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障害児をもつ保護者へ小児版介護者手帳「ケアラーズノート」を届けたい!

明智カイト『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事
(写真:ロイター/アフロ)

“介護者”をサポートする活動を展開しているNPO法人がクラウドファンディングサイトを通して、障害をもつ子どもを介護する保護者を対象とした小児版介護者手帳「ケアラーズノート」の作成・発行に必要な費用への支援を呼びかけるプロジェクトを開始。

「親の為の小児版介護者手帳『ケアラーズノート』をつくりたい!」プロジェクト

「介護者手帳」作成の実績を活かして小児版介護者手帳「ケアラーズノート」実現へ

小児版介護者手帳「ケアラーズノート」
小児版介護者手帳「ケアラーズノート」

NPO法人UPTREE(アップツリー)は、家族や知人を介護する“介護者”サポートの一環として2016年6月に「介護者手帳」を作成・発行しました。この実績をもとに、任意団体の「すぎなみ重度心身障碍児親の会 みかんぐみ」と共同で“小児版介護者手帳”「ケアラーズノート」の作成・発行のための費用への支援を呼びかけるプロジェクトを開始しました。

NPO法人UPTREE(アップツリー)は東京都小金井市にて、家族介護をしている方への居場所づくりを行っている団体です。「認知症カフェ」を2か所で開催し、人材育成も並行して行っています。また、将来的な家族介護を見越した事前啓蒙活動「介護者予備校」を主宰して、介護保険外の枠組みから介護を行っている家族に対し「助け合い事業」を実施しています。

2016年6月に作成・発行した「介護者手帳」は、“介護する人を支える”目的でケアの必要性や介護専門職に必要な情報の共有、介護ロードマップで全体の流れを把握してフローチャートやリストに記入することで介護者の負担や不安をやわらげる内容になっています。

クラウドファンディングでの支援を通して作成・発行をめざしている“小児版介護者手帳”「ケアラーズノート」でも同じノウハウを活かして、重度心身障碍や障害をもつ親の負担や不安がやわらぐような内容を予定しています。

※具体的には、以下のような項目を検討中です。

1:介護者の現状

2:介護のやりたいこと

3:介護者自分のこと

4:介護者のライフサイクル 現状の可視化 

5:介護者のできることチェック

6:子どもの基本情報

7:子ども経過

8:医療ケア

9:防災マニュアル

10:介護者のつぶやき        

介護当事者が今不安に思っていることを可視化し、介護している保護者が先の見える環境を知り、同じ思いの仲間の声を聴き、コミュニティーにも参加できるようになることで、1人で抱え込まない子育て環境を増やしていくことを目指した内容です。

全国約4万3,000人の重度心身障碍者への支援制度は未整備

重症心身障碍とは、重度の肢体不自由と知的障碍とが重複している状態をいいます。社会福祉法人 全国重症心身障害児(者)を守る会によれば、成年した方を含め全国で約4万3,000人と推計されています。

日本重症児福祉協会によれば、2008年時点で全国193ヵ所の専門施設や病院はほぼ満床状態で、整備の遅れが顕著となっております。また推計で約2万5,000人とされる在宅重症者のうち通園事業を利用できる方は約20パーセントと報告されています。

家族と離れて生活することがむずかしい障碍者への支援は、いわゆる“親亡き後問題”として社会福祉政策上の重要課題の1つです。厚生労働省の調査によれば、50パーセント超の障碍者が経済面を家族に依存している一方、介護する家族が亡くなったあとは生活保護で生活を支えると考える障碍者は約20パーセントにのぼっています。

『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、などを務めている。

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