Yahoo!ニュース

5度のマッチポイントを脱したその鍵は「備えのメンタリティ」にあり。錦織圭がベスト4へ!:マイアミOP

内田暁フリーランスライター
勝利を喜ぶ錦織(試合に入れ込みすぎたため、写真を撮り忘れ長遠景)

錦織圭 46 63 76(3) G・モンフィス(16シード)

米国フロリダ州で開催中のマイアミ・オープン準々決勝で、錦織圭はガエル・モンフィスを破り2年ぶりのベスト4進出。30度の炎天下の中、5度のマッチポイントを凌ぎ文字通りの熱闘を制した鍵は、苦境の中でも試合の流れを冷静に読み、最悪の事態にも備える驚異のメンタリティにあった。

◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆

試合開始直後にモンフィスが放ったフルスイングの高速リターンが、ウイナーにならずとも客席をどよめかせ、早々にファンの心をとらえます。この時、モンフィスが味方につけたセンターコートの観客は、その約2時間後の土壇場で、彼に大きな力を与えました。

錦織がブレークアップし4-2で迎えた第3セットの第7ゲーム。モンフィスは気合いの声を上げながら、フォアの強打をダウンザラインに叩き込みました。このとき沸き起こった大喝采は、スタンドをモンフィスのサポート一色に染め上げます。果たして続くゲームをモンフィスがブレークバックし、5-4からの第10ゲームでは、錦織のサービスゲームながら0-40で3つのマッチポイントがモンフィスの手に。流石にこの時ばかりは、錦織も「気持ち的には、終わったと思った」のだと告白しました。

しかし半ば諦めながらも、状況と試合の流れを冷静に読みながら、錦織は「最悪の事態にも、気持ち的に備えていた」のだと言います。だからこそ、この第10ゲームでの4本のマッチポイントを、さらには2ゲーム後に再び面したマッチポイントをも凌ぐことができたのでしょう。それもフォアやサーブ&ボレーで果敢に攻め、そのほとんどがウイナーで得たポイント。この頃になると、危機を脱した錦織のプレーが観客の心をつかみ、やがて両者に送られる声援も、ほぼ五分になっていました。

2時間29分の死闘を制し達したマイアミ・オープン準決勝の舞台は、2年前に股関節の痛みで棄権せざるをえなかった、悔いの残る場所でもあります。しかし錦織は、「今の僕はあの頃よりフィジカルが強いので、明日は大丈夫だと思う。良いプレーができているし体力的にも問題ないので、次の試合を楽しみにしている」と、来たる戦いに目を向けました。

準決勝は現地時間19時開始のナイトセッション。もちろん場所は、センターコート。

相手はラオニッチ相手に8本のエースを決め、一度もサービスゲームを落とすことなく勝利を手にした、20歳のニック・キリオスです。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookより転載。毎日テニスの最新情報を掲載しています。雑誌は毎月21日発売

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

内田暁の最近の記事