Excel方眼紙をどうやってやめさせられるかを考えてみる

Excel方眼紙というのがあります。セルをマス目のように使って、文章を作るというテクニックで、こともあろうかITのプロと言われているハズのSIerさんでも使われているテクニックだそうです。

ITに詳しい人はExcel方眼紙をよしと思ってる人を心のなかでは見下しているのですが、しかし、残念ながらこれが良いと思っている人に適切に説得するのは難しいようです。

Excel方眼紙の良さは、そのわかりやすさに尽きます。いわばグリッドデザインとして、マス目の単位で自由自在にレイアウトができるからです。

そもそもExcel方眼紙が出てきたのは、Excelの使い方よりも前に、ワープロであるWordが使いにくくなったのが原因だと思います。昔のワープロは、Excel方眼紙のような表組みができたのですが、ワープロの主流がWordになると、表の考え方が表組みが高度になり、方眼紙のような自由なレイアウトがしにくくなりました。

Wordは、直感的に使えるツールというよりは、高度な文章プロセッサとして勉強が必要だったのです。

ITに詳しい人でも、Wordが苦手だという人は本当に山のようにいます。その人達の逃げ道がExcelまたは、PowerPointでした。Excelは、自在にセルを編集することでグリッドデザインを実現し、逆にPowerPointは全くの非構造データで自由にレイアウトできるのが魅力です。

つまるところ、人間は本質的に情報を構造的に扱うのが苦手な動物であり、見た目を優先させるという目的の前には、いくらデータ構造がないがしろにされても低きに流れるものなのです。

その場所に「Excel方眼紙」が存在するため、これを否定するのは難しいのです。

「別に問題ないからいいじゃん」

と。

Excel方眼紙の問題点は、後から再利用しにくいのと、列が増えた時に修正の手間が多大にかかるという、負の遺産を量産してしまうことにあります。つまり、後から関わる人がバカを見るというものです。

一見簡単な半面、非効率、非合理な状態を自然に受け入れているのがExcel方眼紙の問題点でしょう。

つまり、これを良いという人は「要領が悪い」のです。

記者の眼(日経ソフトウエア) 「Excel方眼紙」の何が悪い?

故に、その企業や、その成果物が未来を向きたいと思っているのであれば間違いなくやめさせるべき事項です。しかし逆に、今さえよければと思ってるなら、別にどうでもよいわけです。

結局、それは仕事の質をどこに目指すか!?というビジョンの話です。つまり、少しでも未来の人たちがかかわる可能性があるなら、数ヶ月先の他人、数ヶ月先の自分のために、Excel方眼紙はやめてあげるべきです。

ただ、そうは言っても、今がよければそれで良い、俺は忙しいんだ!と先を考えないのが自然な人間の摂理であり、なかなか意識やリテラシーという言葉だけで対処するのは難しいわけです。

Webでも起きていた「同じ問題」

Webの世界でも、昔はテーブルレイアウトというのが流行っていました。テーブルレイアウトというのは、HTMLのテーブルタグというので自由にレイアウトを構築できるもので、考え方はExcel方眼紙と全く同じです。

しかし、アクセシビリティに問題があり、例えば、視覚障害をお持ちの方が使う、音声読み上げをしてくれる「スクリーンリーダー」では、テーブルレイアウトの複雑な構造を理解するのが難しく、読み上げの順序がメチャクチャになってしまい、使いにくかったのです。

社会的マイノリティの人が情報の取得に苦労するのだけけど、顧客要望である見た目のビジュアルが重視され、如何ともし難い、という時期がずっと続いていました。

Webに対して、高い意識を持つ識者は、この状況をどうにかしたいと思っていたのですが、残念ながら顧客の意識をそこに持ってくのは難しく、業界全体では如何ともし難いという状態が続いていました。マイノリティだけでなく、Webは見てもらえなければ価値がないので、大多数にフォーカスを寄せるのは自然なことですからね。

ところが、ある日突然、テーブルレイアウトをやめて、CSS+HTMLによる情報と装飾の分離が進みました。

これはブラウザの技術向上でCSSが使いやすかったという背景もありましたが、一番、大きかったのが、Google検索エンジン対策、いわゆるSEO対策という経済合理性を伴う変化がきっかけでした。

つまり、テーブルレイアウトのWebサイトよりも、シンプルなHTMLとCSSで組み合わされたWebサイトの方が、検索エンジンで上位に表示されるようになったのです。だからCSSによるレイアウトにしないと、経済的に損を被るのです。

こうなれば話は別です。これをきっかけに、世の中のニーズは180度変わり、急速にテーブルレイアウトのWebサイトは消滅していきました。

視覚障がい者の人が頼りにしていたスクリーンリーダーが読むのが苦手なものは、グーグル検索エンジンのクローラも読みにくかったのです。

この事実は、ある意味、非常に悲しいことだったと思います。でもまだ結果オーライです。

技術的な問題点は同じことを言っていたのに、マイノリティは社会的に切り捨てられ、経済合理性としてのSEO対策が前面に出てきた瞬間に世の中が動く。

でも世の中、そういうことなんですよね。だからこそ政治があるんでしょうし、社会起業家ってのも、こういうことをうまくやる人たちだったりしますしね。

Exce方眼紙は、WordやExcelの勉強が足りない証

Excel方眼紙も、社内のレガシーデータでしかないので、Webサイトほどわかりやすい「やめる理由」は見つかりません。負の遺産を作ると言われても、今の仕事をこなすことで精一杯の人にとっては優先しがたい話です。

Google検索クローラが、機械による自動処理で実現した経済合理性を、社内のルールや、発注主による制約に落としていかないと、この非合理的な問題は解決しないと思います。

「MS Officeの設計仕様を無視した低きに流されるな、ExcelやWordを勉強せよ」

だから逆説的に、こうやって書いた話も乗るか乗らないかは皆さんで判断してください。その上での判断は僕の知ったことはないのでお任せいたします。

ただ知っておいて欲しいのは、何かのきっかけでExcel方眼紙を知られた時には、「あぁこの会社はIT技術が低いんだなぁ」と、こっそり思われていたり、あぁ「古くて硬直した組織」なのだなぁ、とか思われていたりするわけです。

「これは恥ずかしいことなんだよ」という評価に落としこむと良いのかなぁと思って、こういうことを書いています。

なお、この文章は「Excel方眼紙をどうやってやめさせられるか」という視点で書いたポジショントークですが、本当は、Excelが「縦横の制約」と充実した「ビジュアライズ機能」を兼ね備え、ただの表計算ソフトの枠を超えた情報アウトプットツールとして、沢山の人々の創造性を喚起できていることをリスペクトしています。みんなが伸び伸び使えるプロダクトは素晴らしいと思ってます。本音を言うと、Excel方眼紙は、みんな器用にやるよなぁと思っていたりします。