やっぱり小保方さんなんてかわいいほうだった~2015年も多発した研究不正事件

2015年も研究不正の事件が多く発生した(写真はイメージです)。(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

2015年も…

2015年が終わった。

研究不正に関しては、STAP細胞事件で大騒ぎだった前年の2014年に比べれば静かな年だった~そう思っている人も多いかもしれない。大阪大学の研究費不正経理事件は、不正とは言いながらお金の使い方の問題だった。

甘い。

世界ではSTAP細胞事件どころではない数々の研究不正事件が発生していた。

2015年もっとも騒がれた科学界の不祥事まとめ

The Top 10 Retractions of 2015(2015年の論文撤回トップ10)

ここで、上記記事も参考にしながら、2015年に明らかになった研究不正事件をいくつかとりあげたい。

文句なしの第一位…同性婚研究不正事件

上であげた2つの記事がともに最初にもってきた不正事件を起こしたのは、なんと大学院生だった。

Michael LaCour氏はカリフォルニア大学ロサンゼルス校で政治学を専攻する大学院生。著名な論文誌Scienceに、個人的な会話で同性婚に対する意見が変わるという趣旨の論文が掲載されたが、これが完全な捏造だったことが明らかになり、論文は撤回された。

スター研究者の蹉跌…オリヴィエ・ヴォワネ事件(フランス)

フランスストラスブール大学のフランス国立科学研究センター(CNRS)に所属するオリヴィエ・ヴォワネ氏は、将来ノーベル賞を受賞するのではないかと言われていた花形研究者だった。ところが、論文に大量の問題があることが明らかになった。

CNRSでは彼が関係した13編の論文でデータ整理・表現で適切なやり方に欠けていたとした。連邦工科大学では、彼は公表した図表の内容に十分な注意を払うという義務も、また、研究グループの長としての監督義務も怠っていたとした。

出典:処分を受けるスター研究者(ストラスブール大学のフランス国立科学研究センター(CNRS)研究者の論文不正への対応)

ヴォワネ氏が所属していたチューリッヒ連邦工科大学の調査では、さらに多くの問題が明らかになった。

エキスパートたちは1998年以降の彼が関係した32編の論文中、20編になんらかの問題があるとしている。これは彼の実験に関する論文数のほぼ半分に相当する。このうち5編の論文は著者の意図的な操作があったとして、取り下げを勧告している。

出典:処分を受けるスター研究者(ストラスブール大学のフランス国立科学研究センター(CNRS)研究者の論文不正への対応)

こうした調査の結果ヴォワネ氏は停職処分をくらうと同時に、なんと行動監視されることになった。

CNRSのアラン・フックス会長はオリヴィエ・ヴォワネをチューリッヒ連邦工科大学への出向終了後、2年間は停職処分とすることを発表した。一方、連邦工科大学側は彼の古巣であるストラスブールの研究室との活動を制限するよう、戒告を出した。オリヴィエ・ヴォワネには今後、仕事面での行動改善に必要な措置をとれるよう、外部の専門家が同行するようになる。

出典:処分を受けるスター研究者(ストラスブール大学のフランス国立科学研究センター(CNRS)研究者の論文不正への対応)

収監された研究者

ドンピョウ・ハン氏は韓国生まれ。アイオワ州立大学(アメリカ)の准教授であり、エイズワクチンの開発研究をしていたという。

ところが…

しかし、上記したウサギ抗エイズ血清は、実は、驚いたことに、エイズウイルスに反応しなかったのである。これは、確実に、大きなスキャンダルである。

ハンは、検査する時に、エイズウイルスに反応することが知られているエイズ患者の抗血清、あるいは、ウサギの抗HIV-1 gp120・抗血清(これもエイズウイルスに反応することが知られている)を、自分が造ったウサギ抗エイズ血清に意図的にまぜていたのだった。

出典:白楽ロックビルのバイオ政治学 研究倫理

これにより4年半の懲役刑をくらい、720万ドルの研究費の返還を言い渡された(ワシントンポスト)。収監された研究者は、2005年のポールマン氏など数えるほどしかいない。不名誉なリストの仲間入りだ。

日本人ポスドクの犯した罪

藤田亮介氏は長崎大学薬学部の助教をつとめたあと、海を渡り、コロンビア大学でポストドクター(ポスドク;博士研究員)となった。アルツハイマー病の研究を行い、Nature誌の論文の著者となった(筆頭著者ではない)。ところが、Natureも含めた論文にある74もの図に捏造、改ざんがあったとして、この論文や藤田氏が関わっていたCell誌(生命科学では世界最高峰の論文誌)の論文が撤回された。

676回も引用された論文が…

ロバート・ワインバーグ氏は、がん遺伝子Ras、がん抑制遺伝子Rbの発見に関わるなど、がん研究の分野では知らない人がいない大物研究者だ。この大物がCell誌などに発表した4つの論文が撤回された。データの改ざんや使いまわしがあったからという。Cell誌の論文はなんとほかの論文に676回も引用されたという。

オーストラリアの小保方さん?

アンナ・アヒマストス氏はオーストラリアのベーカーIDI心臓糖尿病研究所のポスドク。高血圧薬の研究をしていたが、捏造により、医学の最高峰級の論文誌JAMAとニューイングランドジャーナルオブメディシンに掲載された論文を含む6本の論文が撤回された。これはNatureの2本の論文が撤回された小保方さんに匹敵するか、それ以上のインパクトだ。

日本国内でも次々と発生

以上、冒頭で挙げた2つの記事などから、2015年に話題になった研究不正事件をいくつかピックアップした。こうした事例をみると、小保方さんなんてかわいい方、と思ってしまう。こうした事件には陰謀論を唱える人もいないし、支持者が集まることもない。たんたんと処理されている。そう考えれば、いかにSTAP細胞事件が特異な事件か分かるだろう。

いずれも外国の話だったが(日本人が関わったものもあったが)、日本国内でも研究不正は発生し続けている。

私はメルマガやブログで研究不正に関するニュースをちまちまと収集しているが、毎週のように新しい研究不正の事件に関する報道を目にする。

近々だけでも、神戸大学の大学院生が写真を上下反転させて優位な差があるようにみせたといった事件が明らかになっている。

なかでも悪質だと思われるのが、岡山大学の事件だ。片瀬久美子氏が詳細に報告しているように、研究不正の告発に対して、かなり問題のある内部調査を行い、その結果を外部に公表していない。しかも、不正の告発をした教授たちが、解雇されたという。追記 解雇の理由は「岡山大学教授としてふさわしくない」という不明瞭な理由だという。

過去に起こった研究不正の事例をウェブで検索しても、公式なサイトに情報がない事例が多く、最も参考になるのは白楽ロックビル氏が個人で作っているアーカイブだ。文部科学省も近年事例を公開しているが、質量ともに不十分のように思う。

これでは過去の事例を教訓にしようと思ってもできない。アメリカの研究公正局のように、政府がもっとしっかりと事例収集することも重要だ。

これとともに、Retraction Watchのように、民間ベースで問題を見つめていく活動も重要だ。白楽氏や片瀬氏だけに活動を任せるわけにはいかない。私もしっかりと研究不正のウォッチを続けていきたいと思う。