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ダメ出しばかりの女性と結婚したら、私のメンタルはどうなってしまうのか

遠藤司皇學館大学特別招聘教授 SPEC&Company パートナー
(ペイレスイメージズ/アフロ)

人には弱点がある。

たしかに弱点は、克服されたほうがいい。よって弱点を知ることは、基本的にはいいことだ。しかし、あれもしろ、これもしろと言われても、一度にたくさんのことはできない。簡単に弱点が克服されたら、万事がうまくいく。

例えば、いわゆる「嫌われる男ランキング」である。この手のランキングは数多あり、内容も千差万別だが、つねにその論調は、あなたは女性から嫌われる要素をもっているからダメなんですよ、というものだ。まとめには、「女性を幸せにしたいという気持ちが大切」とある。「幾つか当てはまるところがある方は今日から自己改革に専念してみましょう!」とのことだ。女性は私のありのままを受け入れてはくれないのである。まぁ嫌われ者なのだから、べつに幸せにしなくてもいいや、という気分になる。

ネット社会である。超情報社会である。

悲しいかな。この社会は、かつては知らなくて済んだことを、無理やり私たちに知らせてくる。ひとたびニュースアプリなどをスマホに入れれば、辛辣なタイトルのもと、過酷な現実を私たちに突きつけてくる。検索せずとも、向こうから勝手に。しかも毎日。いついかなるときでも。個人的にはFacebookが最悪なのだが、とりあえずそれはいい。

かつては新聞やテレビが、私たちの主な情報源だった。

新聞はいつも上段に構えていて、偉そうにしていた。おかげで偏向はあれども、ある程度は客観性があり、ゆえに多くは公益性のあることを私たちに伝えてくれた。そして、どの新聞を選び、どの記事を読むかは、私たち自身の求めるものを加味して選択することができた。

テレビは幅が広く、人が興味をもつすべてのこと、私たちの日常にあるすべてのことに食い込んで、メッセージを発信していた。昔のテレビは本当に、私たちの興味関心をよく喚起していた。しかしそれでも、私たちは選択することができた。観たくないものは手元にあるリモコンを使えば、観ないという選択を即座に下すことができた。

いずれも主導権は、伝えられる側にあった。

ネット社会は違う。単に情報だけでなく、私たちのあるべき日常や、人としてのよき生き方まで、あからさまに伝えてくる。こちらの意向は構わずに、である。伝えるか伝えられるかの主導権は、伝える側に移った。

いやな話だ。わかっている。見たくはない。しかし、気になってしまう。自分に直接かかわることだからだ。自分はダメなのではないか。生き方を改善しなければいけないのではないか。そのように思ってしまう。

そして、記事を開く。予想通り、へこむ。

ネット社会においては、たしかに知識はつく。知恵もつく。目まぐるしいぐらい頭に情報がインプットされる。しかし、人間としての成長は、それほどまでに速くない。ダメだダメだと言われ続けても、私たちはゆっくりとしか成長できない。よって、うちひしがれてしまうのである。

ようするに、結婚できない原因ばかりに目を向けさせ、結婚したときの幸せに目を向けさせないから、若者は結婚できなくなっているのではないかと思われる。出来ていないことをまじまじとみるのは、なかなかな勇気がいる。しかしその勇気の先には、あまりよい結果が得られない。ついにその勇気が持てなくなったとき、人は自ら何かを達成しようとすることを諦める。自己を肯定できなくなるのである。婚活疲れも生じるわけである。

そうであるから、女性も男性も、相手のダメ出しばかりしていても仕方がない。結婚の条件は、などと言わず、もっと人となりをみたほうがいい。結局人は、付き合ってみないとわからない。良いか悪いかなど、事前にはわからない。

結婚を例にとって、色々と述べてみた。とかく今の世の中は、原因にばかり目を向けさせたり、条件を決めたりしがちである。学校では弱点の克服ばかりが指導されるし、昇進の条件なども事細かに決められている。生きるうえで非常に窮屈である。もっと前向きに、ひとつやってみようかぐらいの気持ちをもって物事に取り組んだほうが、ずっといい。そのほうが、もっと幸せな人が増えるように思う。

ところで筆者は独身である。結婚はできないと思う。

皇學館大学特別招聘教授 SPEC&Company パートナー

1981年、山梨県生まれ。MITテクノロジーレビューのアンバサダー歴任。富士ゼロックス、ガートナー、皇學館大学准教授、経営コンサル会社の執行役員を経て、現在。複数の団体の理事や役員等を務めつつ、実践的な経営手法の開発に勤しむ。また、複数回に渡り政府機関等に政策提言を実施。主な専門は事業創造、経営思想。著書に『正統のドラッカー イノベーションと保守主義』『正統のドラッカー 古来の自由とマネジメント』『創造力はこうやって鍛える』『ビビリ改善ハンドブック』『「日本的経営」の誤解』など。同志社大学大学院法学研究科博士前期課程修了。

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