Yahoo!ニュース

81歳の鉄流氏が日中戦争時代の毛沢東を批判――懲役刑を受けている獄中老人

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

中国の作家・鉄流氏(81歳)は、投獄される前に「抗日戦争時の真相を明らかにするときが来た」というタイトルで、「日中戦争時代の毛沢東が日本軍と戦わなかった」事実をネットで公開している。その概略をご紹介する。

11月30日付の本コラム「中国民主活動家締めつけに見る習近平の思惑」の最後に、81歳になって懲役刑を言い渡されている鉄流氏が、「日中戦争(抗日戦争)時代に中共は何をやっていたのか」に関する事実を指摘していると書き、「これに関しては次回に回そう」とお約束した。

しかしIMFが人民元に関する重大な決定をしたため、そちらを優先して「次回」というお約束を破ってしまったので、同日に約束の記事を公開したい。

以下は、鉄流氏が2013年7月19日に「博訊」(boxun)というアメリカの中文ウェブサイトに投稿した論考である。原文をそのまま全て翻訳するのは長文になるので、要点のみを略記したい。鉄流氏が書いた内容が正しいか否かは検証しない。彼が書いた内容のみを以下に示す。

―――――――――――――――◆――――――――――――――

最近中国では、抗日戦争時代の歴史の真相に関して、現状を見つめようとする動きが起きている。

これまでは抗日戦争は毛沢東が指導したもので、第一線で日本軍と勇猛に戦ったのは中共軍であると教え込まれていた。抗日戦争時、(国民党軍を率いる)蒋介石は四川省の峩眉山(がびさん)に隠れて下りて来ず、抗日戦争に中共が勝利したら、初めて下山してきておいしい桃を食べようとし、アメリカ帝国主義の力を借りて内戦を起こしたのだと教えられたものだ。

私も若かったから、その宣伝にすっかり洗脳されて、一般人民と同じようにそう信じて疑わなかった。

しかし、抗日戦争の真相を明かそうという動きが出るにしたがって、そのような中共の宣伝部の物語はまったくの虚構で、日本軍と戦わなかったのは国民党軍ではなく、中共軍であることが明らかになってきた。

詳細な資料によれば、1931年から1945年までの間に、中国と日本は22回の大型会戦を交え、1,117回の中型の戦役を戦い、28,931回の小型の戦いを行なっているが、国民党軍の犠牲者は陸軍が3,211,419人で空軍が4,321人、海軍はほとんど全滅したに等しい。

一方、中共軍はその間、なにをしていただろうか?

地雷線や遊撃戦などはやっているが、いったいどこに決定的な大型会戦をやったことがあるのだろう?

1935年に紅軍(中共軍)が陝北(延安)にたどり着いた時、1万にも満たない兵士しか残っていなかったというのに、1945年8月に抗日戦争が終わった時、中共軍は百万の大軍に成長していた。(抗日戦争の犠牲になって)減ったのではなく、増えたのだ。

国民党軍は日本軍と戦って、上将21人、中将73人、少将167人が戦死したが、中共軍で戦死した将軍は何人いるだろうか?

2人いるが、戦った相手は日本軍ではなく、国民党軍だ。抗日戦争中に(国共合作をしながら)中共軍は国民党軍と戦って戦死した。

毛沢東は抗日戦争において「兵力の10%だけ抗日戦争に使い、20%は国民政府(蒋介石)に妥協し、70%は発展すること(中共軍が強大になること)に使え」と命令した。抗日戦争が終わってから、おいしい桃を食べに来たのは蒋介石ではなく、毛沢東だ。

毛沢東は抗日戦争中、以下のような指示を出している。

1. 一部の者は日本軍が占領する地域は少なければ少ないほどいいと考えているようだが、日本により多くの地域を占領させてこそ愛国だ。さもなかったら、蒋介石の国を愛することになってしまう。中国には「蒋・日・我(毛)」という三国志がいるのだ。

2. 冷静になれ!抗日戦争の前線に行って抗日英雄になるな!日本軍との正面衝突を避けよ!蒋介石が(国共合戦のために)中共軍に前線に行って戦えという命令を出して来たら、色々な口実を探して先延ばしして実行するな。日本軍が大々的に国民党軍を殺してこそ、われわれ(中共軍)は抗日戦争の成果を座して待つことができ、国民党から政権を奪うことができるのだ。

3. 我が党の武装力を強大化させるために、抗日戦争中は体力を温存させて、抗日戦争後に全国の政権を奪還しなければならないのである。

毛沢東はまた建国後に以下のようなことを言っている:

私は日本の友人たちと話をしたことがある。彼らは「日本の皇軍が中国を侵略して、非常に申し訳ない」と言った。私は彼らに「とんでもない!あなたがた皇軍が中国の大半を占領しなかったら、中国人民は団結して蒋介石に立ち向かうことができなかった。そうなれば、中国共産党は政権を奪取することはできなかった。だから日本の皇軍は中国共産党人にとっては良い教師であり、大恩人だ。救いの神だということもできる」と言ってやったんだ。

現在、中共でさえ認めている日中戦争時における厳然たる事実なのに、一部の左傾文人たちが歴史を改ざんし捏造しようとしている。映画やドラマもそうだ。お前たちには良識はあるのか?人格はどこにいったのだ?

抗日戦争の真相を明らかにしない、もっとも大きな弊害がどこにあるかを指摘しよう。

執政党がいつまでも大嘘をつきながら国を統治しているということは、その党には嘘で固めた統治能力しかないからだ。

この嘘をつき通すとすれば、それは国家を統治する党ではなく、ゴロツキか卑しい下品な奴に成り下がったということになる。

中国にはいま、なぜ信仰がないと思っているのか?

執政党である中共が嘘をつき通している中で、国人は信仰を持つことができるだろうか?

皇帝が新しい衣に着替えたところで、いかなる役にも立たない。

歴史の真相を見つめてこそ、国人は新しい衣を着た皇帝を許すことができるのだ。

以上である。

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

遠藤誉の最近の記事