Yahoo!ニュース

Apple新製品発表会の影の目玉!? リサイクルロボット「Liam」がイケメンすぎる

安藤光展サステナビリティ・コンサルタント
Appleのイベーションをもたらすリサイクルとは!?

■発表会の一番のインパクトはリサイクルロボット!?

米Appleは、21日(日本時間22日2時)の新商品発表会を行ないました。発表会では新しいiPhoneやiPadを発表する前に、環境への取組みとして、iPhoneのリサイクルロボット「Liam」を発表しました。「Liamと同じ処理が可能なマシンは、世界中のどこにも存在しない」と環境イニシアティブ担当副社長のLisa Jackson氏のコメントがまた素晴らしいです。

Lisa Jackson氏は、再生エネルギーや、リサイクルの自社の取組みを紹介。ソーラーパネル設置、iPhoneパッケージの紙(99%が再生紙ですって)について、などについて語りました。どんな新商品が発表されるのかと待っていた人たちに向けて、まず冒頭で環境への取組みを発表する。他のテック系・IT系企業の新商品発表会で、こんなことがありますでしょうか?(私が知らないだけかもしれませんが)

私の専門であるCSR(企業の社会的責任)に関する領域でも、度々ケーススタディで登場するApple。今回の革新的な発表についてまとめます。

■Liam イノベーションストーリー

製品のライフサイクル全体から製品のあり方を考えることこそ、真のイノベーションです。不要になったiPhoneはLiamが分解します。そうすることで、iPhoneの中の素材は生き続けることができるのです。

この動画タイトルが「Liam イノベーションストーリー」です。“環境に良いことしましょう”というレベルではなく、まさかあのAppleがリサイクルマシーンに名前をつけているとは、外部の人間は誰も知らなかったことでしょう!

Appleは、以前から環境問題への対処や環境配慮素材の開発、効率的な素材利用などに積極的に取り組んでいます。2013年6月、AppleのCEOであるTim Cook氏は、環境イニシアティブ担当副社長にLisa Jackson氏を任命し、環境イニシアティブのオフィスは、Apple社内の様々なチームと協力しながら、戦略の策定、利害関係者との協議、進捗の報告を行っている、としています。

このあたりの考え方は、チャリティ嫌いで環境配慮はあまり考えなかった、Apple創業者のSteve Jobs氏の経営方針と大きく異なる点です。単純に昔より、環境系NPO/NGOが企業を叩くようになったから真摯に対応し始めた、というのもあるとは思いますけど。

このLiamについては「リサイクル|Apple(日本語)」のページで『年間120万台以上の携帯電話を分解できるロボット。私たちは彼をLiamと呼んでいます。』と解説しています。詳しくはこのページをご覧ください。

またAppleのCSR活動全般については「Appleの最新CSR報告書「サプライヤー責任報告書2015」がハイレベルで驚いた件」、「AppleのCSR! 世界エイズデーのコーズマーケティング事例」という記事まとめていますので、ご参考までに。

■Better Starts Here(2015年)

※動画の音声は英語です

またAppleはこの発表会でLiamだけでなく、再生エネルギー使用などを含めた環境への取組みを強調しています。動画では全体的な環境への取組みの紹介をしています。英語が苦手な方でも、だいたいご理解いただけるでしょう。

Appleの環境活動は、いわゆるIT系企業の中でも世界トップクラスの規模で行なっています。

真のイノベーションには、あらゆることへの配慮が不可欠だと、私たちは信じています。」、「私たちは気候変動について、議論したいのではありません。阻止したいのです。」、「イノベーションとは、今ここにあるものを使って、新しい何かを生み出すことです。」、「置き換えられないものがあります。だから私たちは再利用とリサイクルに取り組んでいます。」、「私たちは大きく前進してきました。これからもさらに進み続けます。」という文言。

これらはAppleの環境への取組みのメッセージです。文面だけみると、環境問題をイノベーションの問題としてとらえ、積極的に取り組む姿勢を顕示しています。

イノベーションを“口だけ”で連呼する日本企業もありますが、はっきり言って本気度と成果が、比べ物になりません。

環境に対する責任|Apple(日本語)

■経済的価値と社会的価値

私は15年来のAppleユーザー(MacとiPhone)です。やや贔屓している部分もありますが、他のスマートフォンメーカーがここまでの規模の環境活動や、リサイクルを行なっているのでしょうか。

Appleでは、環境への取組みは一環して「イノベーションのために」行なっていると明言しています。iPhoneなどの商品・サービスを通じて、経済的価値と社会的価値を同時に創る企業Apple。このあたりはもっと賞賛されてもいいと思いますけどね。

今回の新商品発表会は、前述のごとく、Liamさんのスマートでイケメンなところ“だけ”が印象に残りました。様々な部品で組み立てられるスマートフォンもこんなにキレイにまとめられちゃうものなのです。

そう、iPhoneならね。

サステナビリティ・コンサルタント

サステナビリティ経営の専門家。一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会・代表理事。著書は『未来ビジネス図解 SX&SDGs』(エムディエヌ)、『創発型責任経営』(日本経済新聞出版)ほか多数。「日本のサステナビリティをアップデートする」をミッションとし、上場企業を中心にサステナビリティ経営支援を行う。2009年よりブログ『サステナビリティのその先へ』運営。1981年長野県中野市生まれ。

安藤光展の最近の記事