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海上自衛隊輸送艦衝突事故、まずは冷静な報道を

dragonerWebライター(石動竜仁)
輸送艦”おおすみ”同型艦の”しもきた”(海上自衛隊写真ギャラリーより)

本日の午前8時頃、広島県の阿多田島沖で海上自衛隊の輸送艦”おおすみ”と釣り船が衝突し、釣り船は沈没、釣り客2名が心肺停止の状態で病院に搬送されたと報道されています。

15日午前8時ごろ、広島県大竹市の阿多田島沖の瀬戸内海で、海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」(艦長・田中久行2佐)と釣り船が衝突した。船は沈没し、客ら4人全員が救助されたが、うち2人は心肺停止状態という。

出典:時事通信:自衛艦と衝突、釣り船沈没=客ら2人心肺停止―「おおすみ」定期修理で航行・広島沖

15日午前8時ごろ、広島県大竹市の阿多田島(あたたじま)東側の瀬戸内海で、海上自衛隊呉基地(広島県呉市)所属の輸送艦「おおすみ」(艦長・田中久行2等海佐)から「釣り船を避けようとしたところ釣り船が転覆し、乗組員を救助中」と、第6管区海上保安本部(広島市)に連絡が入った。防衛省はおおすみと釣り船が衝突したと発表した。広島海上保安部によると、釣り船の船長1人と釣り客3人は付近にいた漁船やおおすみの搭載艇に救助されたが、うち2人が心肺停止状態で、山口県岩国市内の病院に搬送された。

出典:<海自輸送艦>釣り船と衝突 客2人が心肺停止 広島県沖

治療中の釣り客が快方に向かう事を願うと共に、事故の原因究明をしっかり行って頂きたいと思います。

事故発生から間もないので、この事故に対するマスコミの報道姿勢はまだ定まっていないように見えます。しかし、過去に発生した自衛隊の艦船と民間船舶の衝突事故において、マスコミの報道姿勢は一貫して自衛隊に否定的でした。

記憶に新しい2008年のイージス艦”あたご”と漁船の衝突事故では、事故発生の当初から、自衛隊を非難する報道ばかりだった事は皆様も承知の事と思います。しかし、裁判では被告となった自衛官の無罪が証明され、昨年の6月には無罪判決が確定したという報道は、自衛隊バッシングの報道と比べ、あまりにあっさりしたものでした。この事件が自衛隊に責任が無かった事を知っている方は、事故を知っている方と比べて少ないかもしれません。公判の過程では、検察庁が検察側証人である漁船僚船乗組員の証言を捏造した上、海上保安庁も証拠となる漁船乗組員が作成したレーダー図を廃棄・隠蔽していた事も明らかになっており、検察は極めて乏しい証拠と信頼性にかける証言のみで自衛官を訴追しておりました。

”あたご”の衝突事故の無罪判決については、被告側弁護人を務めた田中崇公弁護士がツイッターで詳しく発言しており、そのまとめが下記のリンクで公開されていますので、是非ご覧頂ければと思います。

イージス艦「あたご」事件弁護人田中崇公先生のつぶやき。

さて、今回の衝突事故については、まだ発生間も無い事もあり、まだマスコミ各社の報道姿勢が定まっていないようです。しかし、過去の自衛隊の事故においては、事故の全容が明らかになっていない時点で盛大な自衛隊バッシングを行う反面、無罪判決は控えめに報道する事が行われてきました。これは他の事件報道にも言えますが、罪が確定していない状況で、マスコミが容疑者・被告を殊更にバッシングする必要はあるのでしょうか。

海難審判は専門的でその理解は難しく、事故当時の再現などの全容解明には時間がかかるものです。マスコミ各社におかれては、今回の事故について、過去の報道も鑑みて冷静な報道を心がけて欲しいものです。

※この記事は、dragoner.ねっと「海上自衛隊輸送艦衝突事故、まずは冷静な報道を」のYahoo!ニュース向け転載になります。

※訂正:記事の中で、あたご乗員の弁護を担当された田中崇公弁護士の肩書が抜けておりました。訂正の上、お詫び致します。

Webライター(石動竜仁)

dragoner、あるいは石動竜仁と名乗る。新旧の防衛・軍事ネタを中心に、ネットやサブカルチャーといった分野でも記事を執筆中。最近は自然問題にも興味を持ち、見習い猟師中。

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