福島市街地の半分は居住不適。報道されぬ不思議

団藤保晴 | ネットジャーナリスト、元新聞記者

福島市の市街地の半ばが放射線障害防止法に照らせば居住不適との測定結果が出たのに、全国的に報道されません。住民を避難させたくない自治体とマスメディアが結託している暗闇状態がまだ続くのでしょうか。福島市が3月に市内全域で実施した測定結果をまとめた放射線量マップには全部で783ある測定区画の内、398区画で0.75マイクロシーベルト毎時を超えていると明記されています。これは宿泊はもちろん飲食も禁じられる「放射線管理区域」の設定基準3カ月1.3ミリシーベルトを、2割以上上回ります。

唯一見つけられる記事は福島民友新聞の「毎時1マイクロシーベルト未満95% 福島市放射線量マップ」です。「市内全域の平均測定値は毎時0.56マイクロシーベルトと昨年3月のマップの平均値より0.21マイクロシーベルト下がり、除染計画目標値の毎時1マイクロシーベルト未満の区域が全体の95%を占めた」と、行政サイドの除染計画に沿った目線で書かれています。

画像

しかし、上に掲げたマップと測定データを冷静に見れば測定値が下がったと喜べる状況ではありません。500メートル四方731区画、千メートル四方52区画で、各3地点を選定し5回の測定を平均しています。たまたま得られた数字ではない、重い測定値です。黄緑色区画以上、毎時1マイクロシーベルト以上なら年間で8ミリシーベルトを超し放射線防護上、もう一般人ではなく放射線業務従事者に近くなるのに220区画と全体の28%もあります。福島民友が「5%」と報じている意味が理解出来ません。ひょっとすると分母にする面積に測定対象外の山野まで含めているのかもしれません。そうならば「ミスリードの上塗り」です。

福島原発事故発生以来、福島県内の自治体が住民に自主避難をさせまいと動いた点は周知の事実です。逆に「全町避難だから異議が言える異常な線量基準」で指摘したように、避難した双葉町などは年間5ミリシーベルト以上の土地に住民を帰還させる政府方針に抵抗しています。ソ連チェルノブイリ事故でなら希望者には移住の権利が認められた汚染水準だからです。

法律に定めがある放射線管理区域以上の汚染ならば、自主的な避難が認められて当然です。《「自主的避難等対象区域外からの避難者への賠償実現会見」4/17福田弁護士・避難者(内容書き出し)》が和解によって初めて実現した自主避難者の権利認定について伝えています。

この中に次のような発言があります。《実際に私が、最後に家を出る時に測った玄関付近の線量は、0.68マイクロシーベルト/時でした。で、私が一番「これはもうここにはいられない」と思った決定的なものは、2階に子どもの部屋があるんですけれども、その子どもの部屋の2段ベットの上の段がものすごい線量だったんですね。それはもう、しばらく子どもたちをそこに寝かして生活をしてしまってから、ふと気が付いて調べようと思って、普段は通常自分が生活をする状態で調べていたんですけれども、ふと思って2段ベットの上の段に上って天井付近を調べてみたら、本当にものすごい線量でした。あの時多分最初に測った時は0.7~8ぐらい》

このケースが放射線管理区域基準を超える汚染です。福島ではこのような当たり前のお母さんの感覚を口にできない雰囲気があると聞きます。福島市の放射線量マップの現実を前に、マスメディアも初心に立ち返って現状の報道で本当に善しとするのか、考えてみるべきです。福島では「大本営発表報道」がまだ続いていると批判されても仕方がないでしょう。

【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー

団藤保晴

ネットジャーナリスト、元新聞記者

玉石混淆のネットから玉を見つける水先案内人――新聞記者をしていた1997年、インターネット隆盛期に「INTERNET WATCH」で連載コラム「インターネットで読み解く!」を始め、ネットジャーナリストとして活動。科学技術、政治、経済、社会、文化など幅広い取材経験をベースに、ネット上の知的資源を検索の駆使で結び合わせ、社会的意味を明かします。膨大化するネットと劣勢にあるメディアの相克もテーマです。

団藤保晴の最近の記事

有識者・専門家がニュースに切り込む

Yahoo!ニュース個人編集部ピックアップ

個人アクセスランキング(国内)

  1. 1

    部活動で日焼け止め禁止?! 積極的な使用への転換を!

  2. 2

    台風13号発生 26年ぶりのハイペース 日本接近の可能性も

  3. 3

    山本太郎vs安倍晋三ー暴かれたイラク戦争加担、米軍による無差別虐殺、戦争犯罪支える対米追従・安保法制

  4. 4

    「いじめられる方にも責任がある」という、長谷川豊さんの「自殺」に関する見解に激しい違和感

  5. 5

    「安倍さんは戦争をやりたがっている」というのは間違いだ!

  6. 6

    朝日新聞「安保法制反対キャンペーン」は、自身の由緒ある歴史と伝統を無視した愚挙

  7. 7

    「みなし労働時間制」と言われたら、黙るしかないのか

  8. 8

    男は見た目が9割。『ナイナイのお見合い大作戦!』が突き付ける残酷な現実

  9. 9

    Windows 10登場で国内ネットバンキングが色々と大変そうです

  10. 10

    安倍晋三首相「中国名指しし安保法案の必要性強調」←言うんかーい

  1. 11

    「戦後レジームからの脱却」とはなにか

  2. 12

    辻元清美議員、醜いぞ。

  3. 13

    自衛官の法的地位との関係から『安全保障法案』の廃案を求める緊急アピール(日本労働弁護団)

  4. 14

    「永遠の0」と「我が内なるヤスクニ」:戦争の心理学

  5. 15

    採用時期が分散した今年、「オワハラ」にどう対処するか

  6. 16

    生活保護利用者が休日に急病になるということ

  7. 17

    地味な強みで一点突破! 山口真由『努力が99%報われる25のヒント』が教える「天才でない人の成功法」

  8. 18

    【連載・第1回】震災報道で気づいた「放置される性虐待」~若年女性の“見えない傷”と「レジリエンス」

  9. 19

    YouTuberが儲からなくて大変らしいですね

  10. 20

    有料アベノミクスの前に日本の景気は回復していた

個人の書き手も有料ニュースを配信中