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全米オープン:Jr.ダブルスでベスト4進出。一般本戦にも出場した「Shibahara」とは?

内田暁フリーランスライター

今大会のジュニアダブルスベスト4の面々に、Shibahara/Hart組というアメリカのペアが居ます。「Shibahara」なる選手のフルネームは、柴原瑛菜(しばはら・えな)。両親は日本人、本人はアメリカ生まれの、南カリフォルニアに住む18歳です。

地元の普通高校に通っていた柴原にITF大会参戦経験は少なく、そのため現在のジュニアランキングは400位台。その彼女が今大会に出られたのは、優勝者にワイルドカードが与えられるUSTAナショナル選手権18歳以下を制し、自ら権利を勝ち取ったためでした。しかもジュニアのみならず、一般の本戦にもワイルドカードを得ての出場。初戦では第7シードのミルザ/ストリコワ組に3-6、2-6で敗れるも、「ちゃんと戦えていると感じた。自分たちのミスが多かったので、もっと練習すればもっとチャンスはあった」と大きな自信を得た様子です。その自信をジュニアの戦いにも持ち込んで、初戦ではナンバー1シードペアを圧倒。ここまでセットを落とすことなく、力強く勝ち進んできています。

既にITF一般大会で戦った経験もある柴原ですが、プロ転向はひとまず先延ばしにし、この9月から名門UCLA(カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校)に通います。

「一度大学に籍をおけば、プロに転向してからも、また戻ってきて卒業できる」がゆえの選択であり、「大学でフィジカルを鍛えることもできるし、レベルの高い試合をたくさんできる」との青写真も描いています。場合によっては、大学を休学してのプロ転向も視野に入れているという彼女。

そうなるとどうしても本人も周囲も気になるのが、「どちらの国籍を選ぶの?」という問い。その件に水を向けてみると「物凄くいろいろと考えています」と、少し困ったような可愛い笑みをこぼしました。大坂なおみや日比万葉など、自分と似た境遇の選手たちの動向や助言も参考にしながら、これから熟考を重ね決めていく予定です。

7歳からテニスを始め、幼少期から南カリフォルニアのジュニア大会を主戦場としていた柴原は、今大会のジュニア男子シングルスに出場していたブランドン・ホルトと、3年間ほどミックスダブルスを組んでいたそうです。このホルト、実は2度の全米オープン優勝を誇る、元世界1位トレーシー・オースティンの息子。その縁で柴原は、子供の頃はオースティンから、色々とアドバイスをもらったこともあるとのこと。中でも特に印象に残っているのが「もっとアグレッシブに!」の言葉。ネットプレーを得意とする柴原には、往年の名選手の言葉が深く響いたようです。

ちなみに9月から進学するUCLAのテニス部監督は、ピート・サンプラスの姉のステラ・サンプラス。恵まれた環境でじっくりと身心を鍛え、近い未来、ここ全米オープンの常連になるになる日を目指します。

※テニス専門誌『Smash』のfacebookから転載。連日大会レポートやテニスの最新情報を発信中

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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