祝・流行語大賞! 「ブラック企業」が採用困難になる時代へ
■祝・流行語大賞!
昨日の12月2日に、年の瀬の風物詩「ユーキャン 流行語大賞」が発表されました。
今年は、年間大賞に史上最多となる「今でしょ!」、「じぇじぇじぇ」、「倍返し」、「お・も・て・な・し 」の4つが選ばれたそうです。いやいや、せめて2つとかにしておけばいいのに。来年以降、1つにしにくくなると思うけどなぁ。一般市民にはわかりませんけど、業界の方の圧力でもあったのでしょうか。
ブラック企業問題を解決するタイミングは「今でしょ!」なんですが、「じぇじぇじぇ」!対応面倒です!という企業経営陣を尻目に、従業員はいつか「倍返し」してやる!と奮闘しつつ、「お・も・て・な・し」が重要な日本人気質から、結局議論にもならず、来年以降も流行が続きそうな感じがします。
ブラックな労働と給与の側面の話については、先日書いた記事『各種調査から考察する、ブラック労働者な香りがする「11%の人々」 - Yahoo!ニュース』をどうぞ。
■ブラック企業の現状
拙著『この数字で世界経済のことが10倍わかる--経済のモノサシと社会のモノサシ』でも書いたのですが、日本の労働生産性はOECD主要先進国7カ国中で18年連続最下位となっています。
長時間労働・低賃金の傾向は今に始まったことではないということでしょうかね。でも、労働生産性を上げる前にサービスレベルを確保するのは日本人らしいところではありますが。ただ、残業も含めて、がんばっても自分にメリットがない状況を何年も続けるのは困難ですね。
また、総務省によれば、週間就業時間60時間以上の人は、全体の11%(約478万人)以上になるそうで。週60時間以上ということは、週5日勤務の1日12時間労働以上となります。現実的に考えれば、朝9時に出社し、退社するのは夜9時以降がほぼ毎日で、場合によっては最終電車(午前0時前後)の直前まで勤務しているという実態だと推測されます。
オランダは、週のうち29時間が労働時間で、平均所得は約470万円ってOECDのデータがあります。確か日本は全体で年収は400万円ちょっとですよね。しかも60時間働いて年収が400万円って人結構いると思うのですが。「日本って…」思ってしまいますよね。
■ブラック企業のグラデーション現象と採用活動
ただ、ブラック企業かどうかは、自分がそう思うかどうか、という主観性が強い事柄でもあることは事実です。ブラック企業は相対的な傾向が強く、絶対的なものではないのです。
長時間労働で仕事のプレッシャーも強いことで有名な、戦略コンサルタントなどはブラックとなぜ呼ばれないか?これは上記の労働時間や労働の苛酷さが“絶対的”な指標ではないからと言えるでしょう。
ブラック企業たるゆえんは、その範囲の広さが大きく影響しているからです。労働条件など特定のルールを変えれば、解決するというものでもないのです。これをいうと、某ブロガーの方に怒られそうですが、「ブラックと思うかどうかは、人それぞれ」なのです。
例えば。アパレル企業の店舗スタッフはいわゆるブラック(長時間労働、低賃金)であっても、本社スタッフやマネージャー陣はブラックではない可能性も高いのです。
つまり、昨今のブラック企業論で語られないのが、企業単位ではなく、部署などで起こる“濃いブラック”と“薄いブラック”という現実で起こっているのグラデーションなのです。
CSR推進企業でも、いわゆるブラック企業と名指しされる企業はいくつかあります。それは、上記のような定義で「離職率」や「過酷な労働」という指標のみが使われているからです。
そもそも、なぜブラック企業が生まれるのかという命題に向かわない限り、対処療法のみでは解決できない課題と感じるのは私だけではないと思います。
ブラック企業のCSR的側面に関しては、以下の記事にまとめていますので、ご参考までに。
・ブラック企業問題は人権問題? 課題解決のためのラギー・フレームワーク「ビジネスと人権に関する指導原則」
流行語にもなりましたし、これから社会全体で広く議論されることを期待します。