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中島裕翔『HOPE 期待ゼロの新入社員』の元ネタは…… ジャニーズ主演で韓ドラがリメイクされる理由

渥美志保映画ライター

今週末からスタートする中島裕翔主演『HOPE 期待ゼロの新入社員』。プロの棋士を目指して夢に破れた主人公が、知人の紹介で総合商社の最終試験であるインターンとして働き始める……というお話。この原作、実は韓国で2014年に放送され大ヒットしたドラマ『ミセン 未生』のリメイク作品です。今月の【韓国早耳情報】は、あんまり早耳じゃありませんが(^^;)、韓ドラリメイクの主演がジャニーズだらけなのはどうしてか、そして『ミセン 未生』の魅力についてをお送りしますー。

●実はジャニーズ主演×韓国ドラマの組み合わせが最多!

たとえば『のだめカンタービレ』『ドラゴン桜』『白い巨塔』『女王の教室』『ハケンの品格』『家政婦のミタ』など、たくさんの日本のドラマが韓国でリメイクされています。ちなみに大ヒットした映画『私の頭の中の消しゴム』も、実は永作博美主演の日本のドラマ『Pure Soul~君が僕を忘れても』のリメイクです。

その一方で、増えつつあるのが韓国ドラマ・映画をリメイクした日本のドラマ。

これまで『ホテリアー』『魔王(大野智・生田斗真)』『マイ・ボス、マイ・ヒーロー(映画)(長瀬智也)』『猟奇的な彼女(草なぎ剛)』『イケメンですね(玉森裕太)』『ラスト・プレゼント(映画)(堂本剛)』『銭の戦争(草なぎ剛)』『マラソン(映画)(二宮和也)』などなど多くがリメイクされているのですが、『ホテリアー』(上戸彩主演)以外はすべてジャニーズ事務所所属のタレントが主演でリメイクされています。

●ジャニーズが韓国ドラマを選ぶ理由

“恋愛もの”のイメージが強い韓国ドラマですが、実のところ韓国ドラマの魅力は、笑いと涙、謎解き、サスペンス、家族愛などの「全部盛り」の面白さです。

例えば『魔王』であれば、恋愛要素はありながらも基本的には復讐もので、次々と人が殺されてゆくけれど理由がわからないサスペンスもあり、最終的には犯人と事件を追う刑事との過去の事件へと導かれてゆきます。

『猟奇的な彼女』は基本的に恋愛ものですが、トロンとした甘さはほとんどなく、キレイだけど乱暴な彼女に、友達以上恋人未満の男の子がぶんぶん振り回されるという、爆笑につぐ爆笑のドラマですが、そんな彼女に隠された悲しい過去が徐々に明らかになり、ラストには誰もが号泣してしまいます。

とにかく観客を楽しませるものであれば何でも取り入れるのが韓国流で、製作側はドラマ放送中のネットのコメント(これが最も厳しい)なども逐一チェックしながら軌道修正しつつ製作しています。リメイクされた作品は、そんな中でも大ヒットしたものばかり。さらに韓国ドラマのヒーローは、最終的には絶対に女性(母親、恋人、もしくは愛)を裏切らないキャラクターばかりですから、同じイメージを売っているジャニーズ事務所がこれに目をつけないわけがありません。

●ところが『HERO 期待ゼロの新入社員』の元ネタ『ミセン 未生』は…

ところが、こうした「全部盛り」をせずに大ヒットしたのが『ミセン 未生』です。大企業の新人インターンたちの日常を描いた『未生 ミセン』は、「記憶喪失」も「出生の秘密」も「復讐」も「身分違い」もなく、そもそも「恋愛もの」ですらありません。それなのに本当に胸がきゅーっとなる場面の連続です。ということで、まずはこちらをどうぞ。

貧しい母子家庭で育ち、囲碁の世界しかしらない主人公チャン・グレは、それこそコピーの取り方すら知らないまま大企業のインターン(最終選考)になったために、社内のエリートたちや熾烈な戦いを勝ち抜いた同期の連中から「なんでこんな奴が」といじめられ蔑まれるわけですが、そうしたことに決して腐らず、「僕はもうほかに行く場所がないから」と心の中で呟きながら、もくもくと努力します。演じるアイドルグループZ:EAのイム・シワンが、小柄で色白、女の子のように可愛いイケメンというのも手伝い、その姿に“かわいそう萌え”しない女子はまずいません。

主人公チャン・グレを演じるイム・シワン(『太陽を抱く月』など)。この後、ソン・ガンホ共演の『弁護人』で映画デビュー。
主人公チャン・グレを演じるイム・シワン(『太陽を抱く月』など)。この後、ソン・ガンホ共演の『弁護人』で映画デビュー。

●働くことの喜びと悲哀を描き、幅広い年齢層に訴えたドラマ

もちろんそれだけでは、大ヒットと呼べるほど広い視聴者は引き付けられません。

ドラマのキモは、そんな主人公グレが小さな進歩と小さな挫折を繰り返しながら成長し、やがて配属された(実ははみ出し者の集まりである)営業3課の一員として認められてゆくことと、そこにあるサラリーマンの悲哀と喜びを描いていたからです。

その過程には上司であるオ・サンシク課長(のちに次長)の存在が多く関わってきます。

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彼はある事件から派閥を外れた“冷や飯食い”になった人物なのですが、口が悪くて照れ屋だから褒めるのは苦手だけれど人間味があり、ダメダメなグレを叱咤しながらもその能力(そもそも棋士ですから冷静さと記憶力と勝負勘はピカイチ)を認め、何かがあれば身を挺してでも部下を守ってくれる、「こんな上司がいたらいいのに」と思える人物であり、だからこそサラリーマンの悲哀を一身に感じさせる、実はこの作品の陰の主役ともいえる人物です。

『HOPE 期待ゼロの新入社員』では遠藤憲一さんが演じるようで、今からすごーく楽しみです。

というわけで『HOPE 期待ゼロの新入社員』と併せて、『未生 ミセン』も是非是非ご覧くださいませ。

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映画ライター

TVドラマ脚本家を経てライターへ。映画、ドラマ、書籍を中心にカルチャー、社会全般のインタビュー、ライティング、コラムなどを手がける。mi-molle、ELLE Japon、Ginger、コスモポリタン日本版、現代ビジネス、デイリー新潮、女性の広場など、紙媒体、web媒体に幅広く執筆。特に韓国の映画、ドラマに多く取材し、釜山国際映画祭には20年以上足を運ぶ。韓国ドラマのポッドキャスト『ハマる韓ドラ』、著書に『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』。お仕事の依頼は、フェイスブックまでご連絡下さい。

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