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ヒーロー集団が世界中から総スカン?「正義の押し売りは止めてくれ!」

渥美志保映画ライター

今回はGWにぴったりの作品『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』をご紹介します。この作品、「キャプテン・アメリカ」と謳っていますが、もうほとんど『アベンジャーズ』の1本。世界を股にかけて活躍中のヒーロー集団を、今回襲うのは「正義の押し売りは止めてくれ!」という世界中からの大クレーム!そして国際的な組織の管理下におかれるという事態を前に、分裂の危機に!っていうか、こいつら、明確な基準もないままに、自分たちの思う正義を行使してたのか!ってツッコミたくなりながら、行ってみますよ!

キャプテン・アメリカとアイアンマン
キャプテン・アメリカとアイアンマン

さて物語。オープニングでまたしても世界平和を守っているうちに、派手に街をぶち壊してしまうアベンジャーズの面々。ついに堪忍袋の緒が切れた世界中から非難の声が上がり「ソコヴィア協定」が結ばれてしまいます(ソコヴィアは『アヴェンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』で大破壊されちゃった国ですね)。それはアベンジャーズを国際的な政府組織の管理下に置き「好き勝手に正義を行使しないように!」という協定で、従わなければアメリカ政府が即逮捕するっていうんだから、ほとんど命令なんですね。

仕方ないけど、組織に属してチームの活動を存続しよう――と、ある理由から言い出したのは、「アイアンマン」ことトニー・スターク(ロバート・ダウニーJr.)。これに組織慣れしてるブラック・ウィドウ(スカ―レット・ヨハンソン)ほかふたりが賛同します。でも中心人物で人望厚い「キャプテン・アメリカ」ことスティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)は、トニーのいつもの強引なやり方に、なんとなーくモヤモヤしています。

そこで発生した政府組織の本部ビル爆破テロ。アベンジャーズは防犯カメラに映った怪しい人物を追い始めますが、これがキャプテンの親友ウィンター・ソルジャーだったため、彼の無実を信じるキャプテンはアベンジャーズと完全に決別。これをきっかけに、アベンジャーズは「組織に属して活動=アイアンマン派」と「自分の正義に従う=キャプテン・アメリカ派」に二分し、戦いが始まってしまいます~。

アイアンマン派の人々。やっぱ組織だよね~って言ってるのは、偶然かしら、オッサン軍団。
アイアンマン派の人々。やっぱ組織だよね~って言ってるのは、偶然かしら、オッサン軍団。

冒頭でも書きましたが『キャプテン・アメリカ』と謳いつつも完全に『アベンジャーズ』なこの作品、でも陰謀はありつつもデカい敵がいないわけで、戦いはほぼすべて「アベンジャーズ」vs「アベンジャーズ」なわけで、やったら面白いけど実現しない、なんつうか、古いけど、「若乃花」vs「貴乃花」みたいな…て古すぎか、歳がばれるか、まあいいや、そんなんが見れるわけで、これがめちゃめちゃ面白いんですね~。

くしくも『バットマンvsスーパーマン』(DCコミックス)と近いタイミングで公開されたので、比べちゃいかんと思いつつも、マーヴェルの遊び心やキャラの面白さは本当に際立っちゃっています。『バットマンvsスーパーマン』は“マジメなデカい男とマジメなデカい男が、真正面からでガチで激突”って言う感じなんですが、こちらは“飛べるけど機械が壊れりゃ全然ダメな皮肉屋アイアンマン”vs“超人的戦闘能力はあるけど飛べない正統派キャプテンアメリカ”とか、“弓矢が武器で至近距離と女に弱いホークアイ”vs“至近距離の足技とハニートラップが得意な女スパイ”のブラック・ウィドウとか、戦いの最中にも見えるそのキャラがほんとうに面白い。

特にアヴェンジャーズ初参加の「虫キャラ」たち、アントマンとスパイダーマンは、まさにそんなマーヴェルの真骨頂。「手首から糸が出る」「小さくなれる」っていう、それ何の役に立つの?っていうスーパーパワーを使った、アイディア満載の戦いっぷりで大いに楽しませてくれます。アベンジャーズに初招集されて「いいとこ見せねば!」と張り切りる三枚目ぶりを買って出てるのもエラいwww。

こちらはキャプテン・アメリカ派の人々。自由を求める若者連合。
こちらはキャプテン・アメリカ派の人々。自由を求める若者連合。

さてそんなお楽しみの陰で、思わぬ陰謀も進行しちゃっています。今回の物語は、観客をうまくミスリードしながら悪者の真の狙いと思わぬ事実が明かされてゆき、ええええっ!どうなっちゃうの!という結末にたどり着きます。

そこに絡んでくるのは、やっぱりこのシリーズの中心人物の二人、アイアンマンことトニー・スタークと、キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースです。トニーって単純で即物的で、言いたい放題の癖に意外と繊細で、天才なのに人望が全然ないという、すごい欠陥人間なんですが、それをロバート・ダウニーJr.が本当に愛すべき人として演じ、その一方のスティーブは、清く正しく正々堂々の正義漢でその上冗談みたいなナイスガイで、こういうタイプってマジで嫌味だよなって思いそうなところを、クリス・エヴァンスがすごく素敵に演じていて、なんというか全方位に完璧に気が配られているシリーズだなあと思います。

左がRDJ演じるトニー・スターク、右がクリス・エヴァンス演じるスティーブ・ロジャース
左がRDJ演じるトニー・スターク、右がクリス・エヴァンス演じるスティーブ・ロジャース

ストーリーも会を追うごとにどんどん面白くなっていて、今回のラストなんて次回への引っ張りも十分。これで、今回はタイトルが『キャプテン・アメリカ』ということで(おそらくクリス・エヴァンスと同クラスだから)出ていない、「ソー」と「ハルク」が控えているんですから、楽しみ過ぎます~。

さて最後にニューカマー情報を。今回、キャプテンとの戦いを控えて、トニー・スタークがスカウトしたスパイダーマン、演じる新生トム・ホランドで来年には新シリーズが始動する予定です。ちょっと先が楽しみな可愛い男の子ということで、はい、こちら

ピーターの育ての親、メイ叔母さんを演じるのがマリサ・トメイなのですが、この人、若い頃にロバート・ダウニーJr.と共演の『オンリー・ユー』というすごくロマンティックなラブストーリーに出た人。初めて会ったトニーが「オバさんがキレイすぎる」と何度も言うのが、マニアとしてはすごく可笑しい。

もう一人は、政府組織本部の爆破テロで父を失い、ウィンター・ソルジャーを追う「ブラック・パンサー」も、今回のキャスト、チャドウィック・ボーズマンで作品化が決定。この人がまた知性と野生を兼ね備えた感じのイケメンな黒人なので、個人的にも期待大です。はい、こちら

何かと心配事も多い日々ですが、ゴールデンウィークは気分を変えるタイミング。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』はそんな時にぴったりの作品金と思います。難しいことを考えず、ああ楽しかった!と見終わって、すっきりしたし、また頑張ろう!ってなれるといいなーと思います。

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』

公式サイト

映画ライター

TVドラマ脚本家を経てライターへ。映画、ドラマ、書籍を中心にカルチャー、社会全般のインタビュー、ライティング、コラムなどを手がける。mi-molle、ELLE Japon、Ginger、コスモポリタン日本版、現代ビジネス、デイリー新潮、女性の広場など、紙媒体、web媒体に幅広く執筆。特に韓国の映画、ドラマに多く取材し、釜山国際映画祭には20年以上足を運ぶ。韓国ドラマのポッドキャスト『ハマる韓ドラ』、著書に『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』。お仕事の依頼は、フェイスブックまでご連絡下さい。

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