日本版『BuzzFeed』は失敗すると思う理由

BuzzFeed本社(写真:ロイター/アフロ)

『BuzzFeed』社とヤフーが、合弁会社BuzzFeed Japanを設立し、日本版『BuzzFeed』を創刊すると発表したのが2015年8月18日。その後、10月16日に朝日新聞で『withnews』を手がけていた古田大輔氏が就任するとアナウンス。その後も大手新聞社を中心としたリクルーティングによる加入の話題が続いている。

しかし、個人的に現状を見る限りにおいて、日本版『BuzzFeed』は失敗する可能性が高いように思う。この場でその理由をいくつか挙げてみたい。

■動きが遅い

設立を発表してから5ヶ月、古田氏の編集長発表から3ヶ月。ネットメディアの中の人間の感覚でいえば、そこまでに「創刊」まで行かなくても、「創刊準備号」的な位置づけのコンテンツも発信できていないというのは、遅いというか、「ずいぶんと暢気にやっているんだなぁ」という感想を持たざるを得ない。

米『Buzzfeed』が設立したのと同じ年の2006年にソフトバンクからの6億円の出資を受けて日本に上陸した『オーマイニュース』は、創刊の前に準備ブログを公開。そこで日々のニュースやメディアとしての考えを発信していた。結果的に靖国神社のトピックについてのエントリーが「炎上」したことにより、後々の運営に影を指すことになったのだが、「とりあえずできることから発信する」という姿勢に関しては間違っていなかったと思う。

取材をして出す記事を溜めているにしても、せめて『Twitter』『Facebook』『YouTube』『Instagram』などに小出しにして発信していくべきだろう。リクルーティングや本国、ヤフーとの折衝などもあるにせよ、メディアは読者に有益な情報を出してナンボ。それをあえてしていないのか、できないのか……。個人的には後者のように見えるのだが、どうだろう?

■アダルトコンテンツはどうするの?

米『Buzzfeed』を見ていると、政治・社会のニュースやLGBTに関するコンテンツもあるが、ハリウッドのゴシップネタ、モデルの画像まとめといった記事も相当多い。それだけでなく、日本でいえば『オトメンスゴレン』が扱っているような恋愛記事や、セックスに関する話題、さらにはアダルトグッズの記事まである。

こういった記事が公序良俗としてどうなのかという議論は置くが、ランキングなどを見ていると『Buzzfeed』にとって人気のコンテンツであることは間違いない。これ、日本でもやるんですかね?

米『Buzzfeed』は、2011年にベン・スミス氏が編集長に就任して、ジャーナリズムに寄った内容の記事やルポルタージュを掲載するようになったという。ただ、『Buzzfeed』を『Buzzfeed』たらしめているのは、ユーザーが関心のある話題を記事化して提供するということで、それが 「ソーシャル時代のメディア企業」たらしめている。そのあたり、保守的サイトに対抗する形でアリアナ・ハフィントン氏が設立したという政治的な立脚点があった『The Huffington Post』とは違う。

要は「読者にウケるならばなんでもあり」というのが『Buzzfeed』の特徴で、ジャーナリズム云々というのは後付けに過ぎないのだけど、このあたりの折り合いをどうするのか。「報道」に軸足を傾けると「Buzz」でもなんでもなくなる可能性があるように思えるが……。

■既にレッドオーシャンな「ネットで話題」

一方で、「なんでもあり」メディアは日本に置いては既に大小さまざまなメディアがある。『Twitter』などで話題となったニュースは即座に『2ちゃんねる』でスレッドが立ったりまとめサイトに取り上げられて、さらにネットニュースサイトにピックアップされ、スポーツ関連や芸能人が絡んだ話題になるとスポーツ紙がネットでもニュースを出し……といった展開を経ている。さらにそこからYahoo!ニュースのユーザーによるコメント欄から記事化するといったことも珍しくない。

米『Buzzfeed』を見ると、日に数十本の記事がアップされている。それと同数のコンテンツを量産する体制を作ることができるのか。現状において日本でそのようなノウハウを一番蓄積しているのはおそらくITmedia運営の『ねとらぼ』だが、彼らに限らず、どのように差別化していくのか。

一つのカギは「動画」の扱いだが、足を使って撮影するか、権利者から提供を受けるのか、どちらにせよテキストより手間がかかる。ここをクオリティーコントロールをせずに出すことができるならば強いが、いかがなもんでしょうねぇ……。

■ヤフーはどこまで関与するのか

ヤフーとの合弁、というのは土台となる資金面で相当強いアドバンテージになるのは言うまでもない。アドネットワークやインフィード広告、動画広告、ネイティブ広告など、さまざまな形での配信が考えられる。だが、これらもある程度のPV/UU、回遊率、ソーシャルでの拡散などがあっての話になる。

気になるのが日本版『Buzzfeed』をYahoo!ニュースに配信されるか否か、ということ。やはりヤフー系の『THE PAGE』は、一時期には露骨なほどトピックスにピックアップされていた。同じような扱いを『Buzzfeed』も受けるとすると、既存のミドルメディアを殺しにかかっていると言わざるを得ないだろう。

とはいえ、どれだけヤフーがテコ入れしたからといって成功するとは限らないのは、前述の『オーマイニュース』が証明している。2006年に鳥越俊太郎氏を編集長に迎えて「市民メディア」として運営された『オーマイニュース』は、左派的かつ稚拙なコンテンツが多かったこともありネットユーザーからの集中砲火を浴び、2009年4月には閉鎖されてしまった。彼らの失敗は、新聞社出身のスタッフがネットの流儀を踏まえていなかったことが大きかったように思える。

翻って、日本版『Buzzfeed』は古田氏をはじめとして新聞社出身の人材が集まっている。彼らの多くはデジタルジャーナリズムの取り組みを前職で手がけており、『オーマイニュース』と同列に扱うべきではないのだが、1分1秒の間に1つでも多くのコンテンツを生み出すというネットメディアのスピード感とは別種の次元でお仕事をされているようにも思える。そのスピード感の乖離に米『Buzzfeed』サイトやヤフー側がどこまで我慢できるのか、といったあたりも成否を握るのではないだろうか。

とにかく。編集長が決まって3ヶ月も何もコンテンツが出てこないというのはネットメディアのスピード感ではあり得ない。そのあたりも含めて、近々開かれるという日本版『Buzzfeed』の記者会見では訊いてみたいと思う。