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覚悟を決め挑んだマスターズで初勝利。プロ10年目の伊藤竜馬、“勝負の時”で躍進なるか?:マイアミOP

内田暁フリーランスライター

伊藤竜馬 36 26 G・モンフィス(16)

米国フロリダ州で開催中のマイアミ・オープン2回戦で、日本人4番手の伊藤竜馬(120位)は第16シードのガエル・モンフィスに敗退。しかしプロ10年目にして初めてつかんだマスターズ大会初勝利は、“勝負の年”の覚悟の成果だった。

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試合を通じて、モンフィスのファーストサービスでのポイント獲得率は92%。セカンドでも60%の高い確率。これらの数字が、この日の試合内容を象徴していました。

「相手のファーストでは、なかなかポイントは取れないと思っていたので、セカンドをもっと叩いていきたかった。返すだけでも、相手にはプレッシャーになったはずなんですが……」

相手の跳ねるセカンドサービスに対応しきれなかったことを、伊藤も真っ先に悔いました。緩急をまぜ、打ち合いになれば互角以上に渡り合える局面もあっただけに、なおのことリターンの不調が心に引っかかったのでしょう。

それでも今大会は予選から挑戦し、本戦でマスターズ初勝利を手にしたことは大きなステップアップ。昨年中盤あたりから「チャンレンジャーよりも、ATPツアー予選を重視」して挑み続けてきた姿勢が、ひとつの成果として現れた大会でした。

今年5月には28歳となるプロ10年目。しかしテニスを始めたのは9歳と遅く、さらに添田豪や台湾の盧彦勳ら「20代後半にピークが来る」アジア人の先達たちの姿を間近に見てきた伊藤には、この1~2年が自分にとってもピークの年だという、確信に似た思いがあります。だからこそ今を「勝負の時」と定め、上へのチャレンジを増やしていきたいのだと言いました。

同時に、キャリアの中盤から終盤に差し掛かっていることも自覚しつつ、長い現役生活を送るためにも「トレーニングに取りこむことが楽しくなってきた」と言います。昨年末は盧彦勳のキャンプに参加し、今までにないほど走り込みなどのトレーニングに取り組んできました。その甲斐あり、今は「体力に自信が出てきたから、メンタルにも余裕が出てくる」。その余裕を生かし、緩急混ぜたプレーで勝ち上がったのが、まさに今大会だったでしょう。

「まずは100位に定着し、トップ50を狙いたい」

ここから目指す、キャリアハイへの旅路。

もちろん、リオ五輪出場も諦めていません。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookより転載。雑誌は毎月21日発売。テニスの最新情報を掲載しています

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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