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【全仏オープン/車いすテニス】準決勝で国枝を破ったフェルナンデスが初優勝。「シンゴは憧れ」

荒木美晴フリーランスライター
全仏直前のワールドチームカップ。国枝はこの大会で4か月ぶりに実戦復帰した。(写真:伊藤真吾/アフロスポーツ)

全仏オープンテニス車いすの部。シングルス3連覇がかかる男子の国枝慎吾(ユニクロ)は準決勝で敗退。女子の上地結衣(エイベックス・グループ・ホールディングス)も決勝進出はならなかった。しかしながら、国枝と上地はそれぞれダブルスで頂点に立っており、存在感を示した。

国枝は昨年の全米オープン以降、違和感を覚えていた右ひじの内視鏡によるクリーニング手術を4月上旬に受け、5月末のワールドチームカップ(東京)で復帰したばかり。今季最大の目標に掲げる9月のリオパラリンピックに向けて、丸山弘道コーチと急ピッチで調整を図っている最中だ。健常者のボールと車いすに乗った選手のボールの球筋は微妙に変わってくる。今の国枝に必要なのは、コーチとの強化を継続しつつ、実戦を通して試合勘を取り戻すことだろう。リオに向けてはひと試合でも多く、ゲームしたいところ。そういう意味では、今大会、ゴードン・リード(イギリス)とペアを組んだダブルスでは優勝という結果を残しており、体力的にもメンタル的にも熾烈な争いを強いられるグランドスラムをひとまず最後まで戦い抜くことができたという点は、自信につながったのではないだろうか。

今回、国枝がシングルス準決勝で敗れたグスタボ・フェルナンデス(アルゼンチン)は南米出身らしくクレーコートを得意とするプレーヤー。フェルナンデスは決勝で、第1シードのステファン・ウデ(フランス)を準決勝で破った今年の全豪王者のリードをストレートで下し、シングルスのグランドスラム初タイトルを手にした。

全仏オープンで記憶に残るのは、2014年の準決勝。当時世界ランキング1位の国枝と対戦し、フルセットの激闘の末、フェルナンデスが3度のマッチポイントを握りながら、国枝に競り負けた。それだけに、「シンゴは僕のアイドル」と国枝に憧れる22歳のフェルナンデスにとっては嬉しい勝利。対国枝戦では、2013年のワールドチームカップで一度勝利しており、通算2勝目となる。

男子の車いすテニス界は、世界ランク1位で45歳のウデと、パラリンピック2連覇中の国枝のふたりが長年けん引してきた。ロンドンパラリンピック前後から、フェルナンデスはじめ、リードやヨアキム・ジェラード(ベルギー)など20代の選手が台頭し始め、今はまさに戦国時代の様相を呈している。

すべてのプレーヤーにとって特別な舞台・リオパラリンピック開幕まで、5日であと3か月となった。経験豊富なベテラン勢が盛り返すか、それとも勢いある若手が席巻するか――。リオは実に見ごたえのある戦いになりそうだ。

フリーランスライター

1998年長野パラリンピックでアイススレッジホッケーを観戦。その迫力とパワーに圧倒され、スポーツとしての障がい者スポーツのトリコに。この世界の魅力を伝えるべく、OLからライターへ転身し、障がい者スポーツの現場に通う日々を送る。国内外における障がい者スポーツの認知度向上と発展を願い、2008年に障がい者スポーツ専門サイト「MA SPORTS」を設立。『Sportsnavi』『web Sportiva』などスポーツ系メディアにも寄稿している。パラリンピックは2000年のシドニー、ソルトレークシティ、アテネ、トリノ、北京、バンクーバー、ロンドン、ソチ、リオ大会を取材。MA SPORTS代表。

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