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ウィンブルドン予選レポート:それぞれのテーマを胸に西岡良仁と守屋宏紀が2回戦突破。本選出場に王手

内田暁フリーランスライター

○西岡良仁 7-5 6-4 F・シルバ

まださほど荒れていない瑞々しい芝の青に映える、明るさを増した頭髪。

「全仏の後に染めました。色々と変えたくて……」

西岡良仁は、“茶髪”の理由をそう説明しました。

先の全仏では本選ダイレクトインに一つ届かず、予選では決勝で実力者のステパネクと当たる不運なドロー。さらには、ラッキールーザーの繰り上がりにも一枠届かず、深い失意の中で帰国した西岡は、「6日間は、全くラケットを握らない」日々を過ごしたそうです。

何かを変えたいと願い、髪の色を少し明るくし迎えた芝のシーズン。ハーレ予選では左股関節を痛めるも、ドクターからのゴーサインを出され、気持ちも新たに今回のウインブルドン予選に挑んでいました。

その予選2回戦では、左利きのF・シルバと対戦。序盤から西岡が常にブレークで先行するも、その度に相手に追いつかれ、なかなか流れに乗り切れません。一発の強打で流れを持っていかれる芝の特性が、本来はストローク戦でリズムを作りたい西岡のテニスを困難にさせます。

それでも「自分の武器であるフットワークを生かして、相手を左右に動かす」ことを意識し、両セット共に勝負どころでは抜けだし勝利。最終ゲームでは、何度もデュースを繰り返す中、最後に試合を決めたのはこの日ほぼ唯一の“サーブ&ボレー”でした。

本戦をかけて戦う予選決勝の相手は、ジュニア時代から知る、一歳年少のQ・アリ。ビッグサーバーではありますが、「動いて、ラリーを長くして。5セットマッチだし、1回の流れでは終わらないと思います」と、自分のテニスを貫く構えです。

○守屋宏紀 6-1 3-6 6-4 T・スミチェク●

実力者のスミチェック相手に、第2セットは逆転で奪われたものの、基本的には終始主導権を手にして勝利。

「やはり芝では、生き生きしていますね」

そう声をかけると、守屋は「そうだと良いんですけれどね」と控え目に笑いました。

今季の彼が芝のシーズンを待ち焦がれていたのは、4月からスペインのバルセロナに拠点を移したことも大きいかもしれません。自分に足りないものを補うために、あえて身を置いたクレーの環境。

「直ぐに結果は出ませんでしたが、ゲームの組み立てや、ショットの種類などをクレーで学んできた」と守屋は言いました。

だからこそ得意の芝のコートに来たとき、彼はクレーで新たに得たものを、芝でも上手く発揮できたようです。自身の最大の武器であるライジングと早い展開に、ショットのバリエーションと柔軟性をブレンドし試合を支配。第2セットでは、相手がスライスを多用しリズムを変えてきましたが、第3セットでは対応し勝ち切りました。

「自分の殻をどれだけ破れるか考え、バルセロナに来ました。それが近道か、遠回りかは分かりませんが…」

その問いに一つの答えを得るべく、予選決勝に挑みます。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookより転載。

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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