Yahoo!ニュース

独立の前に副業から 少子高齢化社会を充実して生きるために

遠藤司皇學館大学特別招聘教授 SPEC&Company パートナー
(写真:アフロ)

 ここ数日の間、筆者は色々な記事を書いてきた。

 実はこれらはすべてリンクしている。リンクさせるように書いてきたつもりである。すなわち、

(1) 年代を問わず

(2) 将来のために

(3) いかにお金を稼ぎ

(4) そして人生を充実させるか

 というテーマでものを書くことに努めてきた。

 ようするにこう言ってよければ、本当の意味での「一億総活躍社会」に向けてやらなければいけないことを書くことに努めてきたのである。

 わが国の経済上の問題のなかでとりわけ重要なのは、若者の問題と高齢者の問題であると思われる。いずれも先行きが不安である。将来に備えて貯金を蓄えておかなければならない。現状のところ得られる収入は限られている。いずれも与えられたパイのなかから、いかにやりくりしていくか、あるいは人によっては、いかに自分たちが多くを得るかということばかりを考えてしまっている。これらはある意味で「階級」間の対立と言うことができ、実際に各世代のうちにいがみ合いらしきものは頻繁にみられる。社会全体がそのような空気に包まれていると言ってもよいかもしれない。若者は「老害」を侮蔑する。高齢者は「若僧」を卑下する。

 しかしそのような世の中、そのような日本の中で生きていて、本当に楽しいだろうか。日々を充実して生きているといえるだろうか。

 その解決を、筆者は起業という手段に求めた。不安の中で生きるよりも、前向きに生きていたほうがずっと人生は充実する。そのような社会こそ、豊かな社会といえるだろう。

記事の要約

高齢者の起業はメリットだらけ:充実した毎日を過ごすための起業のすすめ

 高齢者こそ、起業にふさわしい。事実、60歳以上の起業家の割合は32.4%にも達する。定年後の起業である。高齢者の起業のよいところは、さほど成功しなくても食っていけること、年金というセーフティネットがあるため失敗リスクが少ないこと、そして何よりも健康で充実した毎日をずっと送ることができることである。不安はむしろ解消される。

 人は仕事を通して充実した毎日を送ることができる。とりわけ自分のやりたい仕事、生きがいを持って続けられる仕事を見出すことができれば、いつまでも自分らしくあることができる。心身ともに元気でいられる。メリットだらけである。

高齢化問題を解決するいちばん簡単な方法は「高齢者」をなくすこと

 65歳以上という年齢によって高齢者と呼ばれる人たちは、実際にはまだまだ元気に働ける。我が国の健康寿命は男女とも70歳を超えている。しかるに年齢が65歳とか70歳といったことは関係ない。まだまだ働ける人、優れた能力をもつ人を仕事の現場から追い出してしまうことに合理性はない。それは年齢による差別に他ならない。ゆえに第一に、ビジネスの場から「高齢者」という概念をなくしてしまわなければならない。

 弊害があるとすれば、若者を雇用できなくなることである。労働力が過剰になれば、企業は人件費を削るか、人を解雇するしかなくなる。割を食うのは若者である。ゆえに第二に、高齢者は起業することが若者よりも容易であり、かつメリットが大きいのだから、既存の企業から「高齢者」に外れて頂くことである。積極的に起業して頂きたい。可能であれば少しながら税金を収めて頂きたい。成功した暁には、年金受け取りを拒否して頂きたい。

 そうすれば社会保障費の問題はある程度解消できる。若者の将来への不安を軽減できる。

やっても無駄な少子化対策:経済成長、これ一本でいこう

最新の出生動向基本調査にみる、若者が子供をつくらない理由

 若者は結婚できなくなっている。結婚後の生活が不安だからである。安心して家庭を持つために、未婚女性の結婚相手に求める年収は400万円以上である。そして年収400万円以上の男性は少数派である。

 最もお金がかかるのは子育てであり、教育である。子供に「大学に行かせたい」からである。共働きをし、子育て、教育に捻出できるお金を稼がなければならない。そうでなければ結婚はできない。子供は二人以上産めない。

 現状、少子化は食い止められない。知識社会において、教育コストはこれから大きくなっていく。幼児教育(のみ)の無償化とか婚活支援は根本的解決にはならない。重要なのは、一人当たりの生産性を高めるための教育、知識を実践に活かす教育、イノベーションを推進するための教育である。国民一人あたりの生産性を高め、産業を生み出し、財政を支えなければならない。そうすれば、若者の不安も徐々に解消していくであろう。

時給いくらのアルバイトで本当に満足か:学生時代のよい経験、この夏の二つの事例

 やらなければならないことは、イノベーション教育、起業家教育である。これを筆者の所属する皇學館大学現代日本社会学部では強化していく。

 とはいえ最初は大層なことをやる必要はない。重要なのは問うことである。自分たちは何であるか、社会においていかなる価値を出していくことができるかを考えさせ、そしてやらせてみることである。ハードルをさほど高く設ける必要はない。いま乗り越えられる困難を乗り越えればよい。人はその積み重ねによって成長する。

 そしてできるならば、自分らしい価値を世に示す訓練を積むことである。自分がつくったもの、見出したものを用いて、誰かを喜ばせる経験を積まなければならない。人から感謝される経験を積まなければならない。一歩踏み出した先に待っている喜びを実感しなければならない。やみつきになるはずである。自分には価値がある。まだまだ伸びていく。もっと新しい価値を世に示し、たくさんの人を喜ばせることができる。そういった使命感をもつとき、人は成長を追い求めることができるようになる。不安ではなく、目的に目を向けることができるようになる。学生の可能性を信じ、日本に活力を与えなければいけない。

 はっきり言ってしまえば、やっていることはドラッカーの猿真似である。しかしそれを忠実にやっている。

独立の前に副業から

 ようするに、起業するといっても、最初は小さく始めることからスタートした方がよいのである。大きくなりそうであれば大きくすればよい。そのために工夫を重ねていけばよいのである。何も不安はない。むしろ一歩を踏み出さないことによって不安は増大していく。不安はそれを生み出すものに対処する手立てがないことによって増大していくからである。

 そうであれば重要なのは、いきなり人生をかけて始めないことである。不安を積極的に生み出す必要などない。すでに仕事がある人は、その仕事をしながら新しいことを始めればよい。副業である。まずは自分のやりたいことを始めてみて、それが軌道に乗ったときに、独立するかどうかを考えればよいのである。起業は高齢者にこそふさわしい。次に、起業は学生が行うのが望ましい。

 そして最後に、働いている20代、30代の方々には、小さく始めるために、副業から起業を始めてほしい。現在の不満の原因は、不安により、充実した日々を送れないことにあることを忘れてはならない。自分たちの将来のためにこそ、前を向き、自らの手で幸せを勝ち取らなければならないのである。

 次の記事「独立の前に副業から:年収にプラス100万円を稼ぐために最初にやること」では、副業のためのビジネス環境について現状をまとめるとともに、有効な手立てを考察していきたい。

皇學館大学特別招聘教授 SPEC&Company パートナー

1981年、山梨県生まれ。MITテクノロジーレビューのアンバサダー歴任。富士ゼロックス、ガートナー、皇學館大学准教授、経営コンサル会社の執行役員を経て、現在。複数の団体の理事や役員等を務めつつ、実践的な経営手法の開発に勤しむ。また、複数回に渡り政府機関等に政策提言を実施。主な専門は事業創造、経営思想。著書に『正統のドラッカー イノベーションと保守主義』『正統のドラッカー 古来の自由とマネジメント』『創造力はこうやって鍛える』『ビビリ改善ハンドブック』『「日本的経営」の誤解』など。同志社大学大学院法学研究科博士前期課程修了。

遠藤司の最近の記事