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【介護離職ゼロを目指して】介護「する」側の未来--家族の介護者、そして介護専門職のホンネと必要な事

明智カイト『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

私もパートナーをしているソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(SVP東京)では「介護者」の社会課題をテーマにイベントを開催しました。

SVP東京は、ビジネスや、さまざまな分野での専門性をもった個人(=パートナー)がお金を出し合い、ファンドを組成。社会的な起業を支援、一緒に成果を目指しています。特徴は、お金のかかわりだけでなく、パートナー個々人が、自分の専門性を生かした時間の貢献や、一緒に汗を流すことを通じて、地域やビジネス、働くことのあり方に変化を生み出そうとしていることです。

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一緒に当事者として社会の変革にチャレンジ!社会起業家との「投資協働」があなたにもたらす共成長とは!?

皆さんは、「介護離職」という言葉をご存じでしょうか?

「介護離職」には2つの意味があり、1つ目は、親や家族の介護をしなければいけない会社員の方などが、介護の負担が重く、会社を離職しなければならないことです。2つ目は、介護の専門家である人達が、職場環境の酷さから、介護業界から離れることです。

この言葉に象徴されるように、社会に必要とされている介護で、介護をしている家族や、介護の専門職など、介護を「する」側が苦しんでいる現状が存在します。今回は家族介護者同士のコミュニティを作られている方や、介護専門職を支援している専門家の方から、家族介護者や、介護専門職など、介護を「する」側の未来をテーマに報告していただきました。

介護者手帳の活用で家族介護者の現状を知って欲しい

NPO法人UP TREE(アップツリー)代表理事の阿久津美栄子さん
NPO法人UP TREE(アップツリー)代表理事の阿久津美栄子さん

NPO法人UP TREE(アップツリー)代表理事の阿久津美栄子さんは東京都小金井市内で地域密着型「家族介護者支援」の活動を2014年からスタートしました。

阿久津さんは30代のときに両親の介護と死別を経験し、家族介護者に対する公共の仕組みが無いことを知りました。介護者が孤独の中で介護を続けていることから、家族介護者の居場所作りのために「介護者サポーター養成講座」を実施してきました。さらに家族介護経験者と介護中の人々が活動運営をする仕組みを作成し、小金井市内2箇所で家族介護者の居場所として「認知症カフェ」「1Dayケアラーズカフェ」も実施しています。

そこに集う介護者のニーズから家族介護は早い時点での情報、教育が必要ということがわかり「介護者手帳」の作成を考えました。この介護者手帳では介護の始まりから終わりまでの一連の流れが分かるロードマップを掲載しています。介護が始まり一番大事な終末期から看取り期を事前に介護者と当事者の知識、情報の共有の必要性をまとめた手帳です。今後は企業等で「介護者手帳」を活用して家族介護者の実際の現状を知る機会を作り、啓蒙活動を行っていく予定です。

誰もが介護の「当事者」である

NPO法人みらいびと代表理事の福島 見容(ふくしま みよ)さん
NPO法人みらいびと代表理事の福島 見容(ふくしま みよ)さん

NPO法人みらいびと代表理事の福島 見容(ふくしま みよ)さんは介護専門職の方々を元気づけ次世代のリーダーを育成する、ケアラーズ(介護専門職向け)メンター研修を開催しています。

企業の人財育成コンサルティングの会社を経営し、国内外の大手企業の人財育成案件を数多く手掛けてきた福島さんが、介護業界に入ったのは約5年前。夫が介護施設に転職したことがきっかけでした。入職4日目にいきなり看取りを経験した夫の姿からケアワークの尊さに目覚め、会社経営の傍らヘルパー資格を取得、施設ボランティアをしながら現場の声を拾ってきました。

介護福祉の本質=誰もが“当事者”であること…こんな当たり前のことを知らずにこれまで生きて来たとは。目からうろこが落ちる思いだったと言います。日々命と向き合う現場は、高い専門性と深い人間力の両面を養う仕事であることを、長年企業の人材育成に関わって者としても日々実感しました。

NPO法人みらいびとでは、介護現場活性化の一助となるべく、人財の確保・定着・育成をサポートしています。職員定着のカギは、この仕事を志した時の思いや原点を、日常業務の中で感じ続けられる環境を作ること。そのサポートとして次世代リーダー育成プログラム(ケアラーズメンター養成講座)や、介護事業所様の人財育成コンサルティングを行っています。実際にみらいびとが関わる施設では、現場職員と一緒に人財育成計画を策定し、コーチングや研修を提供しています。

「介護業界」に捉われずに解決策を探る

「チーム天晴れ」の木村誠さん
「チーム天晴れ」の木村誠さん

「介護職の待遇改善」「人材確保」が叫ばれる中、未来にたちこめる暗雲は一体誰が晴らしてくれるのでしょうか?

老人ホームの施設長を経験した上で生命保険業界に転身した「チーム天晴れ」の木村誠さんは、「自分の人生を大切にすることから目を背けずに、自己成長する」ことが未来を切り開く圧倒的近道と考えています。その為には、介護の専門性以外のスキルを意識的に身につける必要があると話します。

例えば資産形成の知識を持つこと。日本人世帯の9割もが加入している生命保険は、積り積もれば1000万円の大きな買い物になります。にも関わらず勧められるがまま加入し、保険の仕組みを活かせていないばかりか、内容に比べて保険料を払い過ぎている人が多い現実を知りました。給与を増やしても、浪費してしまえば意味がありません。

逆に、個人の想いやニードからオーダーメイドで作り上げる保険に見直してあげることで、万が一や老後の漠然とした不安を払拭し、目の前の仕事に専念できる糸口にもなり得る。結果的に人間力が備わり、本当の意味で自ら未来をこじ開ける底力となる。直面した課題に自ら飛び込み、志高い介護職が馬鹿を見ない為のチャンスに変えるべく、保険業界の革新に挑戦しています。

『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、などを務めている。

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