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とはいえ“横並び”は大事です社長! 今年も「クールビズ」の季節がスタートしました

安藤光展サステナビリティ・コンサルタント
ノージャケット・ノータイは普及するの…?(写真:アフロ)

■2016年のクールビズ期間は?

環境省は先月26日に、ノーネクタイ・ノージャケットなどの軽装で過ごす「クールビズ」の実施を今年は5〜9月で行なうと発表しました。東日本大震災(2011年)以降、5〜10月だった期間が、10月の夏日の少なさを考慮し今年から5〜9月になりました。

今年で12年目の取組みとなっており、また、去年まであった「スーパー・クールビズ」というクールビズをより積極的に行なう期間はなくなりました。あぶなかったです。このまま。「クールビズ」、「スーパークールビズ」ときたら、数年後には7〜8月を「ミラクル・スーパー・クールビズ」(仮案)と提唱する動きがでて、インフレを起こすところでした。

環境省より「平成28年度クールビズについて(お知らせ)」というプレスリリースが26日に出されておりますが、毎年思いますが、もっと早く告知してもいいんじゃないのか?(色々予測とかもあるとはいえ、さすがに直前すぎると感じる人は多いはず…)

東京は春が短く、3月末でも寒いなと思っていたら5月上旬のゴールデンウィーク明けからは、半袖の人も増え、一部企業では本日「5月2日(月)」もしくはゴールデンウィーク明けの「5月9日(月)」から始まるという企業もいくつもあるでしょう。対応が早い企業はすでにプレスリリースを出しておりますので、営業職などで顧客訪問がある方は、顧客企業のウェブサイトでクールビズの案内がでていないかチェックしてから訪問をするようにしましょう。ここは日本なので“横並び”は大事です!クライアントの慣習に合わせましょう。かっこよく言うと「TPO」ですね。

薄着による冷房の省エネが「社会貢献」と考える企業は、そこまで早急な対応はないのですが、省エネが「経費削減」と考えている企業は積極的に対応しているように思います。明確に実施のメリットがあるからでしょうか。

せっかくするなら後手の対応ではなく、戦略的に取組みたいところです。もちろん、環境省の指定した期間でなく6〜9月でも良いと思います。まだ間に合いますので、企業の担当者は上司へ対応の提案をしてみましょう!

■クールビズの課題

環境省では、地球温暖化対策のため、平成17年の夏から、冷房時の室温を28℃にしてもオフィスで快適に過ごせる、「クールビズ」を提唱してきました。これまでの継続的な呼びかけにより、現在のクールビズの認知率が約9割と社会的にも定着してきたところですが、近年の気温や衣料品の販売売場などの実態に即し、クールビズの期間を5月から9月までといたします。(5月1日スタート、9月30日終了)

企業等における実践率がさらに向上するよう、引き続き呼びかけてまいります。従来クールビズ期間としていた10月においても、暑い日には室温設定の適正な管理と、各自の判断による軽装を引き続き呼び掛けてまいります。

出典:クールビズ|環境省

もう12年目となるクールビズですが、東京の大手企業には浸透しているものの、営業職ではまだノーネクタイ・ノージャケットで顧客訪問ができないという本音のようで、省エネという成果よりは、労働環境改善による従業員満足度のほうが高い気がします。(参照:たとえクールビズでも、営業は「半袖シャツ」を着ないほうがいい)社会的な影響力と海外企業の事例は「丸10年のクールビズ--本当にクールな企業はやっていない?」(2015年6月公開)という記事にまとめているので興味がある人はチェックしてみてください。

もちろん、随分浸透してきたとはいえ課題がないわけではないです。前述したように、就職活動生や営業担当のビジネスパーソンの男性は、ジャケットなしやノーネクタイでは難しい場面もあるでしょう。訪問先担当者がノーネクタイ・ノージャケットだとわかっている場合はまだ可能かもしれませんが、通常はジャケットなしは難しいでしょう。

また、地域格差もあると言われています。東京の一部企業ではクールビズが浸透していますが、地方や業種によっては全く関係ない、ということも多いようです。省庁で実施するより、いわゆる“お堅い”とよばれる企業・業種が実施するようになれば一気に広がりそうですけどね。日本は横並びが大好きですから。

ちなみに私の場合(コンサルタント業)は、もちろん顧客先への訪問は、ジャケット・ネクタイ必須です…。ただ打合せの時には「脱いでいただいてもかまいません」と言っていただけるとありがたいですが、さすがにその場でネクタイをはずすことはしません。

また、先方が真夏でもジャケット・ネクタイでいる場合にはこちらもそれに合わせます。そういう場合は会議室は冷房がしっかりかかっているので、そこまで暑くはないのですが、エコではないですよね…。

■クールビズのメディア対応

メディアも特に新規性がないからか、クールビズを積極的にPRも兼ねて記事してあげよう、みたいなのはありません。当Yahoo!ニュースでも、去年もでしたが、新聞社などはニュースとしてほとんどが取り上げていません。たとえば、2016年1月から5月2日現在までのニュースは、Yahoo!ニュース・サイト内検索で「25本」だけでした。

しかもそのうち「クールビズ・ファッション」の話題が8割で、クールビズの取組み自体の紹介は数本だけ…。しかもストレートニュース(事実だけをシンプルにまとめる記事)で、クールビズの意義・意味を紹介したり、環境活動につなげた報道は「ゼロ」でした。残念。先週に環境省から発表があったばかりなので、企業が本格的に動く来週からもう少し話題として出てくると思いますが、初動としては全然だめですね。

国の要所が全員参加の一大プロジェクトなのに、このままだと“知名度ばかりが高く社会的インパクトが見込めない国家プロジェクト”になりさがってしまいそうです。

■クールビズの今後は?

企業としては、省エネ以外の“見せ方”で取り組む必要があるでしょう。そうでないとメリットやインセンティブが継続できないでしょうから。

例えば、CSR(企業の社会的責任)の国際ガイドライン「ISO26000」では、環境への取組みの主要課題は以下の4つだとしています。

○1、汚染の予防

環境に配慮した製品およびサービスを早急に取り入れる取組みを展開し促進している。自らの決定および活動が周囲環境に及ぼす側面および影響を特定している。など。

○2、持続可能な資源の利用

エネルギー、水、その他資源の顕著な使用に関して、測定、記録、および報告を行っている。持続可能な調達を促進している。持続可能な消費を促進している。など。

○3、気候変動の緩和および気候変動への適応

将来の世界的および局地的な気候予測を考慮してリスクを特定し、気候変動への適応を自らの意思決定に統合している。気候変動に関連する損害を回避したり最小限に抑える機会を特定し、可能な場合、状況の変化に適応する機会を活用している。など。

○4、環境保護、生物多様性および自然生息地の回復

持続可能な技術およびプロセスを利用している供給業者からの製品の使用を段階的に拡大している。自らの環境影響の費用を負担する市場の仕組みに参加し、生態系サービスを保護することで、経済的価値を創出している。など。

かなり専門的な枠組みなので、単語的にイメージがしにくいものもあるかもしれませんが、このガイドラインにそってCSR情報の開示を行なっている企業は何百社もありますし、どこかにはクールビズのネタを当てはめられそうな気がしませんか?一応、国際的なガイドラインに沿った活動でもありますよ!と。

クールビズは環境活動などを掲載する「CSR報告書」などのネタにもなりますし、大きなメリットはないものの、やって損なことはないと思いますので、なんとなくやっていたけどという企業はぜひ、プレスリリースを出して社外へPRしてみてはいかがでしょうか?

気候変動に関する取組み|環境省

地球環境・国際環境協力|環境省

クールビズ|環境省

サステナビリティ・コンサルタント

サステナビリティ経営の専門家。一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会・代表理事。著書は『未来ビジネス図解 SX&SDGs』(エムディエヌ)、『創発型責任経営』(日本経済新聞出版)ほか多数。「日本のサステナビリティをアップデートする」をミッションとし、上場企業を中心にサステナビリティ経営支援を行う。2009年よりブログ『サステナビリティのその先へ』運営。1981年長野県中野市生まれ。

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