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2015年日本のCSR・社会貢献業界で話題になった4つのこと

安藤光展サステナビリティ・コンサルタント
(写真:アフロ)

■2015年の4大ニュース

私の専門は「CSR」(企業の社会的責任)なので、年末ということで業界のまとめを。CSRというのは、非常にざっくりですが、企業のコンプライアンス遵守や社会貢献活動などのことです。

悲しいかな、一般のメディアでCSRの話題を取り上げられる時は、企業不祥事の時が多いのが現状です。「Yahoo!ニュース 個人」でも、トピックスやピックアップ記事、月間優秀記事にこの領域の話が入ることはありません。内容が堅く一般的ではないからというのはまさにその通りなので、そこをどれだけ一般化して伝えられるかが、書き手としての課題なのですが…。

さて、というわけで、本記事ではCSRの専門的な話ではなく、ビジネスパーソンの皆様に直性関係がありそうな、2015年の話題を4つほどピックアップしました。2015年の振り返り、2016年の事業環境予測のヒントしていただければ幸いです。

■1、ザッカーバーグの巨額寄付とインパクト投資

これは、CSR・社会貢献業界だけではなく、様々なIT系、ビジネス一般の雑誌やウェブメディアで取り上げられていたので、ご存知の方も多いと思います。

Facebook CEOであるマーク・ザッカーバーグ氏が、2015年12月、保有するFacebook株の99%(5兆円以上!)を生涯にわたって寄付すると発表した話です。詳細の寄付方法は他社メディアにゆずりますが、フォーブス・ジャパンが「インパクト投資」という視点を書いていたので、紹介します。

ザッカーバーグ夫妻の寄付組織が慈善団体ではない理由

インパクト投資とは、投資収益を求めるだけでなく、社会問題や環境問題の解決を目的とする投資のことです。純粋な見返りのない寄付は、個人はできてもステークホルダー(利害関係者)が多い企業ではなかなか難しいものです。しかし、経済的・社会的なリターンがあるものに寄付をするという投資手法があり、日本企業の一部もこのインパクト投資の概念を企業寄付やCSRに取り入れています。

巨大企業のオーナー社長の寄付は企業経営に一定の影響を与えます。2016年はFacebook以外の超大手企業でもオーナー社長の動向は注目です。

■2、「寄付月間」の実施

2015年12月は、日本で初めて様々なセクターをまたいだ「寄付月間」が実施されました。私も公認イベントということで、企業と寄付に関する勉強会を行ないました。当メディアのYahoo!JAPANも、このムーブメントに賛同し事務局を担っているようです。

この取組みのメインは個人なようですが、企業の賛同も多く、企業の寄付のあり方にも再考を求めており、先日はビルゲイツ氏が来日して寄付の重要性を訴えていました。

「寄付白書 2015」(日本ファンドレイジング協会)によれば、日本の法人寄付は「6,986億円」(2013年)であり、東日本大震災の2011年の時(7,168億円)とほぼ横ばいとなっています。また同レポートによれば、東日本大震災によって寄付のマーケットは広がったが、その後、継続した寄付につながっていない部分もあるとしています。企業寄付としては、今は“踊り場”なのかもしれませんね。

2016年12月のこのムーブメントに賛同する企業が増えるのがベストだと思いますが、それ以前に、社内で寄付や社会貢献活動に関するダイアローグなどをが行なわれるのが望ましいです。大手や上場企業では年1〜2回のCSRミーティングをしていると思いますので、東日本大震災から丸5年となる2016年3月以降の話をしてもいいのかもしれません。

■3、女性活躍推進

2015年8月に制定された「女性活躍推進法」。2016年4月1日から、労働者301人以上の大企業は、女性の活躍推進に向けた行動計画の策定や開示などが新たに義務づけられることとなります。

もう2015年のCSRとしてはこの「女性活躍推進」(女性活用)から始まった、「ワーク・ライフ・バランス」や「ダイバーシティ」(多様性)の更なる進展が見込める動きです。数年単位の中長期的な人事戦略が求められ、女性を中心とした組織におけるダイバーシティ推進や、ワークライフバランス向上、などを目指しES(従業員満足度)向上につなげる取組みがポイントになるでしょう。

男女共同参画基本計画、30%の目標を断念」という話もあり、安倍総理が数年前に「202030」(2020年に女性管理職を30%へ)というような話をしていたのですが、現実的には不可能という声のほうが多く、結局断念したということでしょうか。この女性活用の流れは世界的に不可逆な流れであり、人事・総務系の人は2016〜2017年は色々大変だと思いますが、頑張ってください!

■4、SDGs(持続可能な開発目標)

2015年9月に国連加盟国の全会一致で採択された「SDGs」(エス・ディー・ジー・ス、持続可能な開発目標)。2030年までの17分野・169項目の国際目標が決まりました。安倍総理も現地で歓迎スピーチをしてニュースになっていました。

この記事をお読みのあなたは「社会貢献」の定義を言えますか?だいたい「社会問題を解決する取組み」のようなイメージがあると思います。ではその「社会問題」ってどのようなものがあるか知っていますか?ここまでくると、ほとんどの人は答えられないと思います。いいんですよ。それで。その答えの1つがこの「SDGs」なのです。世界における社会問題を「10カテゴリー・169項目」にまとめたというイメージです。

その他にも、2015年12月にテロ後の厳戒態勢の中実施された、気候変動枠組条約第21回締約国会議「COP21」でも世界的な環境対応の枠組みが決まりましたし、2030年までの15年間で政府や企業が取り組むべき課題が明確になりました。グローバル企業では、中期経営計画とかに大きな影響が出そうですね。

持続可能な開発のための2030アジェンダ|国連 開発計画

企業のCSR・社会貢献領域の2016〜2017年のトレンドは「CSRの最新動向・潮流と2016〜2017年の9つのトレンド」という記事にまとめていますので、気になる方はトレンドの詳細を確認してみてください。

■まとめ

2015年も企業の事業環境を大きく変えるような、世界そして日本の出来事がありました。

2016年は、企業のCSR・社会貢献・環境部門の方はもちろんのこと、人事・総務や経営企画などの部門の方も上記のトピックスを追ったほうがいいますよ。特にリスクマネジメントはやりすぎるくらい対応しないと、企業によっては数ヶ月で1兆円クラスの企業価値を蒸発させることになるのでお気をつけください。

私、個人としてもこのあたりを2016年もこの「Yahoo!ニュース 個人」で発信していき、メディア・コンセプトである「発見と言論が社会の課題を解決する」に貢献すべく、読者の皆様に価値提供できればと思います。それでは、良いお年を。

サステナビリティ・コンサルタント

サステナビリティ経営の専門家。一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会・代表理事。著書は『未来ビジネス図解 SX&SDGs』(エムディエヌ)、『創発型責任経営』(日本経済新聞出版)ほか多数。「日本のサステナビリティをアップデートする」をミッションとし、上場企業を中心にサステナビリティ経営支援を行う。2009年よりブログ『サステナビリティのその先へ』運営。1981年長野県中野市生まれ。

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