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レズビアンのタレント、牧村朝子さんと対談「キャラ化されるLGBT~いじめ実態調査から考える」

明智カイト『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事
シンポジウム「いじめ問題とLGBT~男らしさ・女らしさの圧力を考える~」の様子

レズビアンのタレントで同性パートナーと一緒にフランスで暮らしている牧村朝子と、ゲイの活動家でいじめ自殺未遂経験者の明智カイト。全く異なる人生を歩む二人が日本とフランスのLGBT事情について語り合います。

●過去の記事はこちらをご覧ください。

レズビアンのタレント、牧村朝子さんと対談「日本とフランスのLGBT事情について」

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レズビアンのタレント、牧村朝子さんと対談「同性愛者が考える日本の家族政策の今後」

小さかった弟に「このレズ!」と言われた

明智 まずは「LGBTといじめ」について取り上げたいと思います。先日、「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」が行った調査(*1)によると、LGBT当事者の実に7割がいじめの被害を経験していました。そこでお聞きしたいのですが、牧村さんはいじめられた経験ってありますか?

牧村 いえ、私自身はないです。ただ、私のことで弟が何か言われたんだろうな、ということはありました。

私は10歳のとき女の子に初恋をしたんですけれど、そんなある時、弟とけんかになって「このレズ!」と言われてしまって。

弟はその時9歳だったので、そんな言葉は知っているはずがなかったと思います。だから、私のことが伝わって周囲に何か言われてたんだろうなー、と思いました。

明智 そうなんですね。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」の調査では、LGBTのなかでもいじめの傾向には差があることが明らかになっています。特に、性別違和のある男子が「なよなよするな」「男らしくしろという感じでいじめられるケースが多いようです(*2)。

出典:「LGBT学校生活実態調査2013」
出典:「LGBT学校生活実態調査2013」

*2:性別違和を持つ生物学的男子(MTF,MTX)では、身体的暴力(48%)や、服を脱がされる・恥ずかしいことを強制されるといった性的暴力(23%)などの深刻ないじめを長期にわたって経験している割合が高率である。

牧村 あと、LGBT当事者がいじめの加害者になるパターンもありますよね。たとえば「同性愛者なんて気持ち悪い。自分は違うんだ」って、自身の性的指向を否定したいがために、他の同性愛者をいじめてしまうケースのような。

私自身も10歳で初めて女の子を好きになって、それから12年間は「自分はレズビアンなんかじゃない」って、ずっと自分に言い聞かせていました。だから本当は大好きなはずの女性アイドルを必死で罵ったりしてきたし、もし周囲にレズビアンの人がいたら加害者になっていたかもしれません。

社会の「空気」が辛かった

明智 自分自身を肯定できたのはいつ頃ですか?

牧村 はじめてレズビアンのイベントに参加したのが22歳のときでした。そのときやっと、「自分は気持ち悪い同性愛者なんかじゃないんだ、普通の女性にならなくちゃ」っていうそれまでの姿勢が、努力ではなく単なる自己否定だったんだなと気づくことができました。

明智 私自身も最初は自分の気持ちを抑圧しようとしていました。男性が好きだったのに、それを周りに相談することができなかった。相談すること自体がタブーのように感じられてしまって。周囲からも「女っぽい」「ホモ」といじめられて、自分で自分を肯定することができませんでした。(*3)

*3:『LGBT学校生活実態調査2013』によると、学校の友人や同級生がLGBTについての不快な冗談を言ったり、からかったりしたことがあったかどうか尋ねたところ、回答者全体の84%は何らかの形でこれらを見聞きした経験がありました。また、このような場面でどのように対応したかを尋ねたところ、「やめてほしい」と言えたのはごく一部にすぎず、「何もしなかった」が7割強。「自分がいじめられないように一緒になって笑った」も、非異性愛男子では約4割にのぼりました。これは、自分がLGBTでないことを証明するための「踏み絵」のようなつらい体験だと推測されます。

牧村 根底にあるのはきっと、「ふつう女は男が好きで、男は女が好きなんだ」っていう思い込みですよね。だから、「同性を好きになるには異性にならなくてはいけない」という誤解が生じてしまうのだと思います。

でも本人としては別に異性になりたいわけでもない。そうやっていくうちに自分が何者なのかがよく分からなくなってしまって苦しくなるんだと思います。

私も一時期ですが男装をした時期もありましたし、明智さんもニューハーフパブで働いた経験がおありですよね。

明智 はい。でも実際に女装してみたら「自分は女性になりたいわけじゃない」ということがはっきりと自覚できました。「男が好きな男はオカマ」みたいな刷り込みがどっかであったのでしょう。周囲にも「男が好き」というと「女になりたいの?」と聞かれましたし。

自分としては「男が好きな男」であるのに、当事者としては本当に窮屈さを感じていました。いじめももちろん苦しかったですが、家庭・学校・社会にそういった空気感があることのほうがもっと辛かったです。

「キャラ化」がいじめを増長し、当事者の自己否定の感情も増幅させる

牧村朝子さん
牧村朝子さん

牧村 「男が好きな男=女っぽい」というような思い込みが蔓延してしまっている理由の一つは、セクシュアリティの「キャラ化」ではないかしら。「オネエ系キャラ」なんかが代表例ですけれど、性のあり方が一種の「キャラ」のように扱われてしまっているんですよね。

明智 それは私も強く感じます。

牧村 性同一性障害だって、特にメディアを通して「障害があっても頑張って生きている人」みたいなイメージで描かれ続けていますよね。それからゲイはファッションセンスがよくて、男の気持ちも女の気持ちも分かるから恋バナができて、毒舌で、とか……おかしな話ですけどね。本当はいろんな人がいるのに。

明智 子ども同士でもメディアの影響って大きいんですよね。学校で「オネエタレントみたいに面白いこと言えよ」みたいな風に、自分の意識とはかけ離れた役割を期待されるんですよ。でも自分の中では「自分はあんなに気持ち悪くない」と否定的な感情が生まれてしまう。

テレビという存在は、ある側面ではいじめを増長するし、当事者の心の中の自己否定という感情を増幅させてしまうのだと思います。視聴率稼ぎという視点だけでLGBT当事者を利用していて、利用されているLGBT当事者への悪影響を全く考えていない。大人の偏見にも繋がっていくし、本当に悲しいことだな、と思います。

牧村 まぁ、残念ながら一部はそういう番組よね。それにテレビって、基本的にダラダラ見るメディアですからね。視聴者がコタツでみかん食べてようがソファでポテチ食べてようが伝わるように、情報量を減らして一部を誇張して、インパクト重視にしちゃうのよ。本人の性自認をまるで無視して「この美女、実は男性なんです!!」みたいな。

明智 牧村さんもたびたびテレビに出てますがどんなかんじでしたか?

牧村 そりゃあもう(笑)同性婚カップルとして出ると「どっちが男役? どっちが女役?」なんてことを聞かれますよね。あとはコントなんかで「レズビアン=男嫌い」みたいなキャラ付けをされて、「男の筋肉キモ~イ!」みたいなセリフを言わされそうになったりとかね。

私はその都度「妻も私も女性です」とか「男性が嫌いなわけではないです。恋愛対象じゃないってだけです」とか説明するんだけれど、お偉いさんが「それじゃ視聴者にとってわかりづらいだろう」っておっしゃるのよ。それで現場の方が板挟みになって悩んじゃう(笑)。私も一緒に悩みたいわね、どうすれば伝わるのか。「わかりやすいように嘘をつく」なんてことをさせられるより断然マシです。

「ただのリアルなLGBT当事者」は映したくない!?

明智カイト×牧村朝子
明智カイト×牧村朝子

明智 テレビという文脈で言うと、私はLGBTのいじめ対策・自殺対策の活動をしていますが、テレビとLGBTのいじめ対策・自殺対策との相性って悪いんですよ。

牧村 え、そうなんですか??

明智 オネエタレントに代表されるように、LGBTってテレビの中ではお笑いの対象なんですよね。自殺やいじめの文脈で語られることはない。

「本当は当事者が辛い思いをしている」という負の部分を伝えてしまうと、お笑いの文脈で使いづらいみたいです。オネエタレントは視聴率取れますからテレビ局としては使いたいんですよね。だからメディアとしては「ただのリアルなLGBT当事者」は出したくないんですよ。

キャラや芸風のある人しか出したくない。もちろんLGBT当事者の全てがお笑いなわけではないんですけど。ゲイといっても一般市民であること、普通に働いて普通に仕事して普通にご飯食べて寝ている。テレビのなかの姿は意図的に仕事として、笑わせようとしてやっている職業だということを知って欲しいなと思います。

個人のメディアとして当事者のリアルを伝えていきたい

牧村 一方で「キャラ化」というものは便利なときもありますよね。「キャラ化」すると親しみが生まれるので、ある意味では物事を伝えやすい。「MtF? あぁ、はるな愛か」みたいな。

明智 たしかにそうですね。ただメディアにおける「キャラ化」で怖い部分もやっぱりあります。以前に「LGBTはみんな金持ちだ」みたいなことをテーマにした番組に出たことがあってですね。流れとしては「LGBTはみんな独身だし、子どももいない。だから自分のために自由に使えるお金があって金持ちだ」という意味不明のロジックでした。私は番組中に「差別や偏見のせいでうつ病になったり、仕事にも就けない貧乏なLGBTはたくさんいる」と叫びたかったです。

牧村 私はこのままではLGBTがキャラ化されてしまうと、すごい危機感を持っているんです。LGBTはもともと彼らがそこにいること/つながりあえることに気付くための言葉であるはずなのに、「LGBTはこういう人たちです」とイメージだけが一人歩きしてしまうんじゃないか、と思って。

「君、LGBTなの? それじゃあ○○なんだね!」みたいな固定的イメージが押しつけられては、LGBTという言葉の下で個人がいないことにされてしまっているも同然ですから。それじゃあ逆効果ですよ。LGBTはキャラではない。ひとりで、みんなで、考えるための言葉の道具です。

明智 いじめの問題もそうですし、メディアの影響力は本当に良くも悪くも大きいですね。

とはいえ、いまの時代、個人でも発信できる時代になってきているので、テレビ・新聞・ラジオなどのマスメディアだけでなく、個人のメディアとして本当の当事者のリアルを伝えていければな、と思っています。

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牧村朝子

【ブログ】

牧村朝子オフィシャルサイト

【プロフィール】

1987年生まれ。2010年、ミス日本ファイナリスト選出をきっかけに、杉本彩が代表を務める芸能事務所「オフィス彩」に所属。フランス人女性とパリでの結婚生活を送りながら、人間の性のあり方について各種媒体に執筆・出演を続けている。著書「百合のリアル」(星海社新書)ほか。

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『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、などを務めている。

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