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嫌韓系まとめブログの6割以上が、韓国系ブログサービスを利用し広告収入を得ていた

dragonerWebライター(石動竜仁)
ネットで集まった嫌韓デモだが……(撮影:あばさー)

以前からギクシャクしていた日韓関係ですが、最近の朝日新聞の慰安婦強制連行証言の検証報道により、より混沌とした情勢になっていますね。

慰安婦問題と言えば、先月もこんな報道がありました。国連人権規約委員会による、日本政府への勧告です。

【ジュネーブ時事】拷問禁止、表現の自由などに関する国連人権規約委員会は24日、日本政府に対し、ヘイトスピーチ(憎悪表現)など、人種や国籍差別を助長する街宣活動を禁じ、犯罪者を処罰するよう勧告した。また、旧日本軍の従軍慰安婦問題についても、「国家責任」を認めるよう明記した。

出典:時事通信:ヘイトスピーチ処罰を=慰安婦問題、国家責任認めよ-国連対日勧告

慰安婦問題と並んで、ヘイトスピーチなどの差別を助長する街宣活動の禁止を日本政府に求めています。ここでも念頭にあるのが、韓国・中国に対するものです。レイバーネットの報告に取り上げられた経緯が書かれていますので、ちょっと見てみましょう。

ヘイトスピーチについて、イスラエルのシャニイ委員が取り上げた。「韓国人を殺せ」などと叫ぶデモが全国で350件も報告され、広範に起きていることが委員会の場でも確認された。

出典:レイバーネット:●国連自由権規約委員会は日本政府に何を求めたか

シャニイ委員が指摘するように、近年の嫌韓国・中国のデモ活動が行われているのは事実です。今年1月に公安調査庁が出した「内外情勢の回顧と展望」においても、右派グループのヘイトスピーチについて触れています。

排外主義的主張を掲げ,インターネットで活動参加を呼び掛ける右派系グループは,領土・歴史認識問題など韓国や中国との諸問題を捉え,在日公館に対する抗議活動を実施したほか,「国交断絶」を訴える集会やデモ行進を行った。

特に,「反韓国」を掲げた活動では,東京や大阪のいわゆる「コリアンタウン」周辺で「韓国人を日本海にたたき込め」などと訴え,デモ行進を繰り返し実施した。こうした中,同グループの訴えを「ヘイトスピーチ」(憎悪表現)と非難する勢力(「対抗勢力」,下記のコラム参照)との間で小競り合いが頻発し,暴行事件も発生した(5〜6月,東京)

出典:公安調査庁:内外情勢の回顧と展望(平成26年1月)(PDF)

嫌韓デモ(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
嫌韓デモ(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)

これら排外主義を掲げる右派グループについて、公安調査庁はインターネットで参加呼びかけが行われていると指摘しています。確かに、近年の嫌韓・嫌中ムードの高まりは、ネットの存在抜きには語れないでしょう。「韓国」、「中国」といった単語で検索をかけると、ネガティブな予測検索結果やサイトばかりが出てきます。ここで大きな役割を果たしているのが、いわゆる「まとめブログ」です。

まとめブログについては、ご存知の方も多いと思います。メディアの報道等を引用し、それについての反応を2ちゃんねる等のネット上から転載してまとめているブログの事です。まとめブログは著作権無視、恣意的な編集、扇動的な内容等、数多くの問題が指摘されていますが、有名どころになると月間アクセス数(PV)が1億を超えており、そのPVから莫大な広告収入を得ている運営者もいると言われています。

このように莫大なPVを持つまとめサイトの影響力は、少なからぬ物があると見るべきでしょう。そして、大手まとめブログでも、嫌韓ネタはよく出てきます。韓国のどーしようもないネタは、読者の溜飲を下げるコンテンツとして価値が認められているようで、嫌韓専門を謳うまとめブログもあるくらいです。海外から見て、ヘイトスピーチが隆盛していると思われても仕方ないかもしれません。

では、扇動的な内容で人を集めるまとめブログで利益を得ている人は誰でしょうか。もちろん、第一はブログ運営者がいますが、ブログサービスを提供しているサービスプロバイダやポータルサイト運営企業にも広告収入等が入ります。企業側がブログ運営者に対し、特別なアフィリエイトプログラムを提供する事もあるなど、両者は極めて密接な関係にあると言えるでしょう。言わば商業ヘイトスピーチの共犯です。

では、嫌韓ブログはどうでしょうか。ブログ運営者のみならず、企業も嫌韓・ヘイトスピーチで儲けている事になります。そこで、嫌韓ポータルサイト「嫌韓ちゃんねる」に登録されている66の嫌韓ブログを調査し、まとめサイト形式で扇動的な内容の44のブログについて、どの企業がブログサービスを提供しているのかを調べてみました。その結果が下の円グラフです。

嫌韓ブログのブログサービス
嫌韓ブログのブログサービス

嫌韓ブログ44のうち、3分の2近い28がlivedoorブログを利用していました。ランキング変動と入れ替わりがあるため、現在のランキング内にいるブログと若干異なりますが、あっても大勢にほぼ影響はありません。

livedoorと言えば、堀江貴文氏が経営していた企業だと記憶している方も多いと思います。しかし、堀江氏の逮捕後にlivedoorは解体が進み、現在は企業としてのlivedoorは消滅しています。現在のlivedoorはブランドとして各種サービスで使われていますが、そのブランドを保持しているのは、あのLINEです。そう、韓国のインターネットサービス会社ネイバーの日本法人のLINEです。

韓国に対するヘイトスピーチを扇動するまとめブログの相当数が、韓国系企業のサービス上で嫌韓を煽り、その利益をブログ運営者と韓国系企業で分け合うという、大変グロテスクな光景が広がっています。嫌韓を煽る活動を韓国企業が支援しているんですから、煽っておいて世話になるブログ運営者にも、LINEにも恥という概念が存在しないようです。

ところが、やっぱり自覚しているブログ運営者もいるようで、韓国資本で嫌韓ブログやっている事を目立たないようにしたいブログ運営者もいるようです。先ほどの44の嫌韓ブログの中には、URLを独自ドメインやlivedoor以外のドメインを使う事で、URLに”livedoor”が含まれないようにしているブログも多く存在していました。

嫌韓ブログのlivedoorドメインの使用率
嫌韓ブログのlivedoorドメインの使用率

全体の4分の3がlivedoorだと一見して判らないURLを使っていました。HTMLソースを見たりすればlivedoorだと分かるんですが、そこまでする人もあまりいないでしょう。

何故、韓国系企業が自社サービスで自国へのヘイトスピーチ・誹謗中傷を行わせるばかりか、それにより利益まで得ているのでしょうか。もちろん、利益という面も大きいと思いますが、気になるネット記事がありました。

実は、2009年以降、韓国政府内では大統領直属の「国家ブランド委員会」という組織を設立して、例えば地図を「日本海」ではなく「東海」と世界地図を表記するようにロビイングするなどの、国際社会での韓国の相対的な地位向上を目指している。そしてアプリに気をとられないで、LINE社の日本国内での煽動的なサイト運営は結果として「韓国を侮辱する下品な日本人」のイメージを作り出している。そして韓国に対する日本のイメージを相対的におとしめるという意味では、韓国政府の意に沿ったものとなっている。

出典:エコーニュース:通話アプリのLINE社 HPにない「ゴースト韓国系役員」が登記簿で発覚 親会社ネイバーのCEOは韓国政府・元司法官僚

LINEの親会社である韓国ネイバーの第2位株主は韓国政府系ファンドで、CEOは元地方裁判所判事。国家保安法により反国家活動が厳しく制限されている韓国では「親日的」なサイトですらアクセス遮断対象となるのに、韓国系企業で行われる韓国への侮辱は野放しという不自然さについて上記記事では指摘しています。その上で、ネット上のヘイトスピーチが日本の国際的地位を毀損している事実と、韓国系企業がネット上のヘイトスピーチを助長している活動は、韓国政府の意に沿った形になっている事を示唆しています。

もちろん、これは傍証からの憶測に過ぎず、確固たるものではありません。しかし、結果的にヘイトスピーチが日本の国際的地位を毀損し、その助長に韓国系企業が関わっているという構図は確かにあります。

しかしながら、ここで韓国けしからん、みたいな結論に導く事に意味は無いと思います。ヘイトスピーチを行っているのは紛れも無く日本人で、それは煽られたとしても自発的な行動である事に変わりありません。ここで韓国の意図通りに踊らされたと主張しても、韓国の掌でいいように踊らされたと泣き言を喚いているようなもので、実に情けなくありませんか? 理由がなんであれ、自分の行動は自分しか責任を持てません。

そして、そのLINEについても、先月16日に東京証券取引所への上場を申請し、今年秋には上場すると言われています。しかし、上場企業になろうという会社が、こんな扇動的で法的にも危ういサービスばかり展開して、PV荒稼ぎして儲けてますと有価証券報告書に書くんでしょうか。

嫌韓ブログ運営者も、LINEも、自分らがしている事を考えて見た方がいいのでは。

※この記事は、ブログdragoner.ねっと「嫌韓系まとめブログの6割以上が、韓国系ブログサービスを利用し広告収入を得ていた件」のYahoo!ニュース向け配信版です。ブログ版ではより詳細な一覧がスプレッドシートで見れます。

Webライター(石動竜仁)

dragoner、あるいは石動竜仁と名乗る。新旧の防衛・軍事ネタを中心に、ネットやサブカルチャーといった分野でも記事を執筆中。最近は自然問題にも興味を持ち、見習い猟師中。

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