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NPO法人「ストップいじめ!ナビ(代表理事:荻上チキ)」が設立<いじめをなくしていくのが大人の役割>

明智カイト『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事
NPO法人「ストップいじめ!ナビ」の荻上チキ代表理事へのインタビュー付き

2014年5月16日に「ストップいじめ!ナビ」総会へ、メンバーの一人として出席してきました。「ストップいじめ!ナビ」は、一向におさまることのない「いじめ問題」に一石を投じようと、2012年秋に活動を開始したNPO法人です。メンバーを構成するのは弁護士、ジャーナリスト、自殺対策専門家、性的マイノリティ当事者、子どもの専門電話活動、不登校やフリースクール活動に携わる人など、様々な分野の専門家です。それぞれが持つノウハウや社会資源を結集させて「いじめ問題」への具体策を提示・実現させていこうとしています。

2013年に「いじめ防止対策推進法」が成立

いじめから一人でも多くの子どもを救うためには、子どもを取り囲む大人の一人ひとりが、「いじめは絶対に許されない」「いじめは卑怯な行為である」「いじめはどの子どもにも、どの学校でも起こりうる」との意識を持ち、それぞれの役割と責任を自覚しなければなりません。いじめの問題は、心豊かで安全・安心な社会をいかにしてつくるかという、学校を含めた社会全体に関する国民的な課題です。

いじめの問題を学校だけが抱え込むことなく、関係機関や地域の力を積極的に取り込みながら、社会総がかりで対処していくことが求められています。このように、社会総がかりでいじめの問題に対峙するため、基本的な理念や体制を整備する必要が高まり、その流れから2013年6月、国会で「いじめ防止対策推進法」が可決・成立しました。

学校をはじめとする現場では、具体的ないじめ防止条例や対策がすすめられています。学校や教師、いじめ防止に関わるチームが一つひとつ事例を積み重ね、いじめリスクによる様々な弊害や損失を少なくしていく作業が必要です。「ストップいじめ!ナビ」の活動が、その課題に向き合っていく上での一助になればと願っています。

「ストップいじめ!ナビ」の活動紹介

2014年1月28日には東京都の認証を受け、「特定非営利活動法人ストップいじめ!ナビ」(代表理事 荻上チキ)として正式にNPO法人としての活動を開始しました。2014年は調査研究や発表、講演活動、映画「Bully」プロジェクト、学校との連携、いじめ防止対策推進法の関連、行政との連携などなど、さまざまな活動を予定しています。

(1)WEBにおけるいじめ対策の発信

「ストップいじめ!ナビ」

サイトには大きく分けて、2つのカテゴリがあります。

――子ども向け【今すぐ役立つ脱出策】

いじめや嫌がらせが起こった時に子どもたちが学校以外で、すぐに相談できる相談窓口情報や、メールや他の相談先検索サイトを紹介しているほか、いじめから抜け出すための「アイテム」として、いつ、どこで、だれから、どんなことをされたのかを記録しやすいように「あしたニコニコメモ」というフォーマットなどを載せたり、「いじめ攻略アイテム集」があります。また、具体的な方法とLGBTと法律関連の情報を加えた「いじめQ&A集」などを掲載しています。

――大人・学校関係者向け【いじめをとめたい大人たちへ】

子どもたちを取り巻く、学校関係者や大人に向けての情報も充実しています。大人が相談できる「相談窓口情報」のほかにも、「いじめデータ集」として、これまでに発表されてきた統計データや、いじめ研究で使われてきた用語集、いじめの裁判例の紹介などを掲載しています。また、子どもたちに相談先を知ってもらうための今すぐできる「いのちの生徒手帳」のプロジェクトなども紹介して、学校などに呼びかけています。

その他にも、【ブロマガ】での情報発信や、いじめがテーマのネット放送での過去の番組配信なども行っています。

(2)国会や行政への提言

横浜市教育委員会の方たちと意見交換をしている様子です。
横浜市教育委員会の方たちと意見交換をしている様子です。

大津市のいじめ自殺事件をきっかけに2013年に成立・施行された「いじめ防止対策推進法」の検討時から、国会議員へのロビー活動や、文部科学省への面会・提案などを行ってきました。法律成立後はどのように実効性あるものにしていくのか、学校現場への連携や働きかけを行っています。

(3)マスコミとの連携と提言

いじめの事件がひとたび話題になると、報道が過度に進行するきらいがあります。たとえば、自殺についての報道があった時には、事件の様子を報道するだけでなく、相談先情報を掲載することができれば、子どもたちの命を守るためだけでなく、いじめを未然に防いでいくための報道を実現する第一歩となってきます。これらの提案を進めるために、報道関係者との「懇談会」を開催しました。また各社で「いじめ報道ガイドライン」の策定のための提案をしています。関連したテレビやラジオへの番組出演も行っています。

(4)海外のいじめ研究や情報紹介

映画「Bully(いじめ)」の監督を招き上映会を開催しました。
映画「Bully(いじめ)」の監督を招き上映会を開催しました。

2013年10月にはアメリカで話題になった映画「Bully(いじめ)」の監督を招き上映会を開催しました。監督自身がいじめ防止キャンペーンを立ち上げ「Bullyプロジェクト」(各地の学校への上映会とワークショップなどの活動)として、活動の幅を広げています。それらの情報などを私たちも紹介し、広げていく予定です。

(5)学校現場と連携しての予防策の提案

定期的に勉強会を開催しています。
定期的に勉強会を開催しています。

どうしたらいじめを止めたり防止できるのか。学校現場にうかがい、学校の教師などと連携する作業も大事な部分です。2013年度からは、各学校での「いじめ授業」の開催や、学校や保護者、子ども、地域住民をまじえた「いじめ協議会」などへの参加、情報提供などを行っています。今後、各学校への協力や支援の幅を広げていく予定です。

LGBTの子どもに対するいじめ対策についても取り組んでいます

「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」が中心となって、「ストップいじめ!ナビ」に、「性的マイノリティといじめ」のページを作成しました。

性的マイノリティ(少数派)であるレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー(LGBT)の子どもたちや、周りからLGBTのようだとみられる子どもたちたちは、いじめの対象により選ばれやすいと言われています。「性的マイノリティといじめ」のページでは、子どもにも理解でるようになるべくわかりやすい言葉で大切なポイントを説明しています。

また、「女らしさ」「男らしさ」の物差しから外れた行動や態度に対して非難する「ジェンダー・ハラスメント」についても解説するページを設けました。

「ジェンダー・ハラスメント」は、女のくせに大食いだな、女のくせに男言葉を使うな、男ならもっと堂々としろ、男のくせにそんな女っぽいものが好きだなんておかしいんじゃないの…などなど、人を「女らしい女」や「男らしい男」でなければ認めないという認識に基づくもので、多様な生や性の在り方を認めようとする考え方と真逆のものです。多様な性や生を認めることが人権尊重のひとつとして理解されるようになっている今日、「ジェンダー・ハラスメント」は許されるものではありません。

荻上チキ代表理事インタビュー

明智カイト×荻上チキ代表理事
明智カイト×荻上チキ代表理事

明智 では、まず自己紹介をお願いします。

荻上 評論家の荻上チキです。NPO法人「ストップいじめ!ナビ」の代表を務めています。元々いじめ問題の取材はしていましたが、実際に様々な現場への情報提供がさらに進む必要があると感じ、NPO化しました。

明智 なぜ「いじめ対策」に関わるようになりましたか?

荻上 自分自身がいじめにあっていたこともありますし、ネットいじめ等に関する著作を執筆したこともあります。実際に「いじめ防止対策推進法」ができそうだという流れになった時、これはただ国に任せておくだけでなく、ロビイングを通じて法に関するコメントを届けることが大事だろうと思い、また学校や行政での取り組みに対して情報提供する必要があると感じました。

明智 これから「ストップいじめ!ナビ」で取り組みたいことは何ですか?

荻上 独自調査と具体案のリリース、および各種研修のコーディネートですね。関連機関をバックアップするため、情報面でサポートするのが当NPOの役割です。いじめが社会問題化してから30年近くたちます。その間、研究面でも進んだ点は多くありますが、情報共有が上手くいっていないところもある。関係者と情報をつなげ、今より有効な対処例を少しでも増やしていければと思っております。

須永祐慈事務局長インタビュー

明智カイト×須永祐慈事務局長
明智カイト×須永祐慈事務局長

明智 では、まず自己紹介をお願いします。

須永 NPO法人「ストップいじめ!ナビ」の事務局長を昨年6月から努めています須永と申します。私は、2012年のいじめの問題がクローズアップされた時から、どのようにいじめやいじめ対策と向き合い、活動していったらいいかを模索していました。このプロジェクトに縁あって加わらせていただきました。

明智 なぜ「いじめ対策」に関わるようになりましたか?

須永 もともと、私自身は小学校4年生にいじめやひきこもりからフリースクールに通い育ってきた、人とは少し違った経歴を持っています。1990年代のいじめが社会問題化した頃から、子どもの視点に立ったいじめや不登校などの問題に取り組み続けてきました。今回、事務局長を引き受けたことにともなって、そもそもいじめとは何だろう、総合的かつ具体的ないじめ対策とは何だろう、というテーマに改めて向き合いながら活動を行っています。

明智 これから「ストップいじめ!ナビ」で取り組みたいことは何ですか?

須永 みなさんがご存知のように、いじめをはじめとして、子どもたちがいる学校はさまざまな困難を抱えています。もっと具体的な議論や対策の共有が本格的に必要になっている今、それぞれの立場にある人たちが、具体的かつ前向きに変わっていけるためのヒントや方法、情報を集め、発信できればと思っています。やることはいっぱいありますが、その分、様々な課題を一つずつ積み上げていきながら、私自身が、成長できればと思っているところです。

これからの目標

この「ストップいじめ!ナビ」メンバーは、各分野の専門家ばかりです。さまざまな「知恵」を持っている人たちが集まっていますので、その「知恵」を“いじめ”というテーマを掛け合わせて、みなさんと広く共有していければと考えています。今後の目標は、独自のいじめ調査研究を行い、発表していくこと。また、メンバーと一緒にさまざまな“しかけ”をしつつ、いじめ問題に対して、さまざまなアプローチで取り組んでいきたいと考えています。

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NPO法人「ストップいじめ!ナビ」

「ストップいじめ!ナビ」は、一向におさまることのない「いじめ問題」に一石を投じようと、2012年秋に活動を開始したNPO法人です。様々な分野の専門家が集まり、それぞれが持つノウハウや社会資源を結集させて「いじめ問題」への具体策を提示・実現させていこうとしています。

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『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、などを務めている。

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