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ジロ・デ・イタリアは2018年に日本で開幕する!?

宮本あさか自転車ロードレースジャーナリスト
2016年ジロはオランダで華やかに開幕した(photo: jeep.vidon)

ジロ・デ・イタリアが2018年に日本で開幕する!?

こんな記事が5月10日付のイタリア日刊紙La Stampaに掲載された。すでに1年半ほど前から自転車メディアをにぎわせてきた計画が、いよいよ実現するかもしれない、というのだ。

記事によれば;

・時期は2018年

・スタート地は東京

・日本でのステージ数は4

・富士山ステージあり

・日本開幕後に2日間の休養日

・予算3500万ユーロ以上(日本円で約45億円)

ジロ・デ・イタリアとは「イタリア一周」という意味で、毎年5月に、3週間かけて争われる自転車レースである。ツール・ド・フランス(フランス一周)、ブエルタ・ア・エスパーニャ(スペイン一周)と並び、世界最高峰の「グランツール」大会でもある。

今年2016年はオランダから、2014年は北アイルランドから、2012年はデンマークから走りだしたように、ジロは時々はイタリア「国外」にも出かけていく。ただし、欧州の外にでたことは、99回の大会史上一度もない。

たしかに、かつて1度だけ、欧州外のスタートが計画されたことはあった。米国のワシントンDCから2012年に開幕しよう、というものだ。残念ながら、選挙で米国側の状況が変わり、企画は頓挫した。

それでも、ジロ開催委員会の野望が、泡と消えたわけではなかった。

ツール・ド・フランスが、2013年秋に「さいたまクリテリウム」を創設したことにも、大いに触発された。当時のジロ総合委員長ミケーレ・アックアローネが、「僕たちも、日本で、レースがやりたい!」と、はしゃいだように語っていたのを憶えているが……。

さいたまクリテリウムは、シーズン末に行われる、1日限りのレースである。長い移動を経て日本にやってくる選手たちは、「次の日」のことも、「シーズンのこの先」のことも考える必要はない。宇都宮で行われるジャパンカップも、条件は同じだろう。

一方でグランツール開幕となると、まったく状況が違う。日本開催ともなれば、

10時間以上のフライト

→プラス7時間の時差

→4日間の日本ステージ

→10時間以上のフライト

→マイナス7時間の時差

を積み重ねたその先に、イタリア本国で17日間のレースが待っているのだ。

果たして選手本人たちやチーム関係者は、どう考えているのだろうか?CPAプロ自転車選手協会は、来る5月16日に記者会見を予定している。この機会になんらかの発表がなされるのかもしれない。

2009年までCPA会長を務め、現在はテレビ解説者のセドリック・ヴァッスールは、BeIN SPORTSでのジロ放送中に早々と意見を述べた。

「レースそのもの、選手そのもののことが、蔑ろにされているような気がする。地理的にどれほど離れていても、その場所で最初から最後まで行わるレースなら問題ない。その国で戦い、その国で勝つことを目的にして、選手もチームも予め用意して臨むのだから。『ツアー・オブ・ジャパン』なら、いいんだよ!

でも、これは、ツアー・オブ・イタリアだよね。イタリアに帰ってきてからが本番だ。それなのに、チームはたった4日間日本へ行くために膨大な準備を強いられるし、選手たちは3週間の最初に重い疲労を背負わされる。その後の怪我や不調が心配だ。ヘタしたらシーズンずっと調子を崩してしまうかもしれない」

昨年までツール・ド・フランスでレース委員長を務めていたジャンフランソワ・ペシューは、かつてこう述べていた。

「選手を尊重し、レースの質を優先しようと思ったら、遠すぎる場所での開幕は自ずと選択肢から消されるはずなんだ。これまでもルーマニアやエストニア、ロシア、カタールが開幕地として立候補してきたけれど、あまりに遠すぎるから丁重にお断りしてきた」

同記事は、今ジロの開催中に、日本側との正式な契約が結ばれるのではないかとも示唆している。

自転車ロードレースジャーナリスト

フランス・パリを拠点に、サイクルロードレース(自転車競技)を中心とした取材活動を行っている。「CICLISSIMO」「サイクルスポーツ」誌(八重洲出版)、サイクルスポーツ.jp、J SPORTSサイクルロードレースWeb等々にレースレポートやインタビュー記事を寄稿。

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