ち込むユキさんは、マイアミオープンも毎年のように観戦に来るテニス愛好家。2008年に錦織がデルレイビーチで初優勝した時も、現地を訪れ熱い声援を送っていました。それだけに、今年のイベントに錦織が出ると知った時には「これは、一生に一度のチャンスかも!」と一念発起して権利を購入。念願叶って錦織とペアを組みウィリアムズ姉妹たちと打ち合うなど、まさに至福のひと時を過ごした様子でした。

錦織も、ファンや女子選手たちとの交流を「楽しかったです」と笑顔で振り返ります。「セリーナ(ウィリアムズ)には、うっかりしているとパワーで決められてしまうかもという、怖さも感じました」とリップサービス(?)するあたり、受け答えも正にスターの仲間入りという感じでした。

かくして、テニス界の“顔”として様々なイベントをこなす錦織は、会場近くのレストラン等に行けば地元のファンからも写真やサインをせがまれるなど、今やどこに行っても文字通り顔が知られた存在になりました。

そのことにより、不便に感じたり我慢していることも増えたのでは――?

インディアンウェルズではそんな質問も受けましたが、う~んと唸って「ちょっと思いつかないです。考えておきます」と解答を保留。

そこで今回、果たして何か思いついたかと思い改めてたずねてみると……「意外と、そんなにないです。スケジュールは自然と厳しくなっていますが、特にそんなに我慢していることはないです。この間も普通にプレステ4でゲームしていましたし」と照れ笑いを浮かべました。

髪をバッサリ短くしたのも、これから長く続く欧州遠征に備えてのこと。ゲンも担がず、自然体に。今の地位にも「慣れてきたし意識しなくなった」錦織が、シーズン前半戦を締めくくるマスターズ1000大会に向かいます。

※テニス専門誌『スマッシュ』facebookより転載。連日レポートを掲載しています。

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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