"女の子"を"女性"へと変貌させるのは「初めての二股」
今回はアカデミー賞主演女優賞候補となった、シアーシャ・ローナン主演の『ブルックリン』をご紹介します。
この作品、ものすごーく保守的で働き口も少ない田舎町で、なんとなーく行き場のない青春を送っていたヒロイン、エイリーシュが、初めて飛び出した広い世界でのいろんな経験が描かれた、いわば上京物語なのですが、不慣れな都会の生活でホームシックになったり、“なまり”が気になって友達ができなかったり、働き口の高級デパートの華やかさに気圧されてしまったり、きれいでおしゃれな先輩たちにちょっと意地悪なからかいをされたり――特に前半は、大学卒業して東京にやってきた女の子には共感だらけ、ぐっとくる部分がたくさんあるんじゃないかなーと思います。
さてそんな彼女がNYになじんでゆくきっかけは、まあ当然っちゃ当然、恋です。
相手は、同郷人のパーティーに紛れ込んだトニーというイタリア系移民の青年なのですが、この子が本当に可愛くて優しくて素朴なんだけど、ジェントルマン。エイリーシュが「忙しいから毎日会えない」とかいうと「じゃあ仕事のあと一緒に帰るだけでも」と、毎日のように職場に迎えに来たりします。まあ「仕事で遅くなってごめん」って時も1回くらいありましたが、概して「お前どんだけ暇なんだ!」というようなマメさ加減です。
ところがある事情から一度故郷に帰ったエイリーシュは、故郷のイケメン、ジムとも付き合い始めてしまうんですね~。何調子こいてんだよエイリーシュ!と思うんですが、相手がこれがまた優しく育ちのいいおぼっちゃまで、背なんかすらっと高く(トニーはずいぶん小柄)、なかなかに捨てがたい相手です。
どうするのエイリーシュ、どっちにするのエイリーシュ、とヤキモキしながら見るのですが、「初めてのお使い」が子供を成長させるがごとく、この「初めての二股」が、エイリーシュをぐーんと大人に成長させてゆきます。というか、この二股のみならず、映画はエイリーシュに次々と人生の選択を迫ってゆくのですが、これこそがエイリーシュに成長させてゆくものなんですね。
これは比喩的な意味でも情緒的なことでもなんでもありません。というのも、「選ぶ」ためには、「本当に自分が求めているのは何か」を自問し、自分を見つめなおさなければいけないから。ひいていえば「自分自身」を見つけることであり、それを見極めたうえで「自分自身の意思で歩みだすこと」だからです。さら自分で選んだその結果に起こることを甘んじて引き受ける、覚悟を決めることでもあります。それは別の言葉で言いかえれば「大人になること」そのものですよね。女子は、恋につけ、仕事につけ、人生につけ、なかなか「こう!」と決めるのが苦手な人も多いかもしれませんが、迷っているばかり、決断を誰かにゆだねているばかりでは、自分の人生を生きているとはいえないのかもしれません。
さてラストに、エイリーシュを巡る二人のイケメンを演じる、映画界が注目する二人の俳優をご紹介しておきましょう。
まずはこちら、イタリア系マメ男、トニーを演じるのエモリー・コーエン。『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』で演じた、警官から議員になったブラッドリー・クーパーの息子AJ役が一番有名かもしれませんが、次回作『ウォー・マシーン』はブラッド・ピットのプロデュース作品なので、注目を集めることは必至です。てかこの映画でエモリー・コーエンを好きにならない女子は、絶対にいません!断言!
そしてそんな好感度男の向こうを張るのが、アイルランドのお坊ちゃま、ジム。演じるのは、『スターウォーズ フォースの覚醒』『不屈の男 アンブロークン』『レヴェナント 蘇りし者』『エクスマキナ』と、話題作に次々と出演(それもイケメンから悪役からいろんな役で)のドーナル・グリーソン。
この人、ホントにどんな役でもできる素晴らしい俳優さんなのですが、彼の作品で誰もが知っている作品といえば『ハリー・ポッター』シリーズに違いありません。なんとロン・ウィーズリーの兄ちゃんです。
50年代のすごくかわいいファッションも注目の作品です。ぜひ女子グループで見にって、終わった後は、エイリーシュはあっちを選ぶべきだった!とかなんとか、お茶しながら盛り上がってくださいませ!
『ブルックリン』公開中
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