「国のために戦う」人の割合、日本が最低? データが意味するもの

行進する自衛隊員(筆者撮影)

「自国のために戦う」人の割合、日本が世界最低?

先日の報道によれば、「自国のために戦う意志」を問う国際調査にて、日本では「はい」と答えた人の割合が11%と、64カ国中で最も低い割合だったそうです。

【ジュネーブ共同】各国の世論調査機関が加盟する「WIN―ギャラップ・インターナショナル」(本部スイス・チューリヒ)は18日、「自国のために戦う意思」があるかどうかについて、64カ国・地域で実施した世論調査の結果を発表、日本が11%で最も低かった。

出典:「国のため戦う」日本最低 パキスタンや越が高率

日本と同様に「はい」と答えた人の割合が低い国は、オランダで15%、ドイツで18%だそうです。日本もオランダもドイツも先進国という点で共通してますが、逆に情勢の不安定な国では「はい」の回答が高い割合を示したそうです。

この調査結果を受けて、ネット上では色々な意見が溢れています。「日本が右傾化してるって嘘じゃん」から「日本の平和教育の害」を唱える意見まで左右様々です。でも、それって正しいんでしょうか?

元データを見てみよう

この報道について、ネタ元であるWIN/Gallup Internationalの調査結果を調べてみたところ、なかなか面白い事が見えてきました。

元の調査は64カ国を対象にしていますが、ここでは分かりやすくするため、米英仏ロ中の5大国に加えて、日本とドイツ、韓国を加えた8カ国で比較してみましょう。まず、「国のために戦う意思があるか」という設問に、「はい」と答えた人の割合が8カ国の中で日本が一番低いのは既報の通りですね。8カ国では下の表の通りです。日本が最も低く、ドイツ、イギリスが続きます。

「国のために戦う意思があるか」国別回答
「国のために戦う意思があるか」国別回答

ところがちょっと待って下さい。設問への回答は「いいえ」と「わからない」もあります。はっきりと、明示的に、「国のために戦う意思はありません」とする回答も集計されています。この割合で順位付けするとどうでしょうか。

「国のために戦う意思があるか」国別回答(「ない」降順)
「国のために戦う意思があるか」国別回答(「ない」降順)

「国のために戦う意思が無い」と明示的に答えた人の割合が多いのは、トップがドイツの62%。次いでイギリスの51%、韓国の50%という順になっています。日本は43%で8カ国中5位となっており、中位ポジションです。そして、日本の特徴はもう一つ。「わからない」が47%で8カ国中最高と、態度を決めていない人が半分近くいるのです。

千差万別の「戦争」

「国のために戦う」と言っても、その内容は千差万別です。突然の武力侵攻から、聞いたことも無い遥か遠くの国で戦わされるものまで、全て同じ「戦争」です。理不尽な武力侵攻で親兄弟を殺されれば、温和な人も銃を手に取り戦うかもしれないし、逆に地球の裏側で戦わさせられるのは、ほとんどの人は嫌がるでしょう。

設問を調べると、英文では”If there were a war that involved (調査対象国), would you be willing to fight for your country?”となっていました。日本語に訳すと「国が戦争に巻き込まれたら、貴方は国のために戦いますか?」というところでしょうか。この各国語訳が設問になっていたようですが、設問が提示する「戦争」イメージが漠然としています。こんな戦争イメージでは、「わからない」と答える人が多いのは当然の事ではないでしょうか。態度を明らかにしなかった47%の日本人は、有事の際に「戦争」の「中身」を見てから判断することになるでしょう。

もっとも、日本の自衛隊は完全志願制の常備軍であり、仮に戦争を行うにしても、そのリソースの中で行う事を前提としています。「戦う国民」がいるとしても、それがどれだけ必要になるかは、実際に戦争になってみないと分かりません。

まず「戦う」のは自衛隊員
まず「戦う」のは自衛隊員

日本より深刻なのは?

むしろ、今回の調査で深刻なのは「国のために戦う意思は無い」と表明した人が多く、かつ周辺情勢が不安定な国でしょう。敢えて言えば、北朝鮮と対峙している韓国です。国際法上、朝鮮戦争は休戦中で準戦時下と言える状況に韓国は置かれており、2015年現在も徴兵制が存在する数少ない先進国です。その国民の半数が「戦わない」と宣言するのは、日本以上に問題ではないでしょうか。

報道では「国のために戦う」という答えばかり注目されてましたが、「国のために戦わない」、「わからない」といった他の答えに目を向けるだけでも、だいぶ違った様相が見えてきましたね。この結果から、皆さんはどう考えますか?

※「国のために戦うか」という設問に「はい」と答えた日本人は11%と報じられていますが、出典元のWIN/Gallup Internationalの調査結果は10%となっています。出典元を尊重し、表中では10%とさせて頂きました。