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ツアーファイナルズ現地リポ1「錦織は、見るのが最も楽しい選手の一人」とフェデラー

内田暁フリーランスライター
ドローミーティングで、新調したスーツに身を包む8人の参戦選手たち

11月15日に開幕するATPワールドツアーファイナルズに先駆け、13日に参戦選手たちの会見が行なわれました。

月曜日から現地入りしている錦織圭は、この日の午前中はセンターコートでフェレールと練習。昨日行なわれたドローミーティングで、文字通りビッグな面々に囲まれた錦織は「みんなデカイ」と感じ、それだけに175センチのフェレールに「すごく親近感を覚え」ていたそう。そんなフェレールが相手だったから……というわけではないでしょうが、練習では「今日の感覚は良かったですね」と言います。

昨年は、練習の時からセンターコートの大きさとそびえるような客席に圧倒され、満席になった時の緊張感を想像して「(客席の)上の方を見たら終るな……」と感じていたそうです。しかしそれも、過去の話。今年は2年目なので「やっぱり去年の経験があるので、ビックリは減ってきている」と力強く断言!……かと思いきや、「それでもあんまり、観客は見ないようにしてプレーしたいと思います」と苦笑いを浮かべました。

直近のパリ・マスターズの棄権の原因となった脇腹については「80~90くらいは良くなっていると思います。あとは違和感だったり気持ちの問題だったりするので。あと2日あれば大丈夫だと思います」とのこと。「すごく光栄なことですね、目標にしていたこの場に来られるのはうれしいです」と、モチベーションも高まってきている様子です。

2年連続でツアーファイナル出場を果たした錦織ですが、昨年3人いた初出場選手のうち、今年戻ってきたのは彼のみ。そのことに関しては、錦織と同組のフェデラーも「この大会に出ることは、多くの選手にとっての最大の目標。大会の雰囲気も最高だし出ることが栄誉だ。ケイはケガがありながらも、2年連続でこの大会に来たのはすごいこと。ケガがなければ、ランキングももっと上に行けていただろうし」と高く評価。

また「僕の意見としては、彼は見るのが最も楽しい選手の一人。残念ながら同じグループになってしまったが、完全な状態に回復した彼と対戦するのを楽しみにしている」と言います。フェデラーとの対戦は、昨年のこの大会以来。選手当人が楽しみにする試合……見る方も楽しみです。

そのフェデラーと同胞で親友のワウリンカ(ちょっと無理のあるつなげ方でした……)ですが、彼は昨日ツイッターで、ワウリンカが全仏オープン優勝時に履いていたショーツデザインのキーチェーンを、手にするジョコビッチの写真をアップしていました。「ついにノバクも、これがラッキーアイテムだと認めたよ」とのコメント付きでしたが、これをジョコビッチにプレゼントしたのは、やはりワウリンカ。

「全仏の時から、彼は僕のショーツについてよくジョークを言ってたんだ。その後も、キーチェーンを見て笑い合ったりしていたから、あげたんだよ。もちろん、あれは彼にとってつらい思い出でもあるはずなのに、それを笑えるすごくいいヤツなんだ。ツアーでも、最も仲の良い友人の一人だよ」

ワウリンカは照れた笑いを浮かべつつ、明してくれました。

ライバルの強さを素直に称え、対戦を心待ちにし、オフコートではつらい過去すらジョークにして笑い合う――あらゆる意味でテニス界を代表する8選手が集うからこそ、このツアーファイナルは誰もが「出られるのは名誉」だと声を揃える、栄光の舞台なのでしょう。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookから転載。連日、最新のテニスニュースを掲載しています

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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