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セックスとドラッグまみれた、本気のレオナルド・ディカプリオ

渥美志保映画ライター

ついに来週公開される『ウルフ・オブ・ウォールストリート』。

アカデミー賞主演男優賞について書いた前回の記事で「レオはノミネートも厳しい!」って書いちゃいましたが、まんまとノミネートされちゃったもんで、たはっ!って感じで日々、笑ゴマしている私です。まあ、メゲませんけども。

さてこれまで海外の評判しか情報のなかったこの作品、来週のレオの来日に合わせ、ようやく日本のマスコミに公開されました。そんなわけで今回は「そいでホントのとこ、ディカプリオってどうなのよ」っていう視点から、作品を御紹介したいと思いますー。

まずは物語。主人公は大金持ちになると決めて20代で株の世界に入ったジョーダン。87年の株価大暴落の中で頭角を現した彼は、地元のグレた連中を集めて会社を作りウォール街でのし上がってゆきます。ついたあだ名が「ウォール街の狼」。これ日本人がイメージする狼、孤独なキレ者ってことじゃなく、強欲な守銭奴の意味。金融マンとは名ばかりの彼らは、客を騙してクズ同然の株を売っては手数料をぼったくり、違法スレスレの脱法行為を繰り返し、やがて完全な違法行為にも手を染め、桁違いのド派手さで使いまくる、その実情は完全にギャングそのものなんですね。

映画は彼が転落するまでの10数年の乱痴気騒ぎの日々を描いてゆきますが、この欲望のギラギラっぷりが尋常じゃない

映画に登場する大金持ちの男が手に入れるものといったら、贅沢な食事に超豪邸にフェラーリに自家用ヘリにクルーザーに美しい妻とモデルの愛人あたりが相場で、この映画にももちろん登場しますが、力点はセックスとドラッグの2点のみ。私は言い切ります!

はっきり言って予告編はめちゃくちゃソフトに作ってあります。パンイチのマーチングバンド(?)とともにストリッパーの群れがやってくるわ、娼婦の軍団と乱交してホテルの1フロアを破壊するわ、女王様と絡むわ、飛行機のファーストクラスでハイになってスッチーを押し倒すわ、普通の人が見たら「レオ、なんでそんなんしたいの?」っていう笑いなんだかエロなんだかわかんないものすらあったりして、まあとにかくメチャクチャ、レオ大暴れ。正直ここまでヨゴレのレオを見たのは初めてなんですけど、同時にここまでカッコつけず、鼻血もでねーやレベルですべてをさらけ出して演技をしてるレオを見るのも初めて。

そしてただ振り切ってるだけじゃないのが、この作品のレオの凄みなんです~。

後半、あまりに強烈なドラッグで身体が言うことを聞かなくなるという爆笑の場面があるんですが、この場面の演技のすごさ!!!アカデミー賞に肉薄した『ギルバート・グレイプ』を思い出しますが、こういう身体的な演技が意のままにできる俳優って、彼の他にはスティーブ・マーチンとかジム・キャリーぐらいかなあ。芸人寄りの俳優以外ではちょっと思いつきません。

「レオにはオスカーは無理」と言いきってたはずの私が「もしかすると、もしかするかも…」と思っちゃったのは、もうひとつ理由があります。

今回の作品は、共演者に強烈なインパクトを残している人がいないんですね。ジョーダンに悪行を教え込む先輩ブローカーを演じたマシュー・マコノヒーや、ジョーダンの最初の仲間ドニーを演じて助演男優賞候補にノミネートされたジョナ・ヒルも悪くないんだけれど、出ずっぱりでハイテンションな演技を繰り広げるレオの前ではどうしても影が薄い。言うてもマシュー・マコノヒーは冒頭の4、5シーンのみの出演だし、ジョナ・ヒルは『アビエイター』のケイト・ブランシェットや『ブラッド・ダイヤモンド』のジャイモン・フンスーまでの存在感はないように感じました。映画は完全な「レオ様オンステージ」。オスカーを狙うにピッタリの作品。てかやっぱ狙ってるんですね~。

作品自体もすごく面白く仕上がっていると思います。

監督のマーティン・スコセッシは、『ミーン・ストリート』のような初期の作品では、仲間内の無意味で下らない会話がすごく面白かったんですが、本作にもそういう要素がたっぷり。例えばタランティーノ作品のファンなんかはツボにはまるかもしれません。そして見終わった後の余韻は、彼の代表作であるギャングもの『グッドフェローズ』に似た感じ。野心ギラギラの男たちが頂点を極めてパッと散る、めちゃくちゃだったけど突っ走ったひとつの時代が終わってしまった、その寂しい感じがすごくいいんですね。

さて最後に、面白い…てか、呆れちゃう動画をつけておきましょう。

スコセッシ映画の名物は連呼される「fuck」なんですが、この映画ではついに500回越え。いくつもギャングものを撮ってきたスコセッシなのに、金融マンを描いたこの作品で最高記録樹立って……当時の金融マンってどんだけクレイジーだったんでしょうか。

その「fuck」部分だけをまとめた動画がこちら。ご興味のある方はどうぞ。あらすじを知っていれば、ほとんど映画見た気分にもなれちゃう名場面集です。

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

1月31日(金)より全国にて

(C)2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

映画ライター

TVドラマ脚本家を経てライターへ。映画、ドラマ、書籍を中心にカルチャー、社会全般のインタビュー、ライティング、コラムなどを手がける。mi-molle、ELLE Japon、Ginger、コスモポリタン日本版、現代ビジネス、デイリー新潮、女性の広場など、紙媒体、web媒体に幅広く執筆。特に韓国の映画、ドラマに多く取材し、釜山国際映画祭には20年以上足を運ぶ。韓国ドラマのポッドキャスト『ハマる韓ドラ』、著書に『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』。お仕事の依頼は、フェイスブックまでご連絡下さい。

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