「電車内ベビーカー」問題は、子育てへの理解不足が原因ではないと思う件

毎日新聞が日本民営鉄道協会の2014年度の「駅と電車内の迷惑行為ランキング」をもとに、「混雑時のベビーカー乗車への理解が広がっていない」という記事を出した。これがYahoo!ニュースでもトピックスになっており、ここ数年度々話題になる「電車内ベビーカー」問題が再燃した形となっている。

迷惑ランキング:駅と電車内…ベビーカーにも厳しい視線(毎日.jp)

電車内ベビーカー 理解されず - Yahoo!ニュース

日本民鉄協会のサイト(参照)によると、調査は平成26(2014)年10月1日から11月30日までの期間に協会ホームページにて実施したもので、回答者3155人のうち、男性が2437人で女性698人。若干の偏りがあることは留意すべきだろう。また、公式サイドでは「音に関する迷惑行為が引き続き上位」として、「携帯電話・スマートフォンの着信音や通話」が男性の4位(24.7%)に対して女性が11位(13.3%)であることを特に指摘している一方で、ベビーカーに関しては全く言及されていない。

一方で、毎日新聞の記事では、下記のように「電車内ベビーカー」問題をフレームアップしている。

日本民営鉄道協会(東京都)が調べた2014年度の「駅と電車内の迷惑行為ランキング」で、「混雑した車内へのベビーカー乗車」が前年度比1.6ポイント増の19.5%で7位になった。この項目を設けた09年度以来の最高値で、3年連続で増えている。国土交通省などが昨春、電車などへの乗車に関する基本ルールをまとめたが、理解は広がっていない。

出典:迷惑ランキング:駅と電車内…ベビーカーにも厳しい視線

ベビーカーに関して男女別にみると、女性が2.8ポイント増の30.2%(3位)で、男性は1.2ポイント増の16.5%(8位)だった。過去5回いずれも女性が男性を上回っている。

出典:迷惑ランキング:駅と電車内…ベビーカーにも厳しい視線

ここで注意したいのは、女性のサンプルが男性のサンプルの1/3に過ぎないということだ。ホームページでの実施ということもあり、答えた人がもとから電車でのマナーに関心があった層だと推測されることもあるし、この数字を見て女性の方が男性よりも「電車内ベビーカー」に厳しいというのが一般的と断じるのは早計に過ぎるように思う。

とはいえ、国土交通省が定めた基本ルールや「ベビーカーマーク」の理解が広がっていない、という記事の本旨が現実を捉えているのは間違いないだろう。

でもね。個人的には、そりゃ「理解」は難しいよ、と思わざるをえない。だって、ベビーカー1台ぶんのスペースであと4、5人は確実に乗ることができるはずだから。

その電車を乗り逃したとすれば遅刻確定、という人がいたとして、叱責ないしは評価・査定が下がる可能性が出てくるということは、その当人にとってはベビーカーが「迷惑」以上の存在になり得る。それだけでなく、大事なプレゼンや試験にギリギリで向かうケースや、複数の乗り換えがあって時間通りに到着することが求められるなど、何事につけ「オンタイム」が求められる通勤・通学者は交通機関に乗るということそのものでストレスに晒されている。となると、ラッシュ時のベビーカー乗車は、「自分が電車に乗り過ごすかもしれない」というリスク以外の何物でもないだろう。

個人的にこの「電車内ベビーカー」問題は、子育てへの理解不足が原因なのではなく、混雑状態の車内に広いスペースが必要となるベビーカーを乗車させなければいけない「状況」に無理があるのでは、と感じる。誤解を恐れずに書くならば、その女性あるいは男性が子どもを一緒に連れて、ベビーカーで200%前後の乗車率の電車に乗らなければいけない必然性がある事とは一体何なのか。お仕事ならばフレックスや在宅ではムリなのだろうかとか、通院ならばむしろ病状が悪化しないのだろうか、とか考えてしまう。

これは、そもそもの話として、「なぜ皆がぎゅうぎゅう詰めになった電車に乗らなければいけないのか」といった都市部の交通網の問題でもあるし、「なぜ同じ時間に会社へと通わなければいけないのか」といった労働問題でもある。もし、多様な勤務体系が認められたとしても、周囲の同調圧力が強くて充分に機能しないということならば、日本人の習性の問題ということになってしまう。

いずれにしても、「電車内ベビーカー」問題を「女性への無理解」と捉えて、他者への寛容を求めていくことが根本的な解決に結びつくとは考えにくい。「子育て」といった狭い枠組みで捉えているうちは、堂々巡りが続いて無理解の溝が深まりかねない。

仮に有効策があるとするならば……各企業・法人・団体がフレックスや在宅ワークを推進するために何らかの数値目標を定める、といった施策が間接的にこの問題を解決するかもしれない。交通機関の混雑が緩和されて、間接的にベビーカーと一緒に乗ることが問題視されなくなる可能性があるだろうし、ベビーカーと一緒に「乗らなければいけない」状況自体が減少するのではないだろうか。