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「ここが変だよ地方議員」著者の小田理恵子川崎市議会議員(維新の党)にインタビュー

明智カイト『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事
(小田理恵子×明智カイト)

今年4月の統一地方選挙で「なにもやらない選挙」を宣言して当選した小田理恵子川崎市議会議員に、現在の選挙制度の不備や使いづらい点などについてお聞きしました。

前回の記事

普通の人たちが政治家を目指すために「なにもやらない選挙」を宣言!:維新の党 小田理恵子川崎市議会議員

今回、後半の記事では選挙に立候補することのリスクや、地方議員という職業について小田理恵子川崎市議会議員にお話を伺いました。

「ここが変だよ地方議員」

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明智 前半の記事では、小田さんは選挙に立候補することはハードルが高いと話されていましたが、その辺りをもう少し詳しく教えていただけますか?選挙制度以前の問題として、選挙に立候補すること自体が難しいということですか?

小田 そうですね、前述したように政治家を目指すことってけっこうリスクが高いことなんです。そこまでのリスクを負って議員になったとしても、議員生活には将来の不安が付きまといます。会社員であれば当たり前にある失業保険などのセーフティネットは議員にはありません。地方議員の場合、年金は数年前に廃止されていますし、退職金も無いです。議員をやっていると、老後のことは考えたくもないですね(笑)

それから、日本では政治家は尊敬されない職種です。みんなから白い目で見られているというか、特に若い世代はその傾向が顕著ですね。例えば子育て世代と話をしたいと思っても「しょせんは票目当てだろ」と拒絶されてしまうこともあります。一度、選挙に立候補してしまうと「もうあの人は別世界の人」というふうに社会の中で見られてしまいますし。だから政治家を目指したくても家族の反対で選挙に立候補することを断念した人もたくさん見てきました。不安定な職種な上に、尊敬されないどころか後ろ指さされることだってあるのが議員という仕事なのです。

詳しいことについては最近「ここが変だよ地方議員」という本を出版しましたので、こちらをぜひご覧ください。普通の会社員だった私が地方議会や政治の世界に飛び込んでみて感じた「ここが変」を漫画とコラムで綴ったものです。 地方議会は皆さんの生活に密接に関わる決め事をするという重要な役割を担っているにも関わらず何をしているのかよくわかりませんよね。こうしたことを少しでも多くの人に伝えるために漫画にしてみました。

明智 帯がホリエモンなんですね(笑)

小田 そうなんです。よく本の中で対談していると勘違いされますが、ホリエモンは帯にしか出てきません(笑)。地方議会の入門書的な位置づけで、気軽に読んでいただければ嬉しいです。

明智 最後に小田さんの政策や、これまでの成果について教えてください。

小田 社会課題である3つの大きなテーマを掲げて市議として活動しています。これらは短期に解決できるテーマではありませんが、20年、30年先の川崎市のため、一歩一歩着実に前に進めております。

ひとつめは、働きながら育てられる環境整備です。人口の増え続けている川崎市は子どもの数も増えています。共働きが当たり前になった一方で、それをサポートする社会基盤の整備はまだまだですから、子供視点・親視点両面での子育て環境の整備を進めています。

それから、総合的な子どもの貧困対策にも力を入れています。家庭の貧困はさまざまな要因によって生じますが、家庭の経済環境によって学業に集中できなかったり機会を与えられなかったりした結果、著しく学力が劣り貧困から抜け出せなくなる子どもたちを1人でも多く救うための総合的な対策を推進しています。

最後は新しいコミュニティ・新しい働き方の構築です。都市部では核家族化が進んだ結果地域のコミュニティが希薄になっております。でも地域には様々な知識や経験を持った人材がたくさんおりますから、彼らが地域で活躍できるための新しい交流の場が必要であると考えています。また市内の事業者との交流などを通じて新しい産業・起業家を育成することを目指しています。

それらの政策に加え、将来の高齢人口の増加・税収の減少を見据え、持続可能な行政基盤を構築するための構造改革を推進しています。といっても、今は行政がそこまでやれる状況には無いため、その前段として「行政の見える化」を進めているところです。活動の中で行政情報の見える化サイト「xime.jp」を構築しましたので興味があればチェックしてみてください。また、同時に議会活動の見える化・透明化を行い、地域住民に広く議員活動を伝えることでクリーンな政治「特定の誰かのためではなく市域や市民全体へ寄与する議会」を実現していきたいと考えています。漫画を描いたり本を出したのも、こうした見える化活動の一環です。

明智 小田さんのお話を伺ってみて選挙制度の在り方だけではなく、政治家も多様な人材を揃えていく必要があること、政治や政治家のイメージを良くしていくことなどいろいろ改善点が見えてきました。また、政策が有権者へ伝わることによって投票率が上がるかもしれないし、市民によるロビイング(政策提言)も活発化するかもしれません。小田さんの取り組みが起点となって日本の政治が変わることを期待したいと思います。ありがとうございました。

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小田理恵子(おだ・りえこ)

1971年生まれ、長野県出身。明治大学法学部卒業。長らく民間企業に勤めていたが自治体の行政改革プロジェクトに従事したことを契機に市議に転身。現在二期目。

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『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、などを務めている。

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