Yahoo!ニュース

世界1位の壁に阻まれた錦織圭。笑顔で「次は、やっつけてやる」とジョコビッチに打倒宣言:マイアミOP

内田暁フリーランスライター

米国フロリダ州で行われたマイアミ・オープンで、決勝まで勝ち上がった錦織圭は、世界1位のノバク・ジョコビッチと対戦。3-6,3-6で敗れ、今季の一つの目標に掲げたマスターズ優勝には手が届かなかった。

◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆

攻め急がず、長い打ち合いの中で時に深く時に鋭角に、高質のショットを打ち込みながらジョコビッチを左右に走らせ、最後は狙い澄ましたフォアのウイナーを叩き込む――。第1ゲームで決めた一撃を機に、錦織は4ポイント連取でいきなりのブレーク。これ以上望めぬ立ち上がりに、会場の期待感も高まりました。

しかし王者は、この直後に集中力を高めます。

「圭は素晴らしい立ち上がりだった。だからメンタル面のことも考慮し、すぐに追いつくことがとても重要だと思った」

迎えた第2ゲームで風上に回ったジョコビッチは、その優位性を生かして錦織のミスを誘っていきました。錦織はこのゲームを、さらには再び風下で迎えた第6ゲームを落としてしまいます。ファーストサービスの入りが悪かったこともありキープに苦しんだ錦織は、2度ブレークするも3度のブレークを許し、第1セットを3-6で落としました。

第1セット先取時の勝率95.8%を誇るジョコビッチは、これで精神的にも大きく優位に立ったでしょう。最初のゲームをブレークすると、あとは自分のサービスキープに専念する王者。試合終盤に向かうにつれ疲れとヒザの痛みも覚えた錦織は、3本のマッチポイントを凌ぐのが最後の抵抗でした。

「用意していた戦術をやりきれなかった。次はもう少し違う戦術を用意するべきかも」

試合後の錦織は、悄然として敗戦を受け止め、必死に次に目を向けようとしているようでした。

「次こそは、ノバクをやっつけてやりたい」

表彰式の準優勝者スピーチで錦織は言いました。

次いで壇上に上がった優勝者は、「次もやられるわけにはいかないな」と笑顔で応じます。

「次」を口にできるのは、既にその場に到った者の特権。2人の戦いには、きっとまたすぐに「次」があるはずです。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookより転載。今回の決勝を含め、インディアンウェルズ、マイアミでの錦織の戦いぶりは、たくさんのエピソードと合わせてスマッシュ本誌に掲載します! 4月21日(木)発売のスマッシュ6月号をご期待ください。

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

内田暁の最近の記事