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37.5度を超えると、保育園を利用できない!?親子を助ける病児保育とは。

明智カイト『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事
(写真:アフロ)

病児保育は働いているママ・パパにとっては馴染みのある言葉でも、そうでないとあまり聞き慣れない人も多いと思います。

そもそも保育園は健康な子どもを預かることを前提にしており、37.5℃を超えたら保護者にお迎えに来てもらうことになっています。

しかし、幼い子どもはよく熱を出すもの。しかも大人と違い、一度体調を崩すとなかなか安定せず、長期に渡って保育園を休まざるを得ないこともあります。必然的に子どもの看病をしている保護者は仕事を休まなくてはならず、有休が足りなくなってしまいます。目の前の子どもは苦しんでいる、でも仕事に穴はあけられないということもあるでしょう。そして、ひとり親であれば、なおのこと仕事を休めず、状況はさらに厳しさを増していきます。

そんなときに頼れるのが「病児保育」です。風邪や発熱など(保育所では預かってもらえない)軽度な突発的な状況で子どもを預かり、ケアをしてくれます。また、保護者の子育てと就労の両立を支援することも目的としています。

厚生労働省が7月12日に発表した2015年の国民生活基礎調査では、18歳未満の子どもがいて仕事をしている母親の割合が68.1%に上り、統計を取り始めた2004年以降で最も多くなったとのことです。

(財)日本病児保育協会が2015年5月下旬から6月上旬にかけて、病児保育を利用する機会の多い、小学校就学前の子どもを持つ共働きの父親・母親を対象に実施したアンケート調査では、子どもの病気は母親任せであることが浮き彫りになっています。

既婚者のみ子どもが病気になった場合の父親と母親の負担感を合計100%になるよう数値で記入してもらったところ、半数を超える母親が自分の負担が90%以上である(父親の負担は10%以下)と回答しています。母親の負担が100%(父親の負担は0%)という回答も2割みられました。

そして、この調査では母親の病児保育サービスに対する利用意向は48%と半数近くに達しています。実際に子どもの病気に対峙することの多い母親にとっては病児保育が切実に求められているといえます。

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「病児保育」と、「病後児保育」の違い

「病児保育」だけではなく、「病後児保育」という言葉も聞く機会が増えていますが、違いはなんでしょうか。

「病児保育」とは、一般的には親が就労しているなどで保育所に通っている子どもが病気になったとき、親が仕事を休めない時には親に代わって病気の子どもの保育を行うことです。

「病後児保育」とは、病気の回復期にあり集団保育が困難であるが症状が軽度で安静の確保が必要であり、普通の保育メニューを受けるのが厳しい子どもを親に変わって保育を行うことです。 

病児保育には「施設型」と、「訪問型」の2つのタイプがある

病児保育は、クリニックや保育園に併設の病児・病後児保育室でお預かりする施設型と、自宅等に保育士等が訪問して保育をおこなう訪問型があります。

施設型は、親が病気の子どもを施設に連れて行き、病児保育施設にて預かるものです。 子どもにとっては、環境は異なるものの、他の子どもと交流したりすることもできます。

全国的に施設は増えつつありますが、実際にそこで預かれる子どもの人数はかなり限られています。なんといっても病気の子どもですから、保育園のように毎日一度に何十人もの子どもを預かるわけにはいかないのです。1施設でせいぜい4名程度のところが多く、人口に対して足りているとは言えません。感染症の流行時期は、利用したいと思っても利用できないこともしばしば起こります。

訪問型とは、保育者が病気の子どもがいる家庭に訪問し、家庭の中で病児保育のケアを行うものです。 子どもにとっては普段と同じ環境で保育を受けることができることから、心理的な安心感を持って保育を受けることができます。

最近では、病児・病後児を自宅で世話してくれるスタッフを派遣するNPOが増えてきています。先駆けとして、最も有名なのが認定NPO法人フローレンスがあります 。首都圏を中心に、会員登録した家庭の子どもが病気になったとき、朝の連絡でも駆けつけてくれるというサービスで、働く親に注目されています。いくつかのNPOがやはり同じようなサービスを各地で展開していますので、探してみましょう。

病児保育の資格があることをご存知でしょうか

実は病児保育には「認定病児保育スペシャリスト」という資格があります。

認定病児保育スペシャリストは日本病児保育協会が認定する日本初の病児保育のプロになるための資格です。こちらの資格は、病児保育施設、体調を崩した子を保護者の方が迎えにくるまでお預かりする保育所、病児のお預かりも行うベビーシッター、子育てを終えてその経験を仕事に活かしていきたいとお考えの方、さまざまな場でのみなさんの活躍を支えています。

スペシャリスト認定後は、病児保育施設、訪問型病児保育、保育所、ファミリーサポートなど幅広い場での活躍が期待できます。子どもが好きで子どもに関わる仕事に就きたいと考えている方、子育て経験を社会で活かしたい方にお薦めです。

仕事と育児の両立を支えるカギとなる「病児保育」は、社会貢献度の高い仕事です。社会的ニーズの高い「病児保育」は、今後活躍の場の広がりが期待されています。

『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、などを務めている。

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