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伝説の男ムツゴロウさんにお金持ちになってもらう方法

遠藤司SPEC&Company パートナー 皇學館大学 非常勤講師
(写真:アフロ)

変なタイトルだと思われるかもしれない。しかし、筆者は仕事柄、こういうことを大真面目に考えるようにしている。

すべてのイノベーションは、それが新しいものか古いものかはさておき、あるものをどのように活かすかを考えることから生じる。これまでとは異なる顧客、場所、局面において、あるもののもつ要素を価値化する方法をひたすらに考える姿勢が、イノベーションをもたらすのである。

ドラッカーの『マネジメント』にある有名な言葉を取り上げよう。「既存の製品の新しい用途を見つけることもイノベーションである。イヌイットに対して凍結防止のためとして冷蔵庫を売ることは、新しい工程の開発や新しい製品の発明に劣らないイノベーションである。それは新しい市場を開拓することである。凍結防止用という新しい製品を創造することである。技術的には既存の商品があるだけである。だが経済的には、イノベーションが行なわれている。」ようするに、別の観点から、別の価値を見出だせば、新たな製品を生み出したのと同様に、市場を生み出したことになるのである。

ムツゴロウさんの経歴

最初に、筆者はムツゴロウさんを尊敬している。あの頃は、ムツゴロウさんにたくさんの夢を与えてもらった。幼心に、筆者もいつかは動物王国を創りたいと思ったものである。

かねてその名を轟かせてきたムツゴロウさんだが、最近はもう、あまりテレビには姿を現さなくなった。しかし思い出してほしい。そのポテンシャルは、すごい。まぎれもない超人である。

ムツゴロウさんこと畑正憲氏は、高校を卒業後、東京大学理科II類に現役で合格する。受験勉強はほとんどしなかったのだという。そこで理学部動物学科に進み、大学院ではアメーバの研究に携わる。

修了後は学研に入社するが、どうにも肌に合わなかったらしく、退職。作家になる。

36歳の頃には、東京から北海道に移住する。そして翌年、あの「ムツゴロウ動物王国」を開園することになる。様々な動物を飼育しながら、自らの体験について綴ったエッセイなどを書いていたところ、これが評判になる。テレビ番組化し、ムツゴロウさんは一躍有名になった。

転機が訪れる。2004年、東京都あきる野市の東京サマーランドで、観光施設「東京ムツゴロウ動物王国」を開園する。しかし集客が伸びず、2007年には閉園。自身もおよそ3億円の借金を背負うことになる。その後、執筆活動や講演などの収入により、8年間かけて借金を完済したとのことである。本当にすごい。

しかしこのことが、筆者に考える機会を与えた。8年という長く苦しい期間を一挙に短縮する方法はないものか。しかも、ノーリスクで。

ムツゴロウさんの能力

ムツゴロウさんの能力は主に三つ。文筆と、動物の扱いのうまさと、麻雀である。

ムツゴロウさんの書籍は、小説、エッセイを主として、ゆうに100を超える。翻訳書も2本出している。しかしそのほとんどが動物に関するものであるから、やはりメインとなる能力は、動物の扱いであろう。

こちらのほうは言わずもがなである。ムツゴロウさんは、それが猛獣であろうとも、仲良く触れ合うことができる。主な戦績としては、熊、ライオン、象、ゴリラ、ワニ、アナコンダ、ジャガーなどである。それから、あの江頭2:50ともやりあっている。よく生きていたと思う。

麻雀のほうはといえば、その頭脳の甲斐あって、段位は最高位の九段。そのなかでも屈指の実力を誇る。ようするに国内最強である。よって、日本プロ麻雀連盟の相談役も務めている。ちなみに麻雀は、39歳から始めてそこまで上り詰めている。呂布に立ち向かってはならない。

ムツゴロウさんを新たに売り出す

このように、ムツゴロウさんはその類まれなる能力によって、我が国では非常に有名である。現代における一位、二位を争うほどの伝説の人物であると断言できよう。

しかし、海外ではどうか。惜しまれるのは、ムツゴロウさんが活躍した時代にはインターネットがなかった。ゆえにその実力は、おそらく世界では知られていない。そうであれば、やはり海外にも売り出していかなければならない。ムツゴロウさんは、我が国における財産に留めてはならない。

問題は、どの能力を用いるか、である。ここで、ネットの世界でウケているのはどういった人たちかを考えてみよう。ピコ太郎とか、BABYMETALといった人たちは、YOUTUBEのお陰で海外でも売れている。しかし、ムツゴロウさんの能力とそれらが関係するかといえば、そうは思えない。それでは似ているのは、どういった人たちか。ユーチューバーである。彼らは主に、人がやらないこと、やれないこと、やってみたいことを考え、それを実行し、映像化することで、お金を稼ぐ。つまりは、インパクトがあることを率先してやるのがユーチューバーである。

そうであれば、ムツゴロウさんの能力で活かすことができるものは、やはり動物である。かの歴戦を再現するのである。もしムツゴロウさんがYOUTUBEに参入したら、誰が勝てるというのか。ムツゴロウの動物王国などの番組を観たことのない若者らは、そして海外の人たちは、ムツゴロウさんの戦いを熱狂しながら眺めることだろう。ひいてはYOUTUBEのカリスマとなるに違いない。

日本人ユーチューバー総収入ランキングによれば、一位は4億である。この記録を一挙に塗り替える可能性があるのは、世界広しといえどもムツゴロウさんしかいない。あの頃のムツゴロウさんが帰ってくるのである。世界から認められ、よりビッグになって。

筆者は真面目な話をしている。ムツゴロウさんだけではない。人には価値がある。人の能力は活かすことができる。どこでならば最も活かされるかを考えなければならない。その能力をもって、いかなる成果を上げることができるかを考えなければならない。

SPEC&Company パートナー 皇學館大学 非常勤講師

1981年、山梨県生まれ。MITテクノロジーレビューのアンバサダー歴任。富士ゼロックス、ガートナー、皇學館大学准教授、経営コンサル会社の執行役員を経て、現在。多数の企業の顧問やフェローを務め、企業や団体への経営支援、新規事業開発等に勤しむ。また、複数回に渡り政府機関等に政策提言を実施。主な専門は事業創造、経営思想。著書に『正統のドラッカー イノベーションと保守主義』『正統のドラッカー 古来の自由とマネジメント』『創造力はこうやって鍛える』『ビビリ改善ハンドブック』『「日本的経営」の誤解』など。同志社大学大学院法学研究科博士前期課程修了。

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