企業はなぜ従業員を搾取し続けるのか--トップの思考停止が問題?
■“実力派”のブラック企業がノミネート?
今週、「第4回 ブラック企業大賞2015」のノミネート企業が発表されましたね。
もはや「ブラック企業」という単語は流行語大賞にもノミネートされたりして、一般認知の高いワードとなってきた感じがします。
今回のノミネート理由を見ても、どの企業もかなりの実績をひっさげてのノミネート(?)のようです。まさに労働関連法としてもグレーに近い事業活動を行なっていたようであり、CSR(企業の社会的責任)という概念はマネジメント層にはないということなのでしょうか。そうだとしたら、非常に残念でなりません。
■ブラック企業を見極める指標
・長時間労働
・セクハラ、パワハラ
・いじめ
・長時間過密労働
・低賃金
・コンプライアンス違反
・育休、産休などの制度不備
・労組への敵対度
・派遣差別
・派遣依存度
・残業代未払い
・虚偽求人
「ブラック企業大賞 ウェブサイト」によれば、上記がピックアップおよびノミネートの選定基準だそうです。上記の項目が当てはまるような、人に関わる領域に法令違反やグレーなラインな企業はお気をつけください。来年ノミネートされるかもしれません。
最近のCSR領域では、人にまつわる社会的責任が特に問われるようになってきています。途上国の児童労働・強制労働などから、先進国内での人権・労働問題など、その責任範囲の広さにグローバル企業は特に苦心している印象があります。
■ブラック企業の明暗
『ワタミとユニクロ「ブラック企業」批判後の 明暗を分けたものは何か?』という記事があったのですが、ここで指摘されているのは「問題に誠意をもって対応しろ」とうことです。ワタミの渡邉氏は“頑に非を認めなかった”一方、ファーストリテイリングの柳井氏は反省し対応策を講じた。
世界でどうなのかは知りませんが、ここ数年の記者会見を見て感じるのは「私たちは被害者です」という態度をトップがすると、火に油を注ぐ結果になる可能性が高いということ。最終的な被害者は従業員や顧客ですので当然なのかもしれません。日本では、問題が起きた時にまず「ご迷惑、ご心配をおかけして申し訳ありません」とまず謝罪することがセオリーです。
この「一次不祥事」(異物混入、情報漏洩、労務問題など直接的なもの)の初期対応がよろしくなかったために、ブランド毀損などが発覚する「二次不祥事」となります。
今回で言えば、二次不祥事とは、ブラック企業と名指しされたのに、告発を無視し根本的な労務問題等を解決に取り組まないとこ、もしくは報道などで指摘された時に謝罪会見やプレスリリースを出さない、という形でしょう。
ただ、上場会社の社長は“すぐに非を認めてはいけない”というのもわかりますが、二次不祥事のほうが社会的・経済的インパクトが大きいので、謝罪会見などのやり方については、日頃から危機管理担当者と決めておくとよいでしょう。
■外部組織からの企業へのプレッシャー
この動きって、人権・労働問題に関わる国際NGOみたいですよね。すべてとはいいませんが、国際的な大手NGOは日本企業を含めて、問題を暴くために潜入調査をしたりして、レポートを出し、問題の改善を促します。日本では、企業を叩くNPOが少ないですが、こういった団体がプレッシャーをかけることで改善できる問題もあると思います。
該当企業の担当者としては頭が痛い問題と思いますが、問題を放置し労働者権利を搾取するような事業活動をしていることが本来は問題なのです。
いくつかの企業担当者(CSR担当者)からは、NGOから叩かれメディアに取り上げられてから、社長が本気になって労働問題解決に動くようになった、という話を聞いたことがあります。最終的に企業の組織や理念はトップが動けば変えられます。逆にトップが否定し続ければ、いつまでも社内に浸透しません。
そうなると、人権・労働問題におけるトップの責任はかなり大きいと言えるでしょう。だから叩かれたら本気になるということもあるかもしれません。健全な労働環境を守るためには、第三者からのプレッシャーも時には必要ということなのでしょうか。
■労働以外の人に関わる”ブラック”なこと
またCSR界隈では、2015年12月施行の「メンタルヘルスチェック」があります。労働者としては良い傾向といえるでしょう。詳しくは先日Yahoo!ニュースに書いた『あなたの会社の“メンタル”は大丈夫ですか?』をご参照ください。
労働関連の法案がこの年末から施行され、今後はワークライフバランスや女性活躍に関する問題、ブラック企業問題などは、解消される企業も出てくるでしょう。あとは、企業倫理の問題であり、トップマネジメントのあり方が、今後、より問われることになると思います。
というわけで、大賞になるかわかりませんが、来年は御社がノミネートされないことを願っております。